第 5 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 規格化条件の確認
- B-2. 内積の計算
- B-3. 外積(射影演算子)の作用
- B-4. \(x\) 基底への展開
- B-5. \(y\) 基底の直交性
- B-6. 確率振幅から確率を求める
- B-7. Kronecker デルタの利用
- B-8. 基底変換行列の成分
Medium(標準)
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 規格化条件の確認¶
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問題:
状態 \(|\psi\rangle = \frac{1+i}{2}|+\rangle + \frac{\sqrt{2}}{2}|-\rangle\) が規格化条件 \(|c_+|^2 + |c_-|^2 = 1\) を満たすことを確認せよ。
解法の方針: \(c_+ = \frac{1+i}{2}\), \(c_- = \frac{\sqrt{2}}{2}\) の絶対値の 2 乗をそれぞれ計算し、合計が 1 になることを確認する。
計算の詳細:
最終回答:
規格化条件は満たされている。
検算: 別の方法として \(|c_+|^2 = c_+^* c_+ = \frac{1-i}{2} \cdot \frac{1+i}{2} = \frac{(1-i)(1+i)}{4} = \frac{1+1}{4} = \frac{1}{2}\) と確認できる。
B-2. 内積の計算¶
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問題:
\(|\psi\rangle = \frac{1}{\sqrt{3}}|+\rangle + \sqrt{\frac{2}{3}}\,e^{i\pi/4}|-\rangle\) に対して、内積 \(\langle+|\psi\rangle\) と \(\langle-|\psi\rangle\) を求め、それぞれの絶対値の 2 乗を計算せよ。
解法の方針: 正規直交性 \(\langle+|+\rangle = 1\), \(\langle+|-\rangle = 0\), \(\langle-|+\rangle = 0\), \(\langle-|-\rangle = 1\) を用いて内積を計算する。
計算の詳細:
絶対値の 2 乗:
最終回答:
検算: \(|\langle+|\psi\rangle|^2 + |\langle-|\psi\rangle|^2 = \frac{1}{3} + \frac{2}{3} = 1\) ✓(規格化条件を満たす)
B-3. 外積(射影演算子)の作用¶
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問題:
射影演算子 \(\hat{P}_+ = |+\rangle\langle+|\) を状態 \(|\psi\rangle = \frac{3}{5}|+\rangle + \frac{4}{5}|-\rangle\) に作用させよ。結果を \(|+\rangle\), \(|-\rangle\) の線形結合として書き、その状態が規格化されているか確認せよ。
解法の方針: \(\hat{P}_+ = |+\rangle\langle+|\) を \(|\psi\rangle\) に作用させる。外積の作用は「内積を取ってからケットを掛ける」手順で計算する。
計算の詳細:
これを \(|+\rangle\), \(|-\rangle\) の線形結合として書くと:
規格化の確認:
最終回答:
この状態は規格化されていない。ノルムの 2 乗は \(9/25\) であり、これは元の状態 \(|\psi\rangle\) が \(|+\rangle\) として見出される確率 \(|c_+|^2 = 9/25\) に等しい。規格化された射影後の状態は \(|+\rangle\) そのものである。
検算: 射影演算子の冪等性 \(\hat{P}_+^2 = \hat{P}_+\) を確認する。\(\hat{P}_+(\hat{P}_+|\psi\rangle) = \hat{P}_+\left(\frac{3}{5}|+\rangle\right) = \frac{3}{5}|+\rangle\langle+|+\rangle = \frac{3}{5}|+\rangle = \hat{P}_+|\psi\rangle\) ✓
B-4. \(x\) 基底への展開¶
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問題:
状態 \(|+\rangle\)(\(z\) 方向スピン上向き)を \(x\) 方向の基底 \(|+\rangle_x\), \(|-\rangle_x\) で展開せよ。すなわち、
の係数 \(a\), \(b\) を、式 (5.11) と (5.12) を用いて求めよ。
