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目次
Basic(基礎)
- B-1. 光子のエネルギー計算
- B-2. 確率振幅と確率の関係
- B-3. 干渉項の計算
- B-4. 弾丸と電子の確率分布
- B-5. 複素数の極形式と Euler (オイラー) の公式
- B-6. 波の強度と干渉
- B-7. エネルギーの離散性 — 階段の比喩を数値で
- B-8. 確率振幅の重ね合わせ — 数値例
Medium(標準)
- M-1. 古典確率と量子確率の比較
- M-2. 光量子仮説と光電効果
- M-3. 物理学のモデルと反証可能性
- M-4. Einstein の二面性 — 創始者と批判者
- M-5. 確率振幅の干渉 — 定量的分析
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 光子のエネルギー計算¶
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(a) ナトリウムの黄色い光¶
方針: \(E = h\nu\) に直接代入する。
(b) 赤色レーザー(\(\lambda = 633\ \mathrm{nm}\))¶
方針: \(\nu = c/\lambda\) で振動数に変換してから \(E = h\nu = hc/\lambda\) を計算する。
(c) 携帯電話の電波(\(\nu = 2.0 \times 10^{9}\ \mathrm{Hz}\))¶
検算: 振動数の大きさの順は (a) > (b) > (c) であり、エネルギーもその順に大きい。可視光のエネルギーは \(10^{-19}\ \mathrm{J}\) のオーダー、電波は \(10^{-24}\ \mathrm{J}\) のオーダーで、物理的に妥当。
B-2. 確率振幅と確率の関係¶
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(a) \(\phi^*\)¶
\(\phi = 3 + 4i\) の複素共役は、\(i\) を \(-i\) に置き換えて
(b) \(|\phi|^2 = \phi^* \phi\)¶
(c) \(|\phi|^2\) を \(A\) と \(\theta\) で表す¶
\(\phi = Ae^{i\theta}\) のとき、\(\phi^* = Ae^{-i\theta}\)(\(A > 0\) は実数)であるから、
検算: (b) について \(|\phi| = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{25} = 5\) なので \(|\phi|^2 = 25\)。✓ (c) は位相 \(\theta\) に依存しないことが確認でき、確率は位相の絶対値に依存しないという量子力学の基本的性質と整合する。
B-3. 干渉項の計算¶
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(a) \(|\phi_1 + \phi_2|^2\) の展開¶
各項を計算する。\(\phi_1 = e^{i\alpha}\), \(\phi_2 = e^{i\beta}\) より:
- \(|\phi_1|^2 = e^{-i\alpha}e^{i\alpha} = 1\)
- \(|\phi_2|^2 = e^{-i\beta}e^{i\beta} = 1\)
- \(\phi_1^*\phi_2 = e^{-i\alpha}e^{i\beta} = e^{i(\beta - \alpha)}\)
- \(\phi_2^*\phi_1 = e^{-i\beta}e^{i\alpha} = e^{i(\alpha - \beta)}\)
干渉項の和:
したがって、
(b) \(|\phi_1|^2 + |\phi_2|^2\)¶
(c) 干渉項を位相差 \(\delta = \alpha - \beta\) で表す¶
(d) 特殊な場合¶
- \(\delta = 0\)(同位相):\(|\phi_1 + \phi_2|^2 = 2 + 2\cos 0 = 2 + 2 = \boxed{4}\)
- \(\delta = \pi\)(逆位相):\(|\phi_1 + \phi_2|^2 = 2 + 2\cos\pi = 2 - 2 = \boxed{0}\)
検算: \(\delta = 0\) のとき \(\phi_1 = \phi_2 = e^{i\alpha}\) なので \(|\phi_1 + \phi_2|^2 = |2e^{i\alpha}|^2 = 4\)。✓ \(\delta = \pi\) のとき \(\phi_2 = e^{i(\alpha-\pi)} = -e^{i\alpha} = -\phi_1\) なので \(|\phi_1 + \phi_2|^2 = 0\)。✓
B-4. 弾丸と電子の確率分布¶
