第 2 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 添字の上げ下げ
- B-2. 4 元ベクトルの内積
- B-3. Einstein の縮約規則の展開
- B-4. Lorentz ブーストの適用
- B-5. ラピディティの計算
- B-6. 添字の縮約の練習
- B-7. ブースト行列の双曲線関数表示
- B-8. 自然単位系での次元解析
Medium(標準)
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 添字の上げ下げ¶
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解法の方針¶
\(V_\mu = \eta_{\mu\nu} V^\nu\) を各成分について計算する。\(\eta_{\mu\nu} = \text{diag}(+1, -1, -1, -1)\) は対角行列なので、各成分は単純に符号を掛けるだけ。
計算¶
最終回答¶
検算¶
添字を上げ直して元に戻るか確認する。\(V^\mu = \eta^{\mu\nu} V_\nu\) より \(V^0 = (+1)(5) = 5\), \(V^1 = (-1)(-1) = 1\), \(V^2 = (-1)(2) = -2\), \(V^3 = (-1)(-3) = 3\)。元の \(V^\mu = (5, 1, -2, 3)\) と一致する。✓
B-2. 4 元ベクトルの内積¶
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解法の方針¶
Lorentz 不変な内積を \(A^\mu B_\mu = \eta_{\mu\nu} A^\mu B^\nu = A^0 B^0 - A^1 B^1 - A^2 B^2 - A^3 B^3\) で計算する。
計算¶
最終回答¶
検算¶
別の方法として、まず \(B_\mu\) を求めてから縮約する。\(B_\mu = (2, -3, -1, 0)\)。
一致する。✓
B-3. Einstein の縮約規則の展開¶
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解法の方針¶
\(\eta_{\mu\nu}\) は対角行列なので \(\mu \neq \nu\) の項はすべてゼロ。\(\mu = \nu\) の 4 つの項のみ残る。
計算¶
\(\eta_{\mu\nu} \neq 0\) は \(\mu = \nu\) のときのみなので:
最終回答¶
検算¶
これは D2 で使った内積の公式そのものであり、\(A^\mu B_\mu\) と一致する。✓
B-4. Lorentz ブーストの適用¶
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解法の方針¶
\(v = 3/5\) に対して Lorentz 因子 \(\gamma\) を計算し、変換式 \(t' = \gamma(t - vx)\), \(x' = \gamma(x - vt)\) に代入する。
計算¶
\((t, x) = (5, 3)\) を代入:
最終回答¶
検算¶
不変間隔が保存されるか確認する。
- 変換前:\(t^2 - x^2 = 25 - 9 = 16\)
- 変換後:\(t'^2 - x'^2 = 16 - 0 = 16\)
一致する。✓
物理的解釈:\(x' = 0\) ということは、元の時空点 \((5, 3)\) はブースト先の慣性系の原点上にある。実際 \(x = vt = (3/5) \times 5 = 3\) なので、ブースト先の原点の世界線上にある点であることが確認できる。
B-5. ラピディティの計算¶
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解法の方針¶
\(v = \tanh\beta\) から \(\beta = \text{arctanh}(v) = \frac{1}{2}\ln\frac{1+v}{1-v}\) を計算する。
計算¶
\(v = 4/5\) を代入:
\(\cosh\beta\) と \(\sinh\beta\) の確認:
最終回答¶
検算¶
\(\cosh^2\beta - \sinh^2\beta = \left(\frac{5}{3}\right)^2 - \left(\frac{4}{3}\right)^2 = \frac{25}{9} - \frac{16}{9} = \frac{9}{9} = 1\) ✓
\(\tanh\beta = \frac{\sinh\beta}{\cosh\beta} = \frac{4/3}{5/3} = \frac{4}{5} = v\) ✓
\(e^\beta = e^{\ln 3} = 3\) より \(\cosh\beta = \frac{3 + 1/3}{2} = \frac{10/3}{2} = \frac{5}{3}\) ✓
B-6. 添字の縮約の練習¶