解法の方針: 式 (5.11) と (5.12) を連立方程式として \(|+\rangle\), \(|-\rangle\) について解く。
計算の詳細:
式 (5.11) と (5.12) を再掲する:
2 式を足す:
最終回答:
検算: 別の方法として、\(a = {}_x\langle+|+\rangle\) を直接計算する。\({}_x\langle+| = \frac{1}{\sqrt{2}}\langle+| + \frac{1}{\sqrt{2}}\langle-|\) なので、\(a = {}_x\langle+|+\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\langle+|+\rangle + \frac{1}{\sqrt{2}}\langle-|+\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\) ✓。同様に \(b = {}_x\langle-|+\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\langle+|+\rangle - \frac{1}{\sqrt{2}}\langle-|+\rangle = \frac{1}{\sqrt{2}}\) ✓。規格化も \(|a|^2 + |b|^2 = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} = 1\) ✓。
B-5. \(y\) 基底の直交性¶
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問題:
式 (5.13) と (5.14) を用いて、内積 \({}_y\langle+|-\rangle_y\) を計算し、\(|+\rangle_y\) と \(|-\rangle_y\) が直交することを確かめよ。
解法の方針: 式 (5.13) と (5.14) からブラ \({}_y\langle+|\) を構成し、\(|-\rangle_y\) との内積を計算する。
計算の詳細:
式 (5.13) と (5.14) より:
ブラを作るときは係数を複素共役にする:
内積を計算する:
最終回答:
\(|+\rangle_y\) と \(|-\rangle_y\) は直交している。✓
検算: \({}_y\langle+|+\rangle_y = \frac{1}{2}\langle+|+\rangle + \frac{1}{2}\left(-i\right)(i)\langle-|-\rangle = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} = 1\) ✓(規格化も確認)
B-6. 確率振幅から確率を求める¶
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問題:
\(y\) 方向にスピン上向き(状態 \(|+\rangle_y\))の粒子を \(z\) 方向の Stern-Gerlach 装置に通す。\(S_z = +\hbar/2\) を得る確率と \(S_z = -\hbar/2\) を得る確率をそれぞれ求めよ。
解法の方針: \(|+\rangle_y\) の \(z\) 基底での展開係数を読み取り、各確率を計算する。
計算の詳細:
式 (5.13) より:
\(S_z = +\hbar/2\) を得る確率振幅は \(c_+ = \frac{1}{\sqrt{2}}\)、\(S_z = -\hbar/2\) を得る確率振幅は \(c_- = \frac{i}{\sqrt{2}}\)。
最終回答:
\(y\) 方向にスピン上向きの粒子を \(z\) 方向で測定すると、上向き・下向きが等確率(50% ずつ)で出る。
検算: \(P(+) + P(-) = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} = 1\) ✓。また、\(x\) 方向の場合(式 (5.11))と同様に、直交する方向の測定では等確率になるという物理的期待とも一致する。
B-7. Kronecker デルタの利用¶
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問題:
\(i, j \in \{+, -\}\) に対して定義される Kronecker デルタ \(\delta_{ij}\) を用いて、次の和を計算せよ:
解法の方針: \(j = +\) と \(j = -\) の各場合について被加数を評価し、足し合わせる。
計算の詳細:
各 Kronecker デルタの値: - \(\delta_{++} = 1\), \(\delta_{+-} = 0\), \(\delta_{--} = 1\)
最終回答:
検算: この和は \(\delta_{+-}\) に等しいはずである(Kronecker デルタの合成則 \(\sum_j \delta_{ij}\delta_{jk} = \delta_{ik}\))。\(\delta_{+-} = 0\) なので結果は整合する。✓
