第 4 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 複素数の絶対値と複素共役
- B-2. 複素数の掛け算と位相
- B-3. 極形式への変換
- B-4. 極形式での掛け算
- B-5. 干渉項の計算
- B-6. 複素共役と干渉項
- B-7. Dirac 記法と第 3 のルール
- B-8. 振幅の足し算と確率
Medium(標準)
- M-1. 干渉項の一般公式の導出
- M-2. 等振幅・等間隔 \(N\) スリットの干渉パターン
- M-3. 「観測する」と干渉が消える:数式による説明
- M-4. 2 枚の壁を通る振幅の計算
- M-5. 位相差と経路差の関係
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 複素数の絶対値と複素共役¶
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方針: \(z = a + bi\) に対して、\(z^* = a - bi\)、\(|z| = \sqrt{a^2 + b^2}\)、\(z \cdot z^* = |z|^2 = a^2 + b^2\) を適用する。
1. \(z = 1 + i\)
(a) \(z^* = 1 - i\)
(b) \(|z| = \sqrt{1^2 + 1^2} = \sqrt{2}\)
(c) \(z \cdot z^* = 1^2 + 1^2 = 2\)
2. \(z = 3 - 4i\)
(a) \(z^* = 3 + 4i\)
(b) \(|z| = \sqrt{3^2 + 4^2} = \sqrt{9 + 16} = \sqrt{25} = 5\)
(c) \(z \cdot z^* = 9 + 16 = 25\)
3. \(z = -2i\)(\(a = 0\), \(b = -2\))
(a) \(z^* = +2i\)
(b) \(|z| = \sqrt{0^2 + (-2)^2} = 2\)
(c) \(z \cdot z^* = (-2i)(2i) = -4i^2 = 4\)
4. \(z = 5\)(\(a = 5\), \(b = 0\))
(a) \(z^* = 5\)
(b) \(|z| = 5\)
(c) \(z \cdot z^* = 25\)
検算: すべてにおいて \(z \cdot z^* = |z|^2\) が成立していることを確認。✓
B-2. 複素数の掛け算と位相¶
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方針: 普通に展開し、\(i^2 = -1\) を代入する。
1. \((1 + i)(1 - i)\)
2. \((2 + 3i)(1 + 2i)\)
3. \(i \cdot (3 + 4i)\)
4. \((1 + i)^2\)
検算: 問 1 は \(z \cdot z^*\) の形なので結果は \(|z|^2 = 2\)。✓ 問 4 は \(|1+i|^2 = 2\) であり、\(|(1+i)^2| = |2i| = 2 = (\sqrt{2})^2\) で整合。✓
B-3. 極形式への変換¶
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方針: \(r = |z|\)、\(\theta = \arg(z)\) を求める。象限に注意して複素平面上の位置を確認する。
1. \(z = 1 + i\)
第 1 象限で \(\tan\theta = 1/1 = 1\) より \(\theta = \pi/4\)。
2. \(z = -\sqrt{3} + i\)
第 2 象限(実部が負、虚部が正)。\(\tan\alpha = 1/\sqrt{3}\) より基準角 \(\alpha = \pi/6\)。よって \(\theta = \pi - \pi/6 = 5\pi/6\)。
3. \(z = -2\)
4. \(z = 3i\)
検算: 各結果を \(r\cos\theta + ir\sin\theta\) に戻して元の \(z\) と一致することを確認。例えば問 2: \(2\cos(5\pi/6) = 2 \cdot (-\sqrt{3}/2) = -\sqrt{3}\)、\(2\sin(5\pi/6) = 2 \cdot (1/2) = 1\)。よって \(z = -\sqrt{3} + i\)。✓
B-4. 極形式での掛け算¶