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解法の方針¶
Kronecker のデルタは「添字を置き換える」役割を果たす。計量テンソルの積は逆行列の関係を使う。
計算¶
第一式:
\(\nu\) について和を取ると、\(\delta^\mu{}_\nu\) は \(\nu = \mu\) のときのみ 1 なので、和の中で \(\nu = \mu\) の項だけが生き残り、結果は \(A^\mu\) となる。
第二式:
\(\eta_{\mu\nu}\) と \(\eta^{\nu\rho}\) は互いに逆行列の関係にある(行列の積 \(\eta \cdot \eta^{-1} = I\))。Minkowski 計量の場合 \(\eta^{-1} = \eta\) なので、具体的に確認すると:
最終回答¶
検算¶
第二式を具体的な成分で確認する。\(\mu = 1\), \(\rho = 1\) の場合:
\(\mu = 0\), \(\rho = 1\) の場合:
✓
B-7. ブースト行列の双曲線関数表示¶
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解法の方針¶
\(\beta = \ln 2\) から \(\cosh\beta\) と \(\sinh\beta\) を計算し、行列とベクトルの積を実行する。
計算¶
\(x^\mu = (3, 1, 0, 0)\) に対して:
最終回答¶
検算¶
不変間隔の保存:
- 変換前:\(\eta_{\mu\nu} x^\mu x^\nu = 3^2 - 1^2 - 0 - 0 = 9 - 1 = 8\)
- 変換後:\(\eta_{\mu\nu} x'^\mu x'^\nu = 3^2 - (-1)^2 - 0 - 0 = 9 - 1 = 8\)
一致する。✓
B-8. 自然単位系での次元解析¶
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解法の方針¶
\(c = 1\) より \([\text{長さ}] = [\text{時間}]\)。\(\hbar = 1\) より \([\text{エネルギー}] \cdot [\text{時間}] = 1\)(無次元)。したがって \([\text{時間}] = [\text{エネルギー}]^{-1} = [\text{mass}]^{-1}\)。
計算¶
\(c = 1\) の帰結:\([L] = [T]\)(長さと時間が同じ次元)
\(\hbar = 1\) の帰結:\([E][T] = 1\) なので \([T] = [E]^{-1}\)
\(E = mc^2 = m\)(自然単位系)より \([E] = [M]\)
これらを組み合わせる:
(a) 長さ: \([L] = [T] = [E]^{-1} = [M]^{-1}\)
(b) 時間: \([T] = [E]^{-1} = [M]^{-1}\)
(c) エネルギー: \([E] = [M]\)
(d) 運動量: \(E^2 = p^2 + m^2\) より \([p] = [E] = [M]\)
(e) 力: 力 = エネルギー / 長さ = \([M] / [M]^{-1} = [M]^2\)
最終回答¶
| 物理量 | 自然単位系での次元 |
|---|---|
| (a) 長さ | \([\text{mass}]^{-1}\) |
| (b) 時間 | \([\text{mass}]^{-1}\) |
| (c) エネルギー | \([\text{mass}]^{+1}\) |
| (d) 運動量 | \([\text{mass}]^{+1}\) |
| (e) 力 | \([\text{mass}]^{+2}\) |
検算¶
SI 単位系で確認する。\([\hbar] = \text{J} \cdot \text{s} = \text{kg} \cdot \text{m}^2 \cdot \text{s}^{-1}\), \([c] = \text{m} \cdot \text{s}^{-1}\)。
長さ:\(\hbar c / E\) は長さの次元を持つ。\([\hbar c / E] = \frac{\text{kg} \cdot \text{m}^2 \cdot \text{s}^{-1} \cdot \text{m} \cdot \text{s}^{-1}}{\text{kg} \cdot \text{m}^2 \cdot \text{s}^{-2}} = \text{m}\)。自然単位系では \(\hbar = c = 1\) なので \([L] = [E]^{-1} = [M]^{-1}\)。✓
力:\([F] = [E]/[L] = [M]/[M]^{-1} = [M]^2\)。SI では \(\text{N} = \text{kg} \cdot \text{m} \cdot \text{s}^{-2}\)。\(\hbar = c = 1\) で \([M]^2\) に対応する SI の組み合わせは \(m^2 c^3/\hbar\) で、次元は \(\text{kg}^2 \cdot \text{m}^3 \cdot \text{s}^{-3} / (\text{kg} \cdot \text{m}^2 \cdot \text{s}^{-1}) = \text{kg} \cdot \text{m} \cdot \text{s}^{-2} = \text{N}\)。✓
