第 5 章 練習問題¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. Poisson 方程式と波動方程式の比較
- B-2. 慣性質量と重力質量による落下加速度
- B-3. Eötvös パラメータの線形近似
- B-4. 自由落下座標への変換における速度と加速度
- B-5. \(m_I \neq m_G\) の場合の自由落下座標変換
- B-6. 光の移動時間と地面装置の獲得速度
- B-7. Doppler 効果から見た光の振動数
- B-8. ポテンシャル形式の重力赤方偏移公式
Medium(標準)
- M-1. 異なる物質の自由落下エレベーター実験
- M-2. 多粒子系での等価原理
- M-3. 潮汐力と等価原理の局所性
- M-4. 等価原理からの重力赤方偏移の導出
- M-5. 東京スカイツリーでの時計のずれ
- M-6. Newton 力学と一般相対論の解釈の転換
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. Poisson 方程式と波動方程式の比較¶
Newton の Poisson (ポアソン) 方程式
を 3 次元直交座標 \((x, y, z)\) で展開し、\(\nabla^2 \Phi\) を \(\Phi\) の偏微分で書き下せ。さらに、電磁ポテンシャル (electromagnetic potential) が満たす波動方程式
と比較して、Poisson 方程式に欠けている項を指摘し、その物理的意味を述べよ。
ヒント
\(\nabla^2 = \dfrac{\partial^2}{\partial x^2} + \dfrac{\partial^2}{\partial y^2} + \dfrac{\partial^2}{\partial z^2}\)。波動方程式との違いは時間微分の項の有無。
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B-2. 慣性質量と重力質量による落下加速度¶
質量 \(m\) の物体が一様な重力場 \(\mathbf{g}\) の中にある。慣性質量 (inertial mass) を \(m_I\)、重力質量 (gravitational mass) を \(m_G\) として、この物体の落下加速度 \(a\) を \(m_I\)、\(m_G\)、\(g\) で表せ。
ヒント
運動方程式 \(m_I a = m_G g\) から \(a\) について解く。
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B-3. Eötvös パラメータの線形近似¶
物質 A の慣性質量を \(m_{A,I}\)、重力質量を \(m_{A,G}\)、物質 B の慣性質量を \(m_{B,I}\)、重力質量を \(m_{B,G}\) とする。Eötvös (エトヴェシュ) パラメータ (Eötvös parameter)
について、\(m_{A,G}/m_{A,I} = 1 + \epsilon_A\)、\(m_{B,G}/m_{B,I} = 1 + \epsilon_B\)(\(|\epsilon_A|, |\epsilon_B| \ll 1\))とおいて、\(\eta\) を \(\epsilon_A\) と \(\epsilon_B\) の 1 次まで近似せよ。
ヒント
分母は \(1 + (\epsilon_A + \epsilon_B)/2 \approx 1\) と近似できる。
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B-4. 自由落下座標への変換における速度と加速度¶
一様重力場 \(\mathbf{g}\) 中の粒子の位置 \(\bar{x}(t)\) に対し、自由落下座標への変換
を施す。速度 \(\dot{\bar{x}}' \equiv d\bar{x}'/dt'\) を \(\dot{\bar{x}}\) と \(\mathbf{g}\)、\(t\) を用いて表せ。さらに加速度 \(\ddot{\bar{x}}'\) を \(\ddot{\bar{x}}\) と \(\mathbf{g}\) で表せ。
ヒント
\(t' = t\) なので \(d/dt' = d/dt\)。\(\bar{x}' = \bar{x} - \frac{1}{2}\mathbf{g}\,t^2\) の両辺を \(t\) で微分する。
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B-5. \(m_I \neq m_G\) の場合の自由落下座標変換¶
参考図: 図 4.1: 等価原理の思考実験
自由落下座標系で重力が消えることを示す計算において、運動方程式
に対し、\(m_I \neq m_G\) の場合に座標変換 \(\bar{x}' = \bar{x} - \frac{1}{2}\mathbf{g}\,t^2\) を施すと、変換後の運動方程式がどうなるか求めよ。重力項が完全には消えないことを示せ。
ヒント
\(\ddot{\bar{x}}' = \ddot{\bar{x}} - \mathbf{g}\) を代入すると \(m_I(\ddot{\bar{x}}' + \mathbf{g}) = m_G \mathbf{g} + \bar{F}_{\text{ext}}\) となる。\(m_I \neq m_G\) のとき何が残るか。