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(a) 弾丸の場合:\(x = 0\)¶
(b) 電子の場合:\(x = 0\)¶
確率振幅を計算する:
(c) 比較¶
電子の場合の方が大きい。これは \(x = 0\)(二つのスリットの中間点)で確率振幅が同位相で重なり、建設的干渉が起きているためである。
検算: \(|\phi_1|^2 = (e^{-a^2/2})^2 = e^{-a^2} = P_1(0)\) であり、問題の設定と整合している。✓
B-5. 複素数の極形式と Euler (オイラー) の公式¶
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(a) \(e^{i\pi}\)¶
(b) \(e^{i\pi/2}\)¶
(c) \(e^{i\pi/4}\) の実部と虚部¶
(d) \(|e^{i\theta}|^2\)¶
あるいは \(|e^{i\theta}|^2 = \cos^2\theta + \sin^2\theta = 1\)。
検算: (a) は有名な Euler の等式 \(e^{i\pi} + 1 = 0\)。(d) は単位円上の点の絶対値が 1 であることに対応。✓
B-6. 波の強度と干渉¶
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(a) \(h_1 + h_2\) を積の形に¶
和の公式 \(\cos P + \cos Q = 2\cos\!\left(\frac{P+Q}{2}\right)\cos\!\left(\frac{P-Q}{2}\right)\) を用いる。
\(P = \omega t\), \(Q = \omega t + \delta\) とすると:
(b) \(\delta = 0\) のとき¶
振幅は \(\boxed{2A}\)
(c) \(\delta = \pi\) のとき¶
検算: (b) 同位相の波は強め合い、振幅が 2 倍。(c) 逆位相の波は完全に打ち消し合う。物理的に妥当。✓
B-7. エネルギーの離散性 — 階段の比喩を数値で¶
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(a) 基底状態と第一励起状態のエネルギー¶
(b) 放出される光子のエネルギー¶
(c) 光子の振動数¶
まず eV を J に変換:
(d) 可視光の範囲に入るか¶
可視光の振動数範囲は \(4.3 \times 10^{14}\ \mathrm{Hz}\) 〜 \(7.5 \times 10^{14}\ \mathrm{Hz}\)。
\(\nu \approx 2.46 \times 10^{15}\ \mathrm{Hz}\) はこの範囲の上限 \(7.5 \times 10^{14}\ \mathrm{Hz}\) よりも大きい。
検算: 水素の Lyman 系列(\(n \geq 2 \to n = 1\))は紫外線領域であることが知られており、結果は妥当。波長を確認すると \(\lambda = c/\nu = 3.00 \times 10^8 / 2.46 \times 10^{15} \approx 122\ \mathrm{nm}\) で、これは Lyman-\(\alpha\) 線(121.6 nm)に一致。✓
B-8. 確率振幅の重ね合わせ — 数値例¶
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(a) \(P_1 = |\phi_1|^2\)¶
(b) \(P_2 = |\phi_2|^2\)¶
(c) 規格化条件の確認¶
(d) \(\phi_2\) の実部と虚部¶
検算: \(|\phi_2|^2 = \left(\frac{1}{\sqrt{6}}\right)^2 + \left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2 = \frac{1}{6} + \frac{1}{2} = \frac{1}{6} + \frac{3}{6} = \frac{4}{6} = \frac{2}{3}\)。✓
Medium(標準)¶
M-1. 古典確率と量子確率の比較¶
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(a) 弾丸で \(P_{12} = P_1 + P_2\) が成り立つ理由¶
弾丸は巨視的な粒子であり、二重スリットを通過する際に必ずどちらか一方の孔のみを通る。孔 1 を通る事象と孔 2 を通る事象は排反事象(同時には起こらない)である。したがって、古典的な確率の加法定理がそのまま適用でき、
が成り立つ。弾丸が一方の孔を通るとき、他方の孔が開いているかどうかは弾丸の軌道に影響を与えないため、各孔からの確率分布は独立に足し合わせることができる。
(b) 電子で \(P_{12} \neq P_1 + P_2\) となる理由¶