Medium(標準)¶
M-1. Lorentz 変換行列の条件の導出¶
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解法の方針¶
不変間隔の保存条件 \(\eta_{\mu\nu} x'^\mu x'^\nu = \eta_{\alpha\beta} x^\alpha x^\beta\) に Lorentz 変換 \(x'^\mu = \Lambda^\mu{}_\alpha x^\alpha\) を代入し、任意の \(x^\alpha\) に対して成り立つ条件を導く。
計算の詳細¶
ステップ 1:不変間隔の保存
変換後の不変間隔:
これが変換前の不変間隔 \(\eta_{\alpha\beta} x^\alpha x^\beta\) と等しい:
これが任意の \(x^\alpha\) に対して成り立つためには、\(x^\alpha x^\beta\) の係数が等しくなければならない:
ステップ 2:行列表示
式 \((*)\) を行列の言葉で書き直す。\((\Lambda^T)_{\alpha}{}^{\mu} = \Lambda^\mu{}_\alpha\) であることに注意すると、左辺は行列の積 \(\Lambda^T \eta \Lambda\) の \((\alpha, \beta)\) 成分に対応する。したがって:
ステップ 3:\(\det\Lambda = \pm 1\) の導出
両辺の行列式を取る:
左辺を展開する:
\(\det(\Lambda^T) = \det(\Lambda)\) なので:
\(\det(\eta) = -1 \neq 0\) で両辺を割ると:
最終回答¶
Lorentz 変換の条件は \(\eta_{\mu\nu} \Lambda^\mu{}_\alpha \Lambda^\nu{}_\beta = \eta_{\alpha\beta}\)(行列表示で \(\Lambda^T \eta \Lambda = \eta\))であり、これから \(\det\Lambda = \pm 1\) が導かれる。
検算¶
\(x\) 方向ブーストの行列で確認する:
(\(y, z\) 成分は省略して \(2 \times 2\) で考える)
✓
\(\Lambda^T \eta \Lambda\) を計算(\(2 \times 2\) 部分):
✓
M-2. ラピディティの加法性¶
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解法の方針¶
ラピディティ \(\beta_1\) と \(\beta_2\) のブースト行列の積を計算し、双曲線関数の加法定理を用いて合成ブーストのラピディティが \(\beta_1 + \beta_2\) であることを示す。
計算の詳細¶
ステップ 1:ブースト行列の積
\(x\) 方向のブースト行列(\(y, z\) 成分は不変なので \(2 \times 2\) 部分のみ記述):
2 つのブーストの合成:
\((0,0)\) 成分:
\((0,1)\) 成分:
\((1,0)\) 成分:
\((1,1)\) 成分:
したがって:
ラピディティの加法性が示された。
ステップ 2:速度の合成則の導出
\(v_1 = \tanh\beta_1\), \(v_2 = \tanh\beta_2\) とする。合成変換の速度は:
\(\tanh\) の加法定理を適用する:
最終回答¶
ブースト行列の積により \(\Lambda(\beta_2)\Lambda(\beta_1) = \Lambda(\beta_1 + \beta_2)\) が示され、ラピディティは加法的である。これから相対論的速度の合成則 \(v = \frac{v_1 + v_2}{1 + v_1 v_2}\) が導かれる。
検算¶
特殊ケース 1: \(v_1 = v_2 = 0\) のとき \(v = 0\)。✓
特殊ケース 2: \(v_2 = 1\)(光速)のとき \(v = \frac{v_1 + 1}{1 + v_1} = 1\)。光速に何を足しても光速。✓
特殊ケース 3: \(v_1, v_2 \ll 1\) のとき \(v \approx v_1 + v_2\)(Galilei 変換の極限)。✓
特殊ケース 4: \(v_1 = v_2 = 3/5\) のとき \(v = \frac{6/5}{1 + 9/25} = \frac{6/5}{34/25} = \frac{6}{5} \cdot \frac{25}{34} = \frac{150}{170} = \frac{15}{17} < 1\)。光速を超えない。✓
M-3. 4 元運動量と質量殻条件¶
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(a) 質量殻条件の導出¶