B-8. 基底変換行列の成分¶
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問題:
式 (5.13), (5.14) を用いて、\(z\) 基底から \(y\) 基底への基底変換行列
の各成分を書き下せ。
解法の方針: 式 (5.13), (5.14) から \(|+\rangle_y\), \(|-\rangle_y\) の \(z\) 基底での展開係数を読み取り、内積として行列成分を求める。
計算の詳細:
式 (5.13): \(|+\rangle_y = \frac{1}{\sqrt{2}}|+\rangle + \frac{i}{\sqrt{2}}|-\rangle\)
式 (5.14): \(|-\rangle_y = \frac{1}{\sqrt{2}}|+\rangle - \frac{i}{\sqrt{2}}|-\rangle\)
各成分を読み取る:
最終回答:
検算: ユニタリ性を確認する。\(U^\dagger = \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 & -i \\ 1 & i \end{pmatrix}\)
もう少し丁寧に:
\((U^\dagger U)_{11} = \frac{1}{2}(1 \cdot 1 + (-i)(i)) = \frac{1}{2}(1 + 1) = 1\)
\((U^\dagger U)_{12} = \frac{1}{2}(1 \cdot 1 + (-i)(-i)) = \frac{1}{2}(1 + i^2) = \frac{1}{2}(1 - 1) = 0\)
\((U^\dagger U)_{21} = \frac{1}{2}(1 \cdot 1 + i \cdot i) = \frac{1}{2}(1 + i^2) = \frac{1}{2}(1 - 1) = 0\)
\((U^\dagger U)_{22} = \frac{1}{2}(1 \cdot 1 + i(-i)) = \frac{1}{2}(1 + 1) = 1\)
Medium(標準)¶
M-1. 完全性関係から規格化条件を導く¶
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問題:
完全性関係 \(|+\rangle\langle+| + |-\rangle\langle-| = \mathbf{1}\) と内積の定義を用いて、任意の規格化された状態 \(|\psi\rangle\)(\(\langle\psi|\psi\rangle = 1\))に対して
が成り立つことを証明せよ。
解法の方針: \(\langle\psi|\psi\rangle = 1\) に完全性関係を挿入する。
計算の詳細:
\(\langle\psi|\psi\rangle = 1\) の左辺に恒等演算子 \(\mathbf{1} = |+\rangle\langle+| + |-\rangle\langle-|\) を挿入する:
ここで、内積の性質 \(\langle\psi|j\rangle = \langle j|\psi\rangle^*\) を用いると:
\(\langle\psi|\psi\rangle = 1\) であるから:
検算: 具体例で確認する。\(|\psi\rangle = \frac{1}{\sqrt{3}}|+\rangle + \sqrt{\frac{2}{3}}|-\rangle\) のとき、\(|\langle+|\psi\rangle|^2 + |\langle-|\psi\rangle|^2 = \frac{1}{3} + \frac{2}{3} = 1\) ✓
M-2. \(x\) 基底の完全性関係¶
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問題:
式 (5.11) と (5.12) を用いて、\(x\) 方向の基底に対する完全性関係
が成り立つことを、\(z\) 基底での行列表現を計算することで確かめよ。
解法の方針: \(|+\rangle_x\), \(|-\rangle_x\) を \(z\) 基底の列ベクトルで表し、外積を行列として計算して足し合わせる。
計算の詳細:
\(z\) 基底での列ベクトル表現:
外積 \(|+\rangle_x\,{}_x\langle+|\) の行列表現:
外積 \(|-\rangle_x\,{}_x\langle-|\) の行列表現:
足し合わせ:
最終回答:
検算: 任意の状態 \(|\psi\rangle = \begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}\) に作用させると \(\mathbf{1}|\psi\rangle = \begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix} = |\psi\rangle\) となることは明らか。また、\(z\) 基底の完全性関係 \(|+\rangle\langle+| + |-\rangle\langle-| = \begin{pmatrix}1&0\\0&0\end{pmatrix} + \begin{pmatrix}0&0\\0&1\end{pmatrix} = \mathbf{1}\) と同じ結果が得られており、基底の選び方によらず完全性関係が成り立つことが確認できる。✓