電子の場合、各孔を通る過程に対して確率振幅(複素数)\(\phi_1(x)\), \(\phi_2(x)\) が割り当てられる。量子力学のルールでは、区別不可能な経路の確率振幅を足し合わせてから絶対値の二乗を取る:
これを展開すると:
干渉項 \(2\,\mathrm{Re}(\phi_1^*\phi_2)\) は一般にゼロではないため、\(P_{12} \neq P_1 + P_2\) となる。この干渉項は位置 \(x\) に依存して正にも負にもなり、スクリーン上に明暗の縞模様(干渉パターン)を生じさせる。電子は一個ずつ粒として検出されるが、多数の電子を蓄積すると、この干渉パターンが統計的に現れる。
(c) 確率振幅が実数に限定された場合¶
実数の場合でも干渉項は現れる。\(\phi_1, \phi_2\) が実数のとき:
これはゼロとは限らないので、干渉自体は起きる。
しかし、重大な制限が生じる。実数の確率振幅の場合、二つの振幅の「位相差」は \(0\)(同符号:\(\phi_1\phi_2 > 0\))か \(\pi\)(異符号:\(\phi_1\phi_2 < 0\))の 2 値しか取れない。したがって干渉項は \(+2|\phi_1||\phi_2|\)(建設的干渉)か \(-2|\phi_1||\phi_2|\)(破壊的干渉)の 2 通りしかなく、位相差が連続的に変化する滑らかな干渉パターンを再現できない。
複素数の場合は位相差 \(\delta\) が \(0\) から \(2\pi\) まで連続的に変化でき、干渉項 \(2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta\) は \(-2|\phi_1||\phi_2|\) から \(+2|\phi_1||\phi_2|\) まで滑らかに変わる。これにより、実験で観測される連続的な干渉縞を正しく記述できる。
M-2. 光量子仮説と光電効果¶
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(a) 最大運動エネルギー \(K_{\max}\)¶
光子 1 個のエネルギー \(h\nu\) が金属中の電子に与えられる。電子が金属表面から脱出するのに最低限必要なエネルギーが仕事関数 \(W\) である。エネルギー保存則より:
(b) しきい振動数 \(\nu_0\)¶
電子がぎりぎり飛び出す条件は \(K_{\max} = 0\) であるから:
(c) 古典論との矛盾¶
古典的な波動論では、光のエネルギーは振幅の二乗(すなわち強度)に比例し、振動数には依存しない。したがって古典論の前提は:
「光の強度を上げれば、振動数に関係なく、電子に任意の大きさのエネルギーを与えることができる」
というものである。しかし実験では、\(\nu < \nu_0\) の光はどんなに強度を上げても電子を放出しない。これは、光のエネルギーが \(h\nu\) という離散的な単位(光子)で電子に渡されるためであり、1 個の光子のエネルギー \(h\nu\) が \(W\) に満たなければ、光子を何個当てても(各光子が独立に電子と相互作用するため)1 個の電子を脱出させることはできない。これが古典的な「エネルギーは連続的に蓄積される」という前提と矛盾する。
(d) 数値計算¶
光子のエネルギー:
eV に変換:
最大運動エネルギー:
検算: 波長 400 nm は紫色の光で、エネルギーは約 3.1 eV。仕事関数 2.3 eV はセシウムなどの金属に近い値。\(K_{\max} \approx 0.8\ \mathrm{eV}\) は妥当な値。✓
M-3. 物理学のモデルと反証可能性¶
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(a) Newton 力学が「仮説」であるとは¶
Newton 力学が「仮説」であるとは、それが自然の「真理」ではなく、「現時点で実験と矛盾していない最良のモデル」にすぎないということである。実験で反証されれば、より良いモデルに置き換えられる。
-
成功した領域: 天体の運動(惑星の軌道、月の運動など)。Newton の運動方程式と万有引力の法則により、惑星の位置を高精度で予言できる。海王星の発見は Newton 力学の予言に基づいていた。
-
破綻した領域: 原子スケールの現象。例えば、水素原子のスペクトル線の離散性や、電子の二重スリット実験における干渉パターンは Newton 力学では説明できない。また、水星の近日点移動の精密な値も Newton 力学では再現できず、一般相対論が必要となる。
(b) 量子力学を「仮説」と呼ぶ理由¶
量子力学は 100 年以上にわたり、原子物理学、固体物理学、素粒子物理学などあらゆる実験で予言が正しいことが確認されてきた。しかし、それでも「仮説」と呼ぶ理由は以下の通りである:
量子力学と一般相対論(重力のモデル)は、それぞれの適用範囲では極めて正確だが、両者を同時に適用すべき状況(ブラックホールの中心、宇宙の始まりなど、極めて小さいスケールで重力が強い領域)では互いに矛盾する。両者を統合する「量子重力」のモデルはまだ見つかっていない。したがって、量子力学は現在の形では不完全である可能性があり、将来より包括的なモデルの近似として位置づけられる可能性がある。どんなに成功していても、原理的に反証される可能性が排除できない以上、「仮説」である。
(c) 反証可能性とは¶
反証可能性 (falsifiability) とは、ある主張に対して「どのような観測結果が得られたら、その主張が誤りだと判定できるか」が明確に定義できる性質のことである。科学的な仮説は反証可能でなければならない。
「明日の天気は晴れか雨か曇りである」という主張は、考えられるすべての天気の状態を網羅しているため、どのような観測結果が得られても矛盾しない。晴れでも雨でも曇りでも、この主張は「正しい」ことになる。反証する方法が存在しないため、この主張は反証可能ではなく、科学的な予言としての価値を持たない。
M-4. Einstein の二面性 — 創始者と批判者¶
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(a) 創始者としての根拠¶
1905 年の光量子仮説:
当時、光は Maxwell の電磁気学により波動であることが確立されていた。しかし光電効果(金属に光を当てると電子が飛び出す現象)において、放出される電子のエネルギーが光の強度ではなく振動数に依存するという実験事実は、波動論では説明できなかった。Einstein は光が振動数 \(\nu\) に比例するエネルギー \(E = h\nu\) を持つ粒子(光量子、後に光子と呼ばれる)の集まりであると提唱した。これにより光電効果を定量的に説明し、光の粒子性を確立した。
1917 年の誘導放出の予言:
Einstein は熱平衡状態にある原子と輻射場の統計力学的考察から、光の吸収と自発放出に加えて、誘導放出(外部の光子に誘発されて、同じ振動数・同じ方向・同じ位相の光子が放出される過程)が存在しなければ Planck の黒体輻射公式と整合しないことを示した。この誘導放出は、すべての光子が揃った状態を作り出す仕組みであり、1960 年に実現されたレーザー (LASER: Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation) の動作原理そのものである。
(b) 批判者となった理由¶
1920 年代に完成した量子力学の核心は、「測定するまで物理量は確定した値を持たない」「予言できるのは確率のみ」という確率的・非決定論的な世界観である。Einstein はこの世界観を根本的に受け入れなかった。
「神はサイコロを振らない (Gott würfelt nicht)」という言葉は、Einstein が自然の根底には決定論的な法則があるはずだという信念を表明したものである。Einstein は、量子力学が正しい実験予言を与えることは認めつつも、それは「不完全な」記述であり、測定前から物理量の値を決定している、より深い(決定論的な)モデルが存在するはずだと考えた。確率が現れるのは、我々がまだ知らない変数(隠れた変数)を無視しているからにすぎない、というのが Einstein の立場であった。
(c) EPR パラドックスと Bell の定理¶
Einstein は 1935 年の EPR 論文で、量子力学の不完全性を主張した。離れた二粒子の相関(量子もつれ)において、一方の測定結果が他方を瞬時に決定するように見えることから、測定前から値が決まっている隠れた変数が存在するはずだと論じた。1964 年、Bell はこの隠れた変数の仮定から導かれる統計的制約として Bell の不等式を導出した。もし隠れた変数が存在するなら、測定結果の相関はこの不等式を満たさなければならない。その後の実験(Aspect 実験 (1982) など)により Bell の不等式が破れることが確認され、Einstein が想定した局所的な隠れた変数モデルは否定された。(197 字)
M-5. 確率振幅の干渉 — 定量的分析¶
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(a) 合成確率 \(P_{12}(x)\)¶
絶対値の二乗を取る:
ここで \(\Delta r = r_1 - r_2\) としたので \(r_2 - r_1 = -\Delta r\)。
したがって:
別解(直接展開):
結果は同じ。
(b) 最大値の条件¶
\(P_{12}\) が最大となるのは \(\cos(k\Delta r) = 1\) のとき、すなわち:
このとき:
(c) 最小値 \(0\) の条件¶
\(P_{12} = 0\) となるのは \(\cos(k\Delta r) = -1\) のとき、すなわち:
(d) \(\lambda = 2\pi/k\) を用いた書き換え¶
\(k = 2\pi/\lambda\) より \(2\pi/k = \lambda\)。
建設的干渉(最大)の条件:
破壊的干渉(最小)の条件:
検算: 経路差が波長の整数倍のとき建設的干渉、半整数倍のとき破壊的干渉。これは古典的な波の干渉条件と一致する。また \(P_{12}^{\max} = 4A^2 = 4 \times |\phi_1|^2\) であり、各スリットからの確率 \(A^2\) の 4 倍。これは振幅が 2 倍になるため確率が 4 倍になることに対応。✓
Advanced(発展)¶
A-1. 複素確率振幅の不可欠性¶
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(a) 実数の場合の幾何学的条件¶
\(\phi_1\), \(\phi_2\) がともに実数の場合、規格化条件は:
これは \((\phi_1, \phi_2)\) 平面における単位円上の点を表す。すなわち、\((|\phi_1|, |\phi_2|)\) は第一象限における単位円上の点(\(|\phi_1|^2 + |\phi_2|^2 = 1\), \(|\phi_1| \geq 0\), \(|\phi_2| \geq 0\))を満たす。
ただし \(\phi_1, \phi_2\) 自体は符号を持ちうるので、自由度は角度パラメータ 1 つ(\(\phi_1 = \cos\theta\), \(\phi_2 = \pm\sin\theta\) のように書ける)に加え、各振幅の符号(\(+\) か \(-\))の選択のみである。
(b) 複素数の場合の自由度の増加¶
複素数の場合、\(\phi_1 = |\phi_1|e^{i\alpha}\), \(\phi_2 = |\phi_2|e^{i\beta}\) と書ける。独立な実パラメータを数える:
- \(|\phi_1|\):規格化条件 \(|\phi_1|^2 + |\phi_2|^2 = 1\) により、\(|\phi_1|\) が決まれば \(|\phi_2|\) も決まる → 1 パラメータ
- \(\alpha\):1 パラメータ
- \(\beta\):1 パラメータ
合計 3 パラメータ。ただし、全体の位相 \(e^{i\gamma}\)(\(\phi_1 \to \phi_1 e^{i\gamma}\), \(\phi_2 \to \phi_2 e^{i\gamma}\))は物理的に観測不可能なので、1 パラメータ分を差し引く。
したがって、物理的に独立なパラメータは \(3 - 1 = 2\) 個。
実数の場合:\(|\phi_1|\)(1 パラメータ、規格化で拘束)と各符号の選択。実質的には \(\phi_1 = \cos\theta\), \(\phi_2 = \sin\theta\) と書けば 1 パラメータ(\(\theta\))。ただし符号の自由度を含めても、位相差は \(0\) か \(\pi\) の離散値しか取れないので、連続パラメータとしては 1 個。
複素数の場合の物理的自由度は 2 個(例えば \(|\phi_1|\) と相対位相 \(\alpha - \beta\))。
(c) 実数の場合の干渉パターンへの制限¶
実数の確率振幅の場合、干渉項は:
位置 \(x\) の各点で \(\phi_1(x)\) と \(\phi_2(x)\) は実数値を取るので、その積 \(\phi_1(x)\phi_2(x)\) の符号は、両者が同符号なら正、異符号なら負となる。つまり干渉項は:
の 2 値しか取れない(各点で建設的干渉か破壊的干渉かの二者択一)。
一方、実験で観測される干渉縞は、位置 \(x\) に応じて確率が \(\cos\) 関数のように滑らかに変化する連続的なパターンである。複素数の確率振幅では、位相差 \(\delta(x) = k(r_1(x) - r_2(x))\) が位置 \(x\) とともに連続的に変化し、干渉項は \(2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta(x)\) となって \(-2|\phi_1||\phi_2|\) から \(+2|\phi_1||\phi_2|\) まで滑らかに変わる。
実数の場合は、干渉項が急激に符号を変える不連続な(あるいはゼロを挟んで離散的に切り替わる)パターンしか作れず、実験で観測される滑らかな \(\cos\) 型の干渉縞を再現することは不可能である。
(d) 物理的意義のまとめ¶
量子力学において確率振幅が複素数であることの物理的意義は、連続的な位相という自由度を持つことにある。複素数の位相は \(0\) から \(2\pi\) まで連続的に変化でき、これにより二つの経路の確率振幅の干渉が \(\cos\delta\) を通じて滑らかに建設的から破壊的まで変化する。この連続的な位相の自由度が、実験で観測される滑らかな干渉縞、時間発展における位相回転(\(e^{-iEt/\hbar}\))、そして量子もつれにおける非古典的相関を可能にしている。実数では位相差が \(0\) か \(\pi\) の離散値に制限され、量子力学の豊かな予言を再現できない。(200 字)