解法の方針: \(p^\mu p_\mu = \eta_{\mu\nu} p^\mu p^\nu\) を計算し、\(m^2\) と等置する。
計算:
質量殻条件 \(p^\mu p_\mu = m^2\) は:
これは自然単位系 (\(c = 1\)) での相対論的エネルギー-運動量関係式である。
(b) 質量ゼロの粒子¶
\(m = 0\) を代入すると:
質量ゼロの粒子(光子など)ではエネルギーと運動量の大きさが等しい。4 元運動量は \(p^\mu p_\mu = 0\) を満たし、光円錐上にある(null vector, 光的ベクトル)。
(c) ブーストによる \(E = \gamma m\), \(p_x = \gamma m v\) の導出¶
計算:
4 元運動量は 4 元ベクトルなので、座標と同じ Lorentz 変換則に従う:
静止系では \(p^\mu_{\text{rest}} = (m, 0, 0, 0)\)(\(E = m\), \(\mathbf{p} = 0\))。
\(x\) 方向に速度 \(v\) でブーストする(静止系から見て粒子が速度 \(v\) で動く系に変換する)。ここでは逆変換(静止系→運動系)を考える。静止系から速度 \(-v\) の系に変換する、すなわち粒子が速度 \(v\) で動いて見える系での運動量を求める:
より正確には、粒子の静止系 \(S'\) から実験室系 \(S\) への変換を考える。\(S'\) では \(p'^\mu = (m, 0, 0, 0)\)。\(S'\) は \(S\) に対して速度 \(v\) で動いているので、\(S\) から \(S'\) へのブーストは速度 \(v\)。逆変換(\(S'\) から \(S\))は速度 \(-v\):
最終回答¶
検算¶
質量殻条件を確認:
✓
非相対論的極限 \(v \ll 1\):\(\gamma \approx 1 + v^2/2\) より \(E \approx m + \frac{1}{2}mv^2\)(静止エネルギー+運動エネルギー)、\(p_x \approx mv\)(古典的運動量)。✓
M-4. Lorentz 変換の群構造¶
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解法の方針¶
群の 4 つの公理を Lorentz 条件 \(\Lambda^T \eta \Lambda = \eta\) を用いて一つずつ確認する。
計算の詳細¶
(i) 閉包性
\(\Lambda_1\) と \(\Lambda_2\) がともに Lorentz 変換、すなわち \(\Lambda_1^T \eta \Lambda_1 = \eta\) かつ \(\Lambda_2^T \eta \Lambda_2 = \eta\) を満たすとする。合成変換 \(\Lambda_3 = \Lambda_1 \Lambda_2\) について:
\(\Lambda_1^T \eta \Lambda_1 = \eta\) を代入:
したがって \(\Lambda_3 = \Lambda_1 \Lambda_2\) も Lorentz 変換である。✓
(ii) 結合律
Lorentz 変換は行列の積で表されるので、行列の積の結合律がそのまま成り立つ:
✓
(iii) 単位元の存在
恒等変換 \(\Lambda^\mu{}_\nu = \delta^\mu{}_\nu\)(すなわち単位行列 \(I\))について:
これは自明に成り立つ。したがって単位行列は Lorentz 変換の条件を満たす。✓
(iv) 逆元の存在
\(\det\Lambda = \pm 1 \neq 0\) なので、\(\Lambda\) は正則行列であり逆行列 \(\Lambda^{-1}\) が存在する。
\(\Lambda^{-1}\) が Lorentz 条件を満たすことを示す。\(\Lambda^T \eta \Lambda = \eta\) の両辺に左から \((\Lambda^T)^{-1} = (\Lambda^{-1})^T\)、右から \(\Lambda^{-1}\) を掛ける:
正しくは、\(\Lambda^T \eta \Lambda = \eta\) から出発する。両辺の逆行列を取ると:
\(\eta^{-1} = \eta\)(Minkowski 計量は自身の逆行列)かつ \((\Lambda^T)^{-1} = (\Lambda^{-1})^T\) を使うと:
転置を取ると:
(\(\eta\) は対称行列なので \(\eta^T = \eta\))
これは \(\Lambda^{-1}\) が Lorentz 条件を満たすことを示している。✓
固有 orthochronous Lorentz 群 \(SO^+(1,3)\) について:
Lorentz 変換は \(\det\Lambda\) と \(\Lambda^0{}_0\) の値によって 4 つの連結成分に分類される:
| \(\det\Lambda = +1\) | \(\det\Lambda = -1\) | |