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方針: 式 (4.8) より、絶対値は掛け算、偏角は足し算。
1. 極形式での積
2. \(a + bi\) の形
検算: 直接計算で確認する。\(z_1 = 2(\cos 30° + i\sin 30°) = 2(\frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{1}{2}i) = \sqrt{3} + i\)。\(z_2 = 3(\cos 60° + i\sin 60°) = 3(\frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i) = \frac{3}{2} + \frac{3\sqrt{3}}{2}i\)。
B-5. 干渉項の計算¶
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方針: 式 (4.14) を適用する。\(|\phi_1| = |\phi_2| = 1/\sqrt{2}\)、位相差 \(\delta = \theta\)。
1. \(|\phi_1 + \phi_2|^2\) を \(\theta\) で表す
2. 各 \(\theta\) での確率
| \(\theta\) | \(\cos\theta\) | \(P\) |
|---|---|---|
| \(0\) | \(1\) | \(\boxed{2}\) |
| \(\pi/2\) | \(0\) | \(\boxed{1}\) |
| \(\pi\) | \(-1\) | \(\boxed{0}\) |
3. 古典的な確率の和
検算: \(\theta = 0\) のとき \(\phi_1 + \phi_2 = \frac{1}{\sqrt{2}} + \frac{1}{\sqrt{2}} = \sqrt{2}\) なので \(P = |\sqrt{2}|^2 = 2\)。✓ \(\theta = \pi\) のとき \(\phi_2 = \frac{1}{\sqrt{2}} e^{i\pi} = -\frac{1}{\sqrt{2}}\) なので \(\phi_1 + \phi_2 = 0\)、\(P = 0\)。✓ 干渉項 \(\cos\theta\) の値によって \(P\) は \(0\) から \(2\) まで変化し、古典値 \(1\) を中心に振動する。
B-6. 複素共役と干渉項¶
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方針: 極形式の性質を利用する。\(\phi_2^* = 3e^{+i\pi/4}\)。
1. \(\phi_1 \phi_2^*\)
\(e^{i\pi/2} = i\) なので
2. 干渉項 \(\phi_1 \phi_2^* + \phi_1^* \phi_2\)
\(\phi_1^* \phi_2 = (\phi_1 \phi_2^*)^* = (6i)^* = -6i\) であるから、
これは実数(\(0\))であり、干渉項が実数であることが確認できる。✓
別の見方:式 (4.13) より、\(\phi_1\) と \(\phi_2\) の位相差は \(\delta = \pi/4 - (-\pi/4) = \pi/2\) なので、
3. 確率 \(P = |\phi_1 + \phi_2|^2\)
検算: 直接計算する。\(\phi_1 = 2e^{i\pi/4} = 2(\frac{\sqrt{2}}{2} + \frac{\sqrt{2}}{2}i) = \sqrt{2} + \sqrt{2}\,i\)。\(\phi_2 = 3e^{-i\pi/4} = 3(\frac{\sqrt{2}}{2} - \frac{\sqrt{2}}{2}i) = \frac{3\sqrt{2}}{2} - \frac{3\sqrt{2}}{2}i\)。
B-7. Dirac 記法と第 3 のルール¶
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方針: 第 3 のルール(掛け算)より \(\phi_k = \langle x | k \rangle \cdot \langle k | s \rangle\)。
\(k = 1\):
\(k = 2\):
\(k = 3\):