M-3. 基底変換行列のユニタリ性¶
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問題:
式 (5.15) の基底変換行列
がユニタリ行列 (unitary matrix) であること、すなわち \(U^\dagger U = \mathbf{1}\) を満たすことを示せ。ここで \(U^\dagger\) は \(U\) の転置複素共役(エルミート共役)である。
解法の方針: \(U\) の成分がすべて実数なので \(U^\dagger = U^T\)。\(U^T U\) を計算して単位行列になることを示す。
計算の詳細:
\(U\) は実行列なので:
(この行列は対称行列なので \(U^T = U\) でもある。)
検算: \(UU^\dagger\) も計算すると同じ結果になる(この場合 \(U = U^T\) なので \(UU^\dagger = U^\dagger U\))。また、\(\det U = \frac{1}{2}((-1) - 1) = -1\) なので \(|\det U| = 1\) であり、ユニタリ行列の必要条件 \(|\det U| = 1\) を満たす。✓
M-4. 連続測定の確率¶
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問題:
以下の連続 Stern-Gerlach 実験を考える:
- \(z\) 方向の装置でスピン上向き(\(S_z = +\hbar/2\))のビームだけを選別する。
- 選別されたビームを \(x\) 方向の装置に通す。
- \(x\) 方向の装置で \(S_x = +\hbar/2\) と出たビームだけを選別する。
- 選別されたビームを再び \(z\) 方向の装置に通す。
最終段階で \(S_z = -\hbar/2\) を得る確率を、各段階の確率振幅を順に追って求めよ。
解法の方針: 各段階での状態と確率振幅を順に追い、全体の振幅を求めてから確率を計算する。
計算の詳細:
ステップ 1: \(z\) 方向の装置でスピン上向きを選別。状態は \(|+\rangle\)。
ステップ 2: \(|+\rangle\) を \(x\) 方向の装置に通す。\(S_x = +\hbar/2\) が選別される確率振幅は:
D4 の結果(あるいは式 (5.11) から直接)より:
ステップ 3: \(S_x = +\hbar/2\) が選別された後、状態は \(|+\rangle_x\)。
ステップ 4: \(|+\rangle_x\) を再び \(z\) 方向の装置に通す。\(S_z = -\hbar/2\) が見出される確率振幅は:
式 (5.11) より \(|+\rangle_x = \frac{1}{\sqrt{2}}|+\rangle + \frac{1}{\sqrt{2}}|-\rangle\) なので:
全体の振幅: 各段階の振幅を掛け合わせる(第 4 章の「振幅を掛ける」ルール):
最終回答:
検算・考察: もし \(x\) 方向の装置を挟まなければ、\(|+\rangle\) の粒子を \(z\) 方向で測定して \(S_z = -\hbar/2\) を得る確率は \(|\langle-|+\rangle|^2 = 0\) である。\(x\) 方向の装置を間に挟むことで、\(z\) 方向の情報が「かき乱され」、本来 0 だった確率が \(1/4\) に変わった。これは量子力学における測定の非自明な効果を示している。✓
Advanced(発展)¶
A-1. 任意方向のスピン固有状態¶
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問題:
\(z\) 軸から極角 \(\theta\)、方位角 \(\phi\) の方向を向いた単位ベクトル \(\hat{\mathbf{n}} = (\sin\theta\cos\phi,\;\sin\theta\sin\phi,\;\cos\theta)\) を考える。\(\hat{\mathbf{n}}\) 方向のスピン成分 \(S_{\hat{n}} = +\hbar/2\) に対応する固有状態が
で与えられることを以下の手順で確かめよ。
(a) \(\theta = 0\) のとき \(|+\rangle_{\hat{n}} = |+\rangle\) となること、\(\theta = \pi\) のとき \(|+\rangle_{\hat{n}} = e^{i\phi}|-\rangle\)(全体位相を除いて \(|-\rangle\))となることを確認せよ。
(b) \(\theta = \pi/2,\;\phi = 0\) のとき式 (5.11) の \(|+\rangle_x\) が再現されることを確認せよ。