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B-6. 光の移動時間と地面装置の獲得速度¶
塔の頂上(高さ \(h\))から地面に向かって光を発射する。自由落下する観測者から見たとき、光が地面に到達するまでの時間 \(\Delta t\) を \(h\) と \(c\) で近似的に表せ。さらに、その間に地面の装置が自由落下系に対して獲得する速度 \(v\) を \(g\)、\(h\)、\(c\) で表せ。
ヒント
光の移動時間は \(\Delta t \approx h/c\)。地面の装置は自由落下系に対して加速度 \(g\) で加速している。
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B-7. Doppler 効果から見た光の振動数¶
特殊相対論 (special relativity) の Doppler (ドップラー) 効果の非相対論的近似として、光源に向かって速度 \(v\)(\(v \ll c\))で近づく観測者が受け取る振動数 \(\nu\) は
で与えられる(\(\nu'\) は光源の振動数)。問題 B-6. 光の移動時間と地面装置の獲得速度 の結果を代入して、地面で受け取る光の振動数 \(\nu\) を \(\nu'\)、\(g\)、\(h\)、\(c\) で表せ。
ヒント
問題 B-6. 光の移動時間と地面装置の獲得速度 で求めた \(v = gh/c\) をそのまま代入する。
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B-8. ポテンシャル形式の重力赤方偏移公式¶
重力赤方偏移 (gravitational redshift) の公式
は地面から頂上に光を送った場合の振動数変化を表す。一般の重力ポテンシャル (gravitational potential) \(\Phi\) を用いると、ポテンシャル差 \(\Delta\Phi\) の場所間で
と書ける。一様重力場で \(\Phi = gh\)(地面を基準)として、上の 2 つの式が整合することを確認せよ。
ヒント
\(\Delta\Phi = \Phi_{\text{top}} - \Phi_{\text{bottom}} = gh - 0 = gh\) とおいて代入する。
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Medium(標準)¶
M-1. 異なる物質の自由落下エレベーター実験¶
慣性質量 \(m_I\) と重力質量 \(m_G\) が物質によって異なる値を持つと仮定する。自由落下するエレベーターの中で、鉄のボールとアルミのボールを同時に手から離したとき、何が観察されるか説明せよ。なぜこれが等価原理の破れを意味するのかも述べよ。
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M-2. 多粒子系での等価原理¶
\(N\) 個の粒子が一様重力場 \(\mathbf{g}\) の中にあり、粒子間に非重力的な力 \(\bar{F}\) が働いている。慣性質量と重力質量が等しい(\(m_I = m_G = m\))場合に、自由落下座標への変換
を施すことで、すべての粒子の運動方程式から同時に重力の項が消えることを示せ。また、\(m_{I} \neq m_{G}\) の場合にこの議論が破綻する理由を説明せよ。
ヒント
\(i\) 番目の粒子の運動方程式を書き、座標変換後に重力項がキャンセルする条件を確認する。\(m_G/m_I\) が粒子ごとに異なると何が起きるか。
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M-3. 潮汐力と等価原理の局所性¶
潮汐力 (tidal force) について以下の問いに答えよ。
(a) 地球の中心から距離 \(r\) の位置における重力加速度は \(g(r) = GM/r^2\) である。地球の中心から距離 \(r_0\) にある自由落下系において、\(r_0\) から微小距離 \(\delta r\) だけ離れた点での重力加速度の差(潮汐加速度)\(\delta g\) を \(G\)、\(M\)、\(r_0\)、\(\delta r\) を用いて表せ。
(b) 等価原理が「十分に小さな領域」でのみ成り立つとはどういうことか、(a) の結果を用いて定量的に説明せよ。
ヒント
(a) \(g(r_0 + \delta r)\) を \(\delta r\) について Taylor (テイラー) 展開する。(b) 潮汐加速度が無視できる条件を \(\delta r\) に対する制約として表す。
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M-4. 等価原理からの重力赤方偏移の導出¶
等価原理 (equivalence principle) を用いて、重力赤方偏移の公式
を導出せよ。以下の手順に従うこと。
(a) 塔の頂上から光が発射された瞬間に自由落下を始める観測者を設定し、この観測者が慣性系にいることを等価原理から説明せよ。
(b) 光が地面に到達するまでの時間 \(\Delta t\) と、その間に地面の装置が自由落下系に対して獲得する速度 \(v\) を求めよ。
(c) Doppler 効果の非相対論的近似を適用して、地面から頂上へ光を送った場合の振動数変化を導け。