検算: 各振幅の絶対値は \(|\phi_k| = \frac{1}{\sqrt{3}} \cdot 1 = \frac{1}{\sqrt{3}}\)。3 つの位相 \(\pi/3, \pi, 5\pi/3\) は \(2\pi\) を 3 等分する角度(\(60°, 180°, 300°\))に対応する。✓
B-8. 振幅の足し算と確率¶
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方針: 各 \(\phi_k\) を \(a + bi\) の形に変換して足し合わせる。
各 Euler 公式の値:
よって
全振幅の計算:
括弧内を整理する:
- 実部:\(\frac{1}{2} + (-1) + \frac{1}{2} = 0\)
- 虚部:\(\frac{\sqrt{3}}{2} + 0 + \left(-\frac{\sqrt{3}}{2}\right) = 0\)
確率:
検算: \(e^{i\pi/3}\), \(e^{i\pi}\), \(e^{i5\pi/3}\) は \(e^{i \cdot 2\pi k/3}\)(\(k = 1, 2, 3\))に等しく、これらは 1 の原始 3 乗根 \(\omega = e^{i2\pi/3}\) を用いると \(\omega, \omega^2, \omega^3 = 1\) ……ではなく、正確には位相が \(\pi/3, \pi, 5\pi/3\) なので \(e^{i\pi/3}(1 + e^{i2\pi/3} + e^{i4\pi/3})\) と因数分解できる。\(1 + e^{i2\pi/3} + e^{i4\pi/3} = 0\)(1 の原始 3 乗根の和)なので \(\phi = 0\)。✓
Medium(標準)¶
M-1. 干渉項の一般公式の導出¶
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1. 展開の証明¶
方針: \(P = \left|\sum_k \phi_k\right|^2\) を \(z \cdot z^*\) の形で展開する。
この二重和を \(j = k\) の項と \(j \neq k\) の項に分ける:
\(\phi_k \phi_k^* = |\phi_k|^2\) であるから、
第 1 項は各経路の確率の和(古典的な寄与)、第 2 項が干渉項である。\(\blacksquare\)
2. 干渉項の個数¶
二重和 \(\sum_{j \neq k}\) において、\(j\) と \(k\) はそれぞれ \(1\) から \(N\) の値を取り、\(j \neq k\) の条件がある。\(N\) 個の中から異なる 2 つを順序付きで選ぶ方法の数は
個である。(\((j,k) = (1,2)\) と \((j,k) = (2,1)\) は別の項として数える。)
補足: \(\phi_j \phi_k^*\) と \(\phi_k \phi_j^*\) は互いに複素共役なので、\(j < k\) のペアでまとめると \(N(N-1)/2\) 個のペアがあり、各ペアが \(\phi_j \phi_k^* + \phi_k \phi_j^* = 2|\phi_j||\phi_k|\cos\delta_{jk}\) という実数の干渉項を与える。
3. ランダム位相で干渉項が消える理由¶
すべての \(|\phi_k| = A\) とし、位相差 \(\delta_{jk}\) がランダムに分布するとする。各干渉項は
であり、その実部は \(A^2 \cos\delta_{jk}\)。\(\delta_{jk}\) が \([0, 2\pi)\) 上で一様にランダムに分布する場合、
したがって、\(N(N-1)\) 個の干渉項の平均的な寄与はゼロとなる。結果として
となり、古典的な確率の足し算に帰着する。これは、マクロな系で位相のコヒーレンスが失われると量子干渉が消え、古典的な振る舞いが回復するメカニズム(デコヒーレンス)の本質的な理由でもある。
検算: \(N = 2\) の場合、干渉項は \(2 \cdot 1 = 2\) 個で、\(\phi_1\phi_2^* + \phi_2\phi_1^* = 2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta\) となり、式 (4.14) と整合する。✓
M-2. 等振幅・等間隔 \(N\) スリットの干渉パターン¶
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1. 振幅 \(\phi_k = Ae^{ik\delta}\) の説明¶