(c) \(\theta = \pi/2,\;\phi = \pi/2\) のとき式 (5.13) の \(|+\rangle_y\) が再現されることを確認せよ。
(d) この状態が規格化されていること(\({}_{\hat{n}}\langle+|+\rangle_{\hat{n}} = 1\))を示せ。
(e) この状態を \(z\) 方向で測定したとき、\(S_z = +\hbar/2\) を得る確率が \(\cos^2(\theta/2)\) であることを示し、\(\theta\) の幾何学的意味を議論せよ。
与えられた固有状態:
(a) \(\theta = 0\) と \(\theta = \pi\) の場合:
\(\theta = 0\) のとき:
\(\hat{\mathbf{n}}\) が \(z\) 軸方向(北極)を向くとき、\(S_{\hat{n}} = S_z\) の上向き固有状態 \(|+\rangle\) が再現される。
\(\theta = \pi\) のとき:
全体位相 \(e^{i\phi}\) を除けば \(|-\rangle\) に等しい。\(\hat{\mathbf{n}}\) が \(-z\) 方向(南極)を向くとき、\(S_{\hat{n}} = -S_z\) の上向き固有状態は \(S_z\) の下向き固有状態 \(|-\rangle\) に対応する。✓
(b) \(\theta = \pi/2\), \(\phi = 0\) のとき:
これは式 (5.11) の \(|+\rangle_x\) に一致する。\(\hat{\mathbf{n}} = (\sin(\pi/2)\cos 0, \sin(\pi/2)\sin 0, \cos(\pi/2)) = (1, 0, 0) = \hat{\mathbf{x}}\) なので整合する。✓
(c) \(\theta = \pi/2\), \(\phi = \pi/2\) のとき:
これは式 (5.13) の \(|+\rangle_y\) に一致する。\(\hat{\mathbf{n}} = (\sin(\pi/2)\cos(\pi/2), \sin(\pi/2)\sin(\pi/2), \cos(\pi/2)) = (0, 1, 0) = \hat{\mathbf{y}}\) なので整合する。✓
(d) 規格化の証明:
正規直交性 \(\langle+|+\rangle = \langle-|-\rangle = 1\), \(\langle+|-\rangle = \langle-|+\rangle = 0\) を用いて:
(e) \(S_z = +\hbar/2\) を得る確率と \(\theta\) の幾何学的意味:
\(S_z = +\hbar/2\) を得る確率は:
\(\theta\) の幾何学的意味の議論:
角度 \(\theta\) は \(\hat{\mathbf{n}}\) 方向と \(z\) 軸のなす角(極角)である。
- \(\theta = 0\)(\(\hat{\mathbf{n}}\) が \(z\) 軸と同じ方向)のとき:\(P = \cos^2 0 = 1\)。確実に \(S_z = +\hbar/2\) を得る。
- \(\theta = \pi/2\)(\(\hat{\mathbf{n}}\) が \(z\) 軸と直交)のとき:\(P = \cos^2(\pi/4) = 1/2\)。等確率。
- \(\theta = \pi\)(\(\hat{\mathbf{n}}\) が \(-z\) 方向)のとき:\(P = \cos^2(\pi/2) = 0\)。\(S_z = +\hbar/2\) は決して得られない。
この結果は Bloch 球の描像と直結する。Bloch 球上で \(|+\rangle\) は北極(\(\theta = 0\))に、\(|-\rangle\) は南極(\(\theta = \pi\))に対応する。状態 \(|+\rangle_{\hat{n}}\) は極角 \(\theta\)、方位角 \(\phi\) の点に対応する。2 つの状態間の「距離」は Bloch 球上の角度 \(\theta\) で特徴づけられ、確率は \(\cos^2(\theta/2)\) という「半角公式」で与えられる。
注目すべきは、Bloch 球上で直径の反対側(角度 \(\theta = \pi\))にある状態が直交状態に対応し、同じ点(角度 \(\theta = 0\))が同一状態に対応するという点である。物理的な 3 次元空間の角度 \(\theta\) が、状態空間では \(\theta/2\) として現れる——これはスピン 1/2 が \(2\pi\) 回転で符号を変え、\(4\pi\) 回転で元に戻るという性質と深く関連している。
検算: \(S_z = -\hbar/2\) を得る確率は \(|\langle-|+\rangle_{\hat{n}}|^2 = |e^{i\phi}\sin(\theta/2)|^2 = \sin^2(\theta/2)\)。合計 \(\cos^2(\theta/2) + \sin^2(\theta/2) = 1\) ✓
A-2. 「どの経路を通ったか」と干渉の消失¶