ヒント
本文中のエレベーターの思考実験を、塔と光の設定に置き換えて再構成する。自由落下系では特殊相対論が使えることがポイント。
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M-5. 東京スカイツリーでの時計のずれ¶
高さ \(h = 450\) m の東京スカイツリーの頂上と地面で、1 日あたりの時計のずれを見積もれ。\(g \approx 9.8\;\text{m/s}^2\)、\(c \approx 3.0 \times 10^8\;\text{m/s}\) を使え。
ヒント
\(\Delta\nu/\nu \approx gh/c^2\) を使い、1 日 = 86400 秒として、ずれをナノ秒で表せ。
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M-6. Newton 力学と一般相対論の解釈の転換¶
Newton 力学では「地面に静止している観測者が慣性系にいて、落下するリンゴに重力という力が働いている」と解釈する。一般相対論ではこの解釈がどう変わるか、以下の用語をすべて用いて説明せよ:自由落下、慣性運動、測地線 (geodesic)、時空の曲率 (curvature)。
ヒント
一般相対論では「力を受けずに運動する = 測地線を辿る = 自由落下する」であり、地面に立っている人の方が加速している。
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Advanced(発展)¶
A-1. 重力赤方偏移から導く計量の修正¶
等価原理と特殊相対論の知識を組み合わせて、以下を論ぜよ。
静止質量 \(m\) の物体が重力ポテンシャル \(\Phi_1\) の位置から \(\Phi_2\)(\(\Phi_2 > \Phi_1\))の位置まで持ち上げられた。
(a) 重力赤方偏移の結果から、ポテンシャル \(\Phi\) の位置に置かれた時計の固有時 (proper time) \(d\tau\) と、無限遠(\(\Phi = 0\))の座標時 \(dt\) の関係が
と書けることを説明せよ(\(|\Phi|/c^2 \ll 1\) の近似)。
(b) この結果を用いて、Minkowski (ミンコフスキー) 計量 (metric) \(ds^2 = -c^2 dt^2 + dx^2 + dy^2 + dz^2\) が弱い重力場の存在下でどのように修正されるか、\(g_{00}\) 成分の変化として表せ。
(c) (b) の結果は、「重力場のある時空は Minkowski 時空ではない」こと、すなわち時空が曲がっていることの最初の兆候である。この議論が、第 3 章の Lorentz 系の概念とどのように矛盾し、なぜ一般相対論への拡張が不可避であるかを論ぜよ。
ヒント
(a) 振動数の比は固有時の逆比に対応する。(b) 静止した粒子の世界線では \(dx = dy = dz = 0\) なので \(ds^2 = -c^2 d\tau^2\)。(c) \(g_{00}\) が位置に依存するということは、計量が Minkowski 形ではないことを意味する。
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A-2. GPS 衛星の相対論的補正¶
地球(質量 \(M\)、半径 \(R\))の表面に立つ観測者 A と、地上高 \(H\) の軌道を等速円運動する衛星に乗った観測者 B がいる。
(a) 重力赤方偏移の効果により、B の時計は A の時計に対して 1 秒あたりどれだけ速く進むか。ポテンシャル差
を用いて、比 \(\Delta\tau_{\text{grav}}/\Delta t\) を求めよ。(注:\(H \ll R\) の場合は \(\Delta\Phi \approx gH\) に帰着するが、GPS 衛星では \(H \approx 3.2R\) なのでこの近似は使えない。)
(b) 第 3 章で学んだ特殊相対論の時間の遅れ (time dilation) の効果により、軌道速度 \(v = \sqrt{gR^2/(R+H)} \approx \sqrt{g(R+H)}\) で運動する衛星の時計は A に対してどれだけ遅く進むか。\(v \ll c\) として比 \(\Delta\tau_{\text{SR}}/\Delta t\) を求めよ。
(c) GPS 衛星(\(H \approx 20{,}200\;\text{km}\))の場合に、(a) と (b) の効果の大きさを比較し、どちらが支配的かを判定せよ。必要に応じて \(g \approx 9.8\;\text{m/s}^2\)、\(R \approx 6{,}370\;\text{km}\)、\(c \approx 3.0 \times 10^8\;\text{m/s}\) を用いよ。
ヒント
(a) \(\Delta\tau_{\text{grav}}/\Delta t \approx \Delta\Phi/c^2 = gRH/[c^2(R+H)]\)。(b) 特殊相対論の時間の遅れは \(\Delta\tau_{\text{SR}}/\Delta t \approx -v^2/(2c^2)\)。(c) 数値を代入して比較する。符号に注意:重力効果は時計を速め、速度効果は時計を遅くする。
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