\(k\) 番目のスリット(\(k = 0, 1, \ldots, N-1\))から検出器位置 \(x\) までの経路長は、\(0\) 番目のスリットからの経路長に比べて \(k\Delta r\) だけ長い。de Broglie 関係より、運動量 \(p\) の粒子が距離 \(\Delta r\) だけ余分に進むと位相が \(p\Delta r/\hbar = \delta\) だけ増える。したがって \(k\) 番目のスリットを通る振幅は \(0\) 番目に対して位相 \(k\delta\) だけ進んでおり、
と書ける。(共通の位相因子は省略。)
2. 等比級数による閉じた形¶
等比級数の公式 \(\sum_{k=0}^{N-1} r^k = \frac{1 - r^N}{1 - r}\)(\(r \neq 1\))を \(r = e^{i\delta}\) に適用して、
3. 確率 \(P = |\phi|^2\) の導出¶
まず、一般に次の恒等式が成り立つことを示す:
これを用いて、
4. \(N = 2\) の場合の確認¶
三角関数の倍角公式 \(\sin\delta = 2\sin(\delta/2)\cos(\delta/2)\) を用いると、
一方、半角公式 \(\cos^2(\delta/2) = \frac{1 + \cos\delta}{2}\) より、
式 (4.14) で \(|\phi_1| = |\phi_2| = A\) とすると、
両者は一致する。 ✓
検算: \(\delta = 0\)(中央の明線)のとき、\(P = A^2 \cdot N^2\)(ロピタルの定理または直接代入)。\(N = 2\) なら \(P = 4A^2\)。上の式で \(\delta = 0\) とすると \(P = 4A^2 \cdot 1 = 4A^2\)。✓
M-3. 「観測する」と干渉が消える:数式による説明¶
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1. 観測しない場合¶
どちらのスリットを通ったか観測しない場合、スリット 1 経由とスリット 2 経由の 2 つの経路は原理的に区別できない。第 2 のルールの適用条件(「区別できない経路の振幅を足す」)が満たされるので、
第 1 のルールより確率は
干渉項 \(2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta\) が存在し、\(\delta\) が検出器位置 \(x\) に依存するため、干渉縞が現れる。
2. 観測した場合¶
どちらのスリットを通ったかを観測すると、2 つの経路は区別可能になる。第 2 のルールの適用条件(「区別できない」)が満たされなくなるため、振幅を足すのではなく、確率を足す(古典的な確率の加法則に戻る)。
具体的には、「スリット 1 を通った」という事象と「スリット 2 を通った」という事象は排他的かつ区別可能な事象であり、
干渉項 \(2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta\) は現れない。これは、観測によって「どちらの経路を通ったか」という情報が環境(観測装置)に記録されることで、2 つの経路が原理的に区別可能になったためである。
3. 干渉縞が消えるとは¶
\(|\phi_1| = |\phi_2| = A\) の場合:
-
観測なし: \(P(x) = 2A^2(1 + \cos\delta(x))\)。\(\delta(x)\) は検出器位置 \(x\) の関数であるため、\(P(x)\) は \(x\) に対して \(\cos\) 関数的に振動する。これが干渉縞である。明線(\(\delta = 2n\pi\))では \(P = 4A^2\)、暗線(\(\delta = (2n+1)\pi\))では \(P = 0\)。
-
観測あり: \(P_{\text{obs}}(x) = 2A^2\)。\(x\) に依存しない一様な分布となる。
「干渉縞が消える」とは、検出器位置 \(x\) の関数としての確率分布から \(\cos\delta(x)\) の振動成分が消失し、一様な分布に変わることを意味する。干渉項 \(2A^2\cos\delta(x)\) がゼロになるため、明暗のコントラストが完全に失われる。