A-2. 光量子仮説から誘導放出へ — Einstein の論理の連鎖¶
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(a) Boltzmann 分布の極限¶
\(T \to \infty\) のとき:
物理的意味:高温極限では熱エネルギー \(k_B T\) がエネルギー差 \(E_2 - E_1\) に比べて十分大きいため、基底状態と励起状態がほぼ等しく占有される(等分配)。
\(T \to 0\) のとき:
物理的意味:絶対零度ではすべての原子が最低エネルギー状態(基底状態)に落ち、励起状態の占有数はゼロになる。
(b) 平衡条件から \(\rho(\nu)\) を求める¶
熱平衡条件:
\(\rho(\nu)\) について解く:
Boltzmann 分布 \(N_1/N_2 = \exp\!\left(\frac{E_2 - E_1}{k_B T}\right)\) を代入する。\(E_2 - E_1 = h\nu\) であるから:
(c) Planck の公式との比較¶
Planck の黒体輻射公式:
(b) の結果と比較する。両者が全ての温度 \(T\) で一致するためには、分母の構造が一致しなければならない。
(b) の結果の分母は \(B' e^{h\nu/(k_BT)} - B\)、Planck の公式の分母(\(A\) で割った形にするため)は \((A \cdot c^3/(8\pi h\nu^3))(e^{h\nu/(k_BT)} - 1)\) に対応する。
直接比較するため、(b) を書き直す:
Planck の公式:
両者が全ての \(T\) で一致するためには:
- 分母の \(e^{h\nu/(k_BT)}\) の係数が一致:\(B'/B = 1\)、すなわち
- 分子が一致:
検算(\(T \to \infty\) の極限): \(T \to \infty\) では \(e^{h\nu/(k_BT)} \approx 1 + h\nu/(k_BT)\) なので:
(b) の結果:\(\rho(\nu) \approx \frac{A}{B'(1 + h\nu/(k_BT)) - B} = \frac{A}{(B'-B) + B' h\nu/(k_BT)}\)
\(B' = B\) のとき:\(\rho(\nu) \approx \frac{A}{B \cdot h\nu/(k_BT)} = \frac{A k_B T}{B h\nu}\)
Planck の公式:\(\rho(\nu) \approx \frac{8\pi h\nu^3}{c^3} \cdot \frac{k_BT}{h\nu} = \frac{8\pi\nu^2 k_BT}{c^3}\)
これは Rayleigh-Jeans の法則であり、\(A/B = 8\pi h\nu^3/c^3\) と整合する。✓
(d) 誘導放出が存在しない場合(\(B = 0\))¶
\(B = 0\) とすると、平衡条件は:
これは Wien の輻射法則の形であり、Planck の公式:
と矛盾する。具体的には:
-
\(\nu^3\) の因子が欠落している。 \(B = 0\) の結果では \(\rho(\nu)\) の振動数依存性は \(e^{-h\nu/(k_BT)}\) のみで、Planck の公式に含まれる \(\nu^3\) の前因子がない(\(A/B'\) が \(\nu\) に依存しないと仮定した場合)。
-
低振動数(高温)極限で不一致。 \(h\nu \ll k_BT\) のとき、\(B = 0\) の結果は \(\rho(\nu) \approx A/B'\)(定数)となるが、Planck の公式(および実験で確認された Rayleigh-Jeans の法則)は \(\rho(\nu) \propto \nu^2 T\) となる。
-
分母の構造が異なる。 Planck の公式の分母は \(e^{h\nu/(k_BT)} - 1\) であるが、\(B = 0\) の場合は単なる指数関数 \(e^{-h\nu/(k_BT)}\) であり、\(-1\) の項が現れない。
したがって、誘導放出(\(B \neq 0\))は熱平衡の要請から論理的に必然である。Planck の黒体輻射公式が実験的に正しい以上、吸収と自発放出だけでは熱平衡を実現できず、誘導放出が存在しなければ原子と輻射場の間の詳細釣り合いが成立しない。Einstein は熱力学的な整合性の要請のみから、誘導放出という新しい物理過程の存在を演繹的に導いたのである。
検算: \(B = 0\) の結果 \(\rho \propto e^{-h\nu/(k_BT)}\) は Wien の輻射法則に対応し、これは高振動数(\(h\nu \gg k_BT\))でのみ Planck の公式の良い近似であることが知られている。低振動数では破綻するため、\(B = 0\) は一般には成り立たない。✓
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