|---|---|---|
| \(\Lambda^0{}_0 \geq 1\) | 固有 orthochronous \(SO^+(1,3)\) | 空間反転を含む |
| \(\Lambda^0{}_0 \leq -1\) | 時間反転を含む | 時空反転を含む |
\(\Lambda^0{}_0 \geq 1\) の条件は Lorentz 条件の \((0,0)\) 成分 \((\Lambda^0{}_0)^2 - \sum_i (\Lambda^i{}_0)^2 = 1\) から \(|\Lambda^0{}_0| \geq 1\) が導かれることによる。
\(SO^+(1,3)\) は恒等変換を含む連結成分であり、連続的なパラメータ変化で恒等変換に繋がる変換のみからなる。具体的には: - 3 つの空間回転(\(xy\), \(yz\), \(zx\) 平面の回転、パラメータ 3 個) - 3 つのブースト(\(x\), \(y\), \(z\) 方向、パラメータ 3 個)
合計 6 つのパラメータを持つ連続群である。空間反転 \(P\)(\(\det P = -1\), \(P^0{}_0 = +1\))や時間反転 \(T\)(\(\det T = -1\), \(T^0{}_0 = -1\))は連続変形では恒等変換に繋がらない離散変換であり、\(SO^+(1,3)\) には含まれない。
検算¶
パラメータの数の確認:\(4 \times 4\) の反対称テンソル \(\omega_{\mu\nu}\) の独立成分数は \(\frac{4 \times 3}{2} = 6\)。これは 3 回転 + 3 ブースト = 6 パラメータと一致する。✓
Advanced(発展)¶
A-1. 反変テンソルと共変テンソルの変換則、および電磁場テンソルへの応用¶
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(a) 2 階反変テンソルの変換則¶
説明:
4 元ベクトルの変換則は \(V'^\mu = \Lambda^\mu{}_\nu V^\nu\) である。2 つの 4 元ベクトル \(A^\mu\) と \(B^\nu\) のテンソル積 \(A^\mu B^\nu\) を考えると、その変換則は:
一般の 2 階反変テンソル \(T^{\mu\nu}\) は、必ずしもテンソル積の形 \(A^\mu B^\nu\) で書けるとは限らないが、テンソル積の線形結合として表現できる。したがって、2 階反変テンソルの変換則は:
と定義される。各添字に対して独立に Lorentz 変換が作用する。これは「テンソルとは、Lorentz 変換のもとでこの規則に従って変換する量である」という定義でもある。
(b) 電磁場テンソルのブースト¶
解法の方針: \(x\) 方向のブーストにおいて \(F'^{\mu\nu} = \Lambda^\mu{}_\alpha \Lambda^\nu{}_\beta F^{\alpha\beta}\) を特定の成分について計算する。
ブースト行列の非ゼロ成分:
\(E_y'\) の計算(\(F'^{02}\) 成分):
\(\Lambda^2{}_\beta = \delta^2{}_\beta\)(\(\beta = 2\) のみ非ゼロ)なので:
\(\Lambda^0{}_\alpha\) は \(\alpha = 0, 1\) のみ非ゼロ:
\(F^{02} = -E_y\), \(F^{12} = -B_z\) を代入:
\(F'^{02} = -E_y'\) なので:
\(B_z'\) の計算(\(F'^{12}\) 成分):
\(\Lambda^1{}_\alpha\) は \(\alpha = 0, 1\) のみ非ゼロ:
\(F'^{12} = -B_z'\) なので:
補足:他の成分の変換
同様の計算により、完全な変換則は:
ブースト方向(\(x\))の成分は不変で、垂直方向の電場と磁場が混合する。
(c) Lorentz 不変量 \(F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}\)¶
計算:
まず \(F_{\mu\nu} = \eta_{\mu\alpha}\eta_{\nu\beta}F^{\alpha\beta}\) で添字を下げる。\(\eta\) の符号に注意して:
- \(F_{0i} = \eta_{00}\eta_{ii}F^{0i} = (+1)(-1)F^{0i} = -F^{0i}\)
- \(F_{ij} = \eta_{ii}\eta_{jj}F^{ij} = (-1)(-1)F^{ij} = F^{ij}\)
したがって:
縮約を計算する:
\(\mu = 0\) の項(\(\nu = 1, 2, 3\) のみ非ゼロ、反対称性から \(\mu < \nu\) と \(\mu > \nu\) の両方を含む):
空間成分(\(\mu, \nu = 1, 2, 3\)):
具体的に:\(F^{12} = -B_z\), \(F_{12} = -B_z\) なので \(F^{12}F_{12} = B_z^2\)。同様に \(F^{13}F_{13} = B_y^2\), \(F^{23}F_{23} = B_x^2\)。