検算: \(P_{\text{obs}} = 2A^2\) は \(P(x)\) の \(x\) についての平均値 \(\langle 2A^2(1 + \cos\delta) \rangle_x = 2A^2\)(\(\cos\delta\) の平均は 0)と一致する。観測によって干渉縞が消えても、全体の平均的な到達確率は変わらない。✓
M-4. 2 枚の壁を通る振幅の計算¶
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1. 経路の列挙¶
第 1 の壁のスリット:\(A_1, A_2\)(2 通り) 第 2 の壁のスリット:\(B_1, B_2, B_3\)(3 通り)
すべての可能な経路は:
具体的には:\(A_1B_1\), \(A_1B_2\), \(A_1B_3\), \(A_2B_1\), \(A_2B_2\), \(A_2B_3\)。
2. 各経路の振幅(第 3 のルール)¶
経路「\(s \to A_j \to B_k \to x\)」の振幅は、連続した 3 段階の振幅の積:
3. 全振幅(第 2 のルール)¶
どのスリットを通ったかは観測しないので、6 つの経路はすべて区別できない。振幅を足す:
4. すべての振幅が \(c\) の場合¶
各経路の振幅は \(\phi_{jk} = c \cdot c \cdot c = c^3\)。
6 本の経路すべてが同じ振幅 \(c^3\) を持つので、
検算: 次元的に、振幅が 3 段階の積なので \(c^3\) のオーダー、経路数 6 を掛けて \(6c^3\)、確率はその 2 乗で \(36c^6\)。もし壁が 1 枚(スリット \(n\) 個)なら \(P = n^2 c^4\) となるはずで、\(n = 6\), 2 段階なら \(36c^4\)。今回は 3 段階なので \(c^6\) が正しい。✓
M-5. 位相差と経路差の関係¶
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1. 経路差 \(\Delta r \approx dx/L\) の導出¶
スリット 1 とスリット 2 の位置を、スクリーンに垂直な中心線に対して \(\pm d/2\) とする。検出器位置 \(x\) への距離は:
\(L \gg d\) かつ \(L \gg x\) の近似で、\(r_1 - r_2\) を計算する。
(\(r_1 + r_2 \approx 2L\) は \(L \gg d, x\) の近似。)
よって
符号の取り方は座標の定義に依存する。経路差の大きさとして
別の導出(幾何学的): \(L \gg d\) のとき、2 本の経路はほぼ平行で、角度 \(\theta \approx x/L\) をなす。経路差は \(\Delta r = d\sin\theta \approx d\theta \approx dx/L\)。✓
2. 位相差¶
式 (4.22) の形式(\(\delta = p \Delta r / \hbar\))を用いて、
3. 明線の位置¶
強め合いの条件 \(\delta = 2n\pi\)(\(n\) は整数)より、
4. 隣り合う明線の間隔¶
de Broglie 関係 \(p = h/\lambda = 2\pi\hbar/\lambda\) を代入すると、
検算: 次元解析:\([\lambda L / d] = \text{m} \cdot \text{m} / \text{m} = \text{m}\)。✓ 物理的に、波長 \(\lambda\) が大きいほど、またスクリーン距離 \(L\) が大きいほど縞間隔は広がり、スリット間隔 \(d\) が大きいほど縞間隔は狭まる。これは光の干渉実験(Young の実験)の結果と完全に一致する。✓
Advanced(発展)¶
A-1. Mach–Zehnder (マッハ・ツェンダー) 干渉計の量子力学的解析¶
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設定の整理¶
干渉計の構成要素と振幅の割り当て:
- BS1: 反射 → \(\frac{i}{\sqrt{2}}\)、透過 → \(\frac{1}{\sqrt{2}}\)
- ミラー: 反射 → \(i\)
- 位相板(経路 \(A\) のみ): \(e^{i\varphi}\)
- BS2: 反射 → \(\frac{i}{\sqrt{2}}\)、透過 → \(\frac{1}{\sqrt{2}}\)