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問題:
以下の思考実験を考える。
設定: \(z\) 方向の Stern-Gerlach 装置で銀原子ビームを \(|+\rangle\) と \(|-\rangle\) に分離した後、2 つのビームを遮断せずに再び合流させ、その後 \(x\) 方向の Stern-Gerlach 装置で測定する。
(a) 2 つのビームを完全に合流させ、どちらの経路を通ったか区別できない場合を考える。初期状態が \(|+\rangle_x\) であったとき、最終的に \(S_x = +\hbar/2\) を得る確率を、第 4 章の「振幅を足してから絶対値の 2 乗を取る」ルールを用いて計算せよ。
(b) 今度は、\(|+\rangle\) の経路にだけ目印をつけて「どちらの経路を通ったか区別できる」状況にしたとする。この場合は「確率を足す」ルールが適用される。\(S_x = +\hbar/2\) を得る確率を計算し、(a) の結果と比較せよ。
(c) (a) と (b) の結果の違いを「干渉項」を明示して説明し、「経路情報の取得が干渉を破壊する」ことについて、第 4 章の確率振幅のルールの観点から論じよ。
設定の整理: 初期状態 \(|+\rangle_x\) の粒子が \(z\) 方向の Stern-Gerlach 装置で \(|+\rangle\) と \(|-\rangle\) に分離された後、合流させて \(x\) 方向で測定する。
(a) 経路が区別できない場合:
解法の方針: 中間状態が区別できないので、第 4 章のルールに従い「振幅を足してから絶対値の 2 乗を取る」。
計算の詳細:
初期状態 \(|+\rangle_x\) を \(z\) 基底で展開すると(式 (5.11) より):
最終的に \(S_x = +\hbar/2\)(状態 \(|+\rangle_x\))を得る振幅は、中間状態 \(|j\rangle\)(\(j = +, -\))を経由する振幅の和:
これは完全性関係 \(\sum_{j=\pm}|j\rangle\langle j| = \mathbf{1}\) を用いると:
念のため各項を明示的に計算する:
確率:
(b) 経路が区別できる場合:
解法の方針: 経路が区別可能なので、第 4 章のルールに従い「確率を足す」。
計算の詳細:
各経路の確率を個別に計算して足す:
比較: (a) では \(P_a = 1\)、(b) では \(P_b = 1/2\)。
(c) 干渉項の分析と議論:
干渉項の明示:
(a) の確率を展開する。振幅 \(A = A_+ + A_-\) として(\(A_j = {}_x\langle+|j\rangle\langle j|+\rangle_x\)):
ここで:
干渉項:
したがって:
一方、(b) の確率は:
両者の差:
この \(\frac{1}{2}\) が干渉項(クロスターム)である。
議論:
この結果は 第 4 章の確率振幅のルールの核心を鮮やかに示している。
-
経路が区別できない場合 (a): 粒子がどちらの経路(\(|+\rangle\) または \(|-\rangle\))を通ったか原理的に知ることができないとき、2 つの経路の確率振幅がコヒーレントに重ね合わされる。干渉項 \(2\,\text{Re}(A_+^* A_-)\) が生き残り、この場合は建設的干渉(強め合い)が起きて確率が 1 になる。これは完全性関係 \(\sum_j |j\rangle\langle j| = \mathbf{1}\) の直接的な帰結であり、2 つのビームを完全に合流させれば元の状態 \(|+\rangle_x\) が復元されることを意味する。
-
経路が区別できる場合 (b): 目印をつけることで「どちらの経路を通ったか」の情報が得られると、2 つの経路は区別可能な排反事象となり、確率振幅ではなく確率を足すルールが適用される。干渉項は消失し、確率は \(1/2\) に減少する。
-
物理的意味: 経路情報の取得は干渉を破壊する。これは二重スリット実験で「どちらのスリットを通ったか」を観測すると干渉縞が消えるのと本質的に同じ現象である。量子力学では、情報を得ること自体が系の状態を変える。目印をつける行為は、スピンの自由度と目印の自由度をエンタングル(量子もつれ)させることに相当し、スピンの自由度だけを見たときのコヒーレンス(位相の整合性)が失われる。
検算: (a) で \(S_x = -\hbar/2\) を得る確率も同様に計算すると、振幅は \({}_x\langle-|\mathbf{1}|+\rangle_x = {}_x\langle-|+\rangle_x = 0\) なので確率は 0。\(P(S_x = +\hbar/2) + P(S_x = -\hbar/2) = 1 + 0 = 1\) ✓。(b) では \(S_x = -\hbar/2\) の確率は同様の計算で \(1/2\) となり、\(1/2 + 1/2 = 1\) ✓。
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