第 2 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
Medium(標準)
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 物理量のテンソル階数の判別¶
→ 問題に戻る
解答:
| 量 | 階数 |
|---|---|
| (a) 温度 \(T\) | 0 階(スカラー) |
| (b) 力 \(\vec{F}\) | 1 階(ベクトル) |
| (c) 質量 \(m\) | 0 階(スカラー) |
| (d) 速度 \(\vec{v}\) | 1 階(ベクトル) |
| (e) 時空間隔 \(ds^2\) | 0 階(スカラー) |
| (f) 計量テンソル \(g_{\mu\nu}\) | 2 階 |
| (g) エネルギー運動量テンソル \(T_{\mu\nu}\) | 2 階 |
| (h) 4 元速度 \(U^\mu\) | 1 階 |
ポイント: 階数は添字の数で決まる。添字 0 個なら不変量(座標変換で値が変わらない)、1 個なら矢印的な量、2 個なら行列的な量。
B-2. Newton の運動方程式の限界¶
→ 問題に戻る
解答:
Newton の \(\vec{F} = m\vec{a}\) に不足している点:
-
空間のみの 3 次元ベクトルであること。 特殊相対論では時間と空間が混ざり合う(Lorentz 変換)ので、時間成分を含む 4 次元の「4 元ベクトル」で書き直さなければ、慣性系の間の変換で形が保たれない。
-
重力を「力」として扱っていること。 Newton の重力 \(F = -GMm/r^2\) は瞬時に伝わる遠隔作用で、これを 4 元ベクトル化しても「重力の瞬時伝播」問題は残る。Einstein の枠組みでは、重力を「力」ではなく「時空の曲がり」として記述することで、この問題を根本的に解消する。
B-3. Newton と Einstein の二本柱の対応¶
→ 問題に戻る
解答:
| Newton | Einstein | |
|---|---|---|
| 粒子の運動 | \(\vec{F} = m\vec{a}\)(運動方程式) | \(\dfrac{d^2 x^\mu}{d\tau^2} + \Gamma^\mu_{\alpha\beta}\dfrac{dx^\alpha}{d\tau}\dfrac{dx^\beta}{d\tau} = 0\)(測地線方程式) |
| 場の方程式 | \(\nabla^2 \Phi = 4\pi G\rho\)(Poisson 方程式) | \(G_{\mu\nu} = \dfrac{8\pi G}{c^4}T_{\mu\nu}\)(Einstein 方程式) |
役割:
- 粒子の運動: 与えられた時空(Newton の場合はポテンシャル \(\Phi\)、Einstein の場合は計量 \(g_{\mu\nu}\) およびそこから決まる \(\Gamma\))の中で、粒子がどう動くかを決める。
- 場の方程式: 物質(質量密度 \(\rho\) またはエネルギー運動量 \(T_{\mu\nu}\))が、どうやって時空(\(\Phi\) または \(g_{\mu\nu}\))を作るかを決める。
Medium(標準)¶
M-1. 測地線方程式の理解¶
→ 問題に戻る
解答:
(a) 右辺がゼロの意味¶
右辺がゼロ = 粒子に力が働いていないことを意味する。Newton の \(\vec{F} = m\vec{a}\) の右辺にあたる「力」が Einstein の測地線方程式にはない。
Einstein の枠組みでは、重力は力ではなく時空の幾何学に吸収されている。左辺第 2 項の \(\Gamma^\mu_{\alpha\beta}\)(接続係数)が時空の曲がりの効果を担うため、重力による「力」は式から消える。したがって「測地線」は「重力以外の力が働いていない粒子の世界線」=「何の力も働いていない粒子の世界線」を意味する。
(b) 接続係数の決定¶
接続係数 \(\Gamma^\mu_{\alpha\beta}\) は、計量テンソル \(g_{\mu\nu}\) の 1 階微分から決まる。具体的には
詳しくは第 6 章以降で学ぶ。
(c) 電磁場中の荷電粒子¶
電磁場中では、粒子は電磁気力を受けるので、右辺にその力が入る:
右辺に力がある式は「測地線方程式」ではなく単に「運動方程式」と呼ぶ。力で経路が曲げられた粒子は、もはや測地線には沿わない。
M-2. Einstein 方程式の係数¶
→ 問題に戻る
解答:
(a) \(G_{\mu\nu}\) と \(G\) の違い¶
- \(G_{\mu\nu}\) は Einstein テンソルと呼ばれる 2 階テンソル(添字 2 個)。時空の曲がり具合を表す量で、計量テンソル \(g_{\mu\nu}\) の 2 階微分から作られる。
- \(G\) は Newton の万有引力定数(添字なしのスカラー定数)。\(G \approx 6.67 \times 10^{-11}\ \mathrm{N\cdot m^2/kg^2}\)。
同じ記号 \(G\) を使うのは歴史的な偶然。添字の有無で区別する。
(b) 係数 \(8\pi G/c^4\) の決定¶
この係数は Einstein が自由に選んだ数字ではなく、Newton の Poisson 方程式 \(\nabla^2 \Phi = 4\pi G\rho\) と整合するように決まる。弱い重力・遅い速度の極限で Einstein 方程式が Poisson 方程式に帰着する条件から、\(8\pi G/c^4\) でなければならない。\(4\pi\) は球の表面積に由来する因子で、\(8\pi\) はテンソル構造から現れる 2 倍の因子。詳細は第 13 章で扱う。
(c) 弱重力極限¶
弱い重力・遅い速度の極限で Einstein 方程式は Newton の Poisson 方程式 \(\nabla^2 \Phi = 4\pi G\rho\) に帰着する。このとき、計量の時間成分 \(g_{00}\) が重力ポテンシャル \(\Phi\) と \(g_{00} \approx -(1 + 2\Phi/c^2)\) の関係で結びつく。
Advanced(発展)¶
A-1. 計量テンソルから派生する量¶
→ 問題に戻る
解答:
計量テンソル \(g_{\mu\nu}\) からの微分の回数と物理的意味:
| 量 | 計量の微分 | 物理的意味 |
|---|---|---|
| 接続係数 \(\Gamma^\mu_{\alpha\beta}\) | 1 階微分 | 測地線方程式を通じて粒子の軌道を決める |
| Einstein テンソル \(G_{\mu\nu}\) | 2 階微分 | 時空の曲がりそのものを表す(Riemann テンソルから作られる) |
流れ:
g_{μν} (計量)
├─ 1 階微分 → Γ^μ_{αβ} (接続) → 測地線方程式 → 粒子の軌道
└─ 2 階微分 → R^μ_{ναβ} (Riemann) → R_{μν} (Ricci) → G_{μν} (Einstein) → 時空の曲がり
\(\Gamma\) は「この時空の中で粒子がどう動くか」を求めるための量。\(G_{\mu\nu}\) は「この時空がどのくらい曲がっているか」を診断する量(ブラックホール内部の特異点判定など)。どちらも出発点は計量 \(g_{\mu\nu}\) で、この計量こそが Einstein 方程式で決まる主役。
このページについてフィードバック
分からなかった箇所、誤りの指摘、改善提案などをお寄せください。