典型的な配置として、以下を採用する: - 経路 \(A\): BS1 で反射 → 位相板 → ミラー \(M_A\) で反射 → BS2 で透過して \(D_1\) へ(または反射して \(D_2\) へ) - 経路 \(B\): BS1 で透過 → ミラー \(M_B\) で反射 → BS2 で反射して \(D_1\) へ(または透過して \(D_2\) へ)
1. \(D_1\) に至る 2 つの経路の振幅¶
経路 \(A\) 経由で \(D_1\) へ: BS1 反射 → 位相板 → \(M_A\) 反射 → BS2 透過
経路 \(B\) 経由で \(D_1\) へ: BS1 透過 → \(M_B\) 反射 → BS2 反射
2. \(D_1\) での検出確率¶
第 2 のルールより全振幅は:
確率:
\(|e^{i\varphi} + 1|^2\) を計算する:
3. \(D_2\) での検出確率¶
経路 \(A\) 経由で \(D_2\) へ: BS1 反射 → 位相板 → \(M_A\) 反射 → BS2 反射
経路 \(B\) 経由で \(D_2\) へ: BS1 透過 → \(M_B\) 反射 → BS2 透過
全振幅:
確率:
確率の保存の確認:
4. 特殊な場合¶
\(\varphi = 0\) のとき:
光子は必ず \(D_1\) で検出される。2 つの経路の振幅が \(D_1\) で完全に強め合い、\(D_2\) で完全に打ち消し合う。これは完全な建設的干渉(\(D_1\))と完全な破壊的干渉(\(D_2\))に対応する。
\(\varphi = \pi\) のとき:
光子は必ず \(D_2\) で検出される。位相板によって経路 \(A\) に \(\pi\) の位相シフトが加わることで、干渉の条件が反転し、\(D_1\) で完全な破壊的干渉、\(D_2\) で完全な建設的干渉が起こる。
物理的意味: 位相板の設定 \(\varphi\) を連続的に変えることで、光子の出力先を \(D_1\) と \(D_2\) の間で連続的に制御できる。これは単一光子レベルでの干渉であり、光子が「両方の経路を同時に通っている」かのように振る舞うことの直接的な証拠である。
5. 経路検出装置を挿入した場合¶
経路 \(A\) に「どちらの経路を通ったか」を検出する装置を挿入すると、光子がどちらの経路を通ったかの情報が原理的に得られるようになる。これにより、2 つの経路は区別可能になる。
第 2 のルールの適用条件は「経路が原理的に区別できない」ことである。経路が区別可能になった場合、振幅を足すのではなく、確率を足す:
干渉項が消失し、\(P_1 = P_2 = 1/2\) となって位相 \(\varphi\) への依存性が完全に失われる。光子は \(D_1\) と \(D_2\) に等確率で到達し、位相板の設定を変えても検出確率は変化しない。干渉計としての機能が完全に破壊される。
検算: \(P_1^{\text{obs}} + P_2^{\text{obs}} = 1/2 + 1/2 = 1\)。✓ また、\(|\phi_A^{(1)}|^2 = |{-\frac{1}{2}e^{i\varphi}}|^2 = 1/4\)、\(|\phi_B^{(1)}|^2 = |{-\frac{1}{2}}|^2 = 1/4\) で確かに \(\varphi\) に依存しない。✓
A-2. 3 状態系における干渉と「量子消しゴム」の原理¶
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Part I:完全な干渉¶
1. 全振幅と確率の計算¶
\(\omega = e^{i2\pi/3}\) とおくと、\(\omega\) は 1 の原始 3 乗根であり、
(これは \(z^3 - 1 = (z-1)(z^2 + z + 1) = 0\) の第 2 因子 \(z^2 + z + 1 = 0\) の根の和に対応する。)
よって
2. 1 の原始 3 乗根との関係¶
\(e^{i2\pi/3}\) は 1 の原始 3 乗根 \(\omega\) であり、\(1, \omega, \omega^2\) は複素平面上で単位円に内接する正三角形の頂点に位置する。これら 3 つのベクトルを足すと、対称性から完全に打ち消し合ってゼロになる。
物理的には、3 つのスリットからの振幅が等振幅かつ位相が \(120°\) ずつ等間隔にずれているため、検出器位置(この特定の \(x\))では 3 つの波が完全に破壊的干渉を起こし、粒子が到達する確率がゼロになる。これは D8 の結果とも一致する。
Part II:部分的な経路情報¶
3. 確率の計算方法¶
スリット 1 にマーカーを付けることで、「スリット 1 を通った」か「スリット 1 を通らなかった(スリット 2 または 3 を通った)」かが区別可能になる。
Feynman のルールに基づく計算方法:
- スリット 1 は他のスリットと区別可能なので、スリット 1 の振幅は独立に確率に変換する。
- スリット 2 とスリット 3 は互いに区別不可能なので、これらの振幅は足す(第 2 のルール)。
- 最終的に、区別可能な 2 つのグループの確率を足す(古典的な確率の加法則)。
具体的に計算する:
\(1 + \omega + \omega^2 = 0\) より \(\omega + \omega^2 = -1\) なので、
4. Part I との比較¶
| 状況 | 確率 |
|---|---|
| Part I(経路情報なし、完全な干渉) | \(P = 0\) |
| Part II(部分的な経路情報) | \(P = 2A^2\) |
| 完全な経路情報(すべて区別可能) | \(P = 3A^2\) |
Part I では完全な破壊的干渉により \(P = 0\) であった。マーカーによって部分的な経路情報を得ると、3 つの振幅の完全な打ち消し合いが崩れ、\(P = 2A^2 > 0\) となる。
「部分的な経路情報を得ることで干渉が部分的に回復する」という表現は、文脈に注意が必要である。ここで起きているのは:
- Part I の完全な破壊的干渉(\(P = 0\))が、マーカーの導入によって部分的に壊れた。
- スリット 2 と 3 の間にはまだ干渉が残っている(\(|\phi_2 + \phi_3|^2 = A^2 \neq |\phi_2|^2 + |\phi_3|^2 = 2A^2\))。実際、\(\phi_2 + \phi_3 = -A\) なので \(|\phi_2 + \phi_3|^2 = A^2\) であり、これは \(|\phi_2|^2 + |\phi_3|^2 = 2A^2\) より小さい。スリット 2 と 3 の間では部分的な破壊的干渉が残っている。
- 全体としては、完全な打ち消し(\(P = 0\))から \(P = 2A^2\) へと確率が増加した。これは「干渉の破壊」によって確率が増えたのであり、「干渉の回復」とは逆の現象である。
したがって、この特定の検出器位置では「部分的な経路情報を得ることで干渉が部分的に破壊され、確率がゼロから非ゼロに変化した」というのが正確な記述である。
Part III:量子消しゴム¶
5. マーカー情報の消去¶
Part II でマーカーを設置したが、その情報を読み取らない(消去する)場合を考える。
第 2 のルールの適用条件に立ち返ると、振幅を足すのは「経路が原理的に区別できない」場合である。マーカー情報を消去するとは、どのスリットを通ったかの情報が原理的に取得不可能な状態に戻すことを意味する。
マーカー情報を完全に消去すれば、3 つの経路は再び区別不可能になり、第 2 のルールが復活する:
元の完全な干渉パターン(Part I の結果)が回復する。
これが「量子消しゴム (quantum eraser)」の基本原理である。 量子消しゴムとは、一度取得した経路情報(which-path information)を事後的に消去することで、失われた干渉パターンを回復させる操作のことである。重要な点は:
- 経路情報の有無が干渉を決定する: 干渉が起こるかどうかは、経路情報が原理的に利用可能かどうかで決まる。
- 情報の消去は物理的操作である: 単に「見ない」だけでは不十分で、マーカーの量子状態を適切に操作して経路情報を原理的に復元不可能にする必要がある。
- 事後選択による回復: 実際の量子消しゴム実験では、マーカー(補助系)の測定結果に基づいてデータを事後選択(post-selection)することで、干渉縞を回復させる。全データを合計すると干渉縞は見えないが、特定の測定結果に対応するサブアンサンブルでは干渉縞が現れる。
検算: Part I(情報なし)→ \(P = 0\)、Part II(部分的情報)→ \(P = 2A^2\)、完全な情報 → \(P = 3A^2\)。情報が増えるほど干渉が壊れ、確率が古典値 \(3A^2\) に近づく。情報を消去すると干渉が回復し \(P = 0\) に戻る。この一連の結果は物理的に整合している。✓
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