反対称性から \(F^{ij}F_{ij} = F^{ji}F_{ji}\) なので、\(i \neq j\) の全ての組み合わせを数えると:
合計:
物理的意味:
この不変量は全ての慣性系で同じ値を持つ。 - \(\mathbf{B}^2 > \mathbf{E}^2\) ならば、どの慣性系でもこの不等式が成り立つ(電場をゼロにできる系が存在する)。 - \(\mathbf{E}^2 > \mathbf{B}^2\) ならば、どの慣性系でもこの不等式が成り立つ(磁場をゼロにできる系が存在する)。 - 電磁波では \(|\mathbf{E}| = |\mathbf{B}|\) なので不変量はゼロ。
もう一つの独立な Lorentz 不変量は \(\epsilon_{\mu\nu\rho\sigma}F^{\mu\nu}F^{\rho\sigma} \propto \mathbf{E} \cdot \mathbf{B}\) である。
検算¶
(b) の結果を用いて不変量が保存されることを確認する:
✓ 不変量が保存されている。
A-2. Lorentz 群の生成子と Lie 代数¶
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(a) \(\omega_{\mu\nu}\) の反対称性¶
計算:
無限小 Lorentz 変換 \(\Lambda^\mu{}_\nu = \delta^\mu{}_\nu + \omega^\mu{}_\nu\) を Lorentz 条件 \(\eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\alpha \Lambda^\nu{}_\beta = \eta_{\alpha\beta}\) に代入する:
展開して \(\omega\) の 2 次以上を無視する:
\(\eta_{\alpha\beta}\) が両辺でキャンセルし:
\(\omega_{\beta\alpha} \equiv \eta_{\mu\beta}\omega^\mu{}_\alpha\) と定義すると(添字を下げた):
独立パラメータの数: \(4 \times 4\) の反対称テンソルの独立成分数は \(\frac{4(4-1)}{2} = 6\) 個。
物理的対応: - \(\omega_{12}, \omega_{23}, \omega_{31}\):3 つの空間回転(\(xy\), \(yz\), \(zx\) 平面) - \(\omega_{01}, \omega_{02}, \omega_{03}\):3 つのブースト(\(x\), \(y\), \(z\) 方向)
(b) 生成子の 4 元ベクトル表現の確認¶
有限変換の表式:
無限小変換 \(\Lambda = I - \frac{i}{2}\omega_{\mu\nu}M^{\mu\nu}\) を繰り返し適用すると、有限の変換は指数関数で表される:
ここで \(M^{\mu\nu}\) は Lorentz 群の生成子で、\(M^{\mu\nu} = -M^{\nu\mu}\)(反対称)。
\(x\) 方向ブーストの確認:
\(\omega_{01} = -\omega_{10} = \beta\)(他はゼロ)の場合を考える。
無限小変換は:
\(\omega_{\mu\nu}\) が非ゼロなのは \(\omega_{01} = \beta\), \(\omega_{10} = -\beta\) のみ。\(M^{\mu\nu}\) の反対称性を使うと:
したがって無限小変換は:
生成子の 4 元ベクトル表現を代入する:
各成分を計算する:
- \((M^{01})^0{}_0 = i(\eta^{00}\delta^1{}_0 - \eta^{10}\delta^0{}_0) = i(1 \cdot 0 - 0 \cdot 1) = 0\)
- \((M^{01})^0{}_1 = i(\eta^{00}\delta^1{}_1 - \eta^{10}\delta^0{}_1) = i(1 \cdot 1 - 0) = i\)
- \((M^{01})^1{}_0 = i(\eta^{01}\delta^1{}_0 - \eta^{11}\delta^0{}_0) = i(0 - (-1) \cdot 1) = i\)
- \((M^{01})^1{}_1 = i(\eta^{01}\delta^1{}_1 - \eta^{11}\delta^0{}_1) = i(0 - 0) = 0\)
- 他の成分(\(\alpha = 2, 3\) や \(\gamma = 2, 3\))はすべてゼロ
行列表示:
無限小変換:
ここで \(-i \cdot i = 1\) を使った。
一方、ブースト行列を \(\beta\) の 1 次まで展開すると:
符号の不一致について: 上の計算で得られた \(\Lambda^0{}_1 = +\beta\) と、ブースト行列の \(\Lambda^0{}_1 = -\beta\) が符号反転している。これは \(\omega_{01}\) の定義の符号規約による。実際、ブーストのパラメータを \(\omega_{01} = -\beta\) と取れば(\(\omega_{01}\) は「速度 \(v = \tanh\beta\) のブースト」に対して \(-\beta\)):
これはブースト行列の 1 次展開と一致する。✓
あるいは、指数関数の規約を \(\Lambda = \exp\left(+\frac{i}{2}\omega_{\mu\nu}M^{\mu\nu}\right)\) とする文献もある。ここでは有限変換を直接確認する:
\((M^{01})^2\) を計算する:
\((-i)^2(M^{01})^2 = (-1)(-1)\text{diag}(1,1,0,0)\) の \(2\times 2\) ブロックに注目すると、\(-iM^{01}\) の \(2\times 2\) ブロックは:
\(K^2 = I\) なので:
これは \(\Lambda^0{}_1 = +\sinh\beta\) を与え、本文の規約 \(\Lambda^0{}_1 = -\sinh\beta\) とは符号が異なる。これは \(\omega_{01}\) を \(-\beta\) と取るべきことを意味する。すなわち、速度 \(v\) の \(x\) 方向ブーストに対して \(\omega_{01} = -\beta\)(\(\beta = \text{arctanh}\, v\))と設定すれば:
これは本文のブースト行列と一致する。✓
(c) Lie 代数の交換関係の検証¶
\([M^{01}, M^{02}]\) の計算:
まず \((M^{02})^\alpha{}_\gamma\) を求める:
非ゼロ成分: - \((M^{02})^0{}_2 = i(\eta^{00}\delta^2{}_2) = i\) - \((M^{02})^2{}_0 = i(-\eta^{22}\delta^0{}_0) = i(-(-1))(1) = i\)
行列表示:
積 \(M^{01}M^{02}\):
非ゼロの寄与を探す:
-
\(\alpha = 0\): \((M^{01})^0{}_\delta\) は \(\delta = 1\) のみ非ゼロ(値 \(i\))。\((M^{02})^1{}_\gamma = 0\)(全てゼロ)。したがって \((M^{01}M^{02})^0{}_\gamma = 0\)。
-
\(\alpha = 1\): \((M^{01})^1{}_\delta\) は \(\delta = 0\) のみ非ゼロ(値 \(i\))。\((M^{02})^0{}_\gamma\) は \(\gamma = 2\) のみ非ゼロ(値 \(i\))。したがって \((M^{01}M^{02})^1{}_2 = i \cdot i = -1\)。
-
\(\alpha = 2\): \((M^{01})^2{}_\delta = 0\)。したがって \((M^{01}M^{02})^2{}_\gamma = 0\)。
積 \(M^{02}M^{01}\):
-
\(\alpha = 0\): \((M^{02})^0{}_\delta\) は \(\delta = 2\) のみ非ゼロ(値 \(i\))。\((M^{01})^2{}_\gamma = 0\)。したがって \((M^{02}M^{01})^0{}_\gamma = 0\)。
-
\(\alpha = 1\): \((M^{02})^1{}_\delta = 0\)。したがって \((M^{02}M^{01})^1{}_\gamma = 0\)。
-
\(\alpha = 2\): \((M^{02})^2{}_\delta\) は \(\delta = 0\) のみ非ゼロ(値 \(i\))。\((M^{01})^0{}_\gamma\) は \(\gamma = 1\) のみ非ゼロ(値 \(i\))。したがって \((M^{02}M^{01})^2{}_1 = i \cdot i = -1\)。
交換子:
Lie 代数の交換関係からの予測:
\(\mu = 0, \nu = 1, \rho = 0, \sigma = 2\) を代入:
各項を評価: - \(\eta^{10} = 0\) - \(\eta^{00} = 1\) - \(\eta^{12} = 0\) - \(\eta^{02} = 0\) - \(M^{00} = 0\)(反対称性より)
したがって:
\(M^{12}\) を計算する:
非ゼロ成分: - \((M^{12})^1{}_2 = i\eta^{11}\delta^2{}_2 = i(-1)(1) = -i\) - \((M^{12})^2{}_1 = i(-\eta^{22})\delta^1{}_1 = i(-(-1))(1) = i\)
したがって:
これは直接計算した \([M^{01}, M^{02}]\) と完全に一致する。✓
物理的解釈: \(M^{01}\) は \(x\) 方向ブーストの生成子、\(M^{02}\) は \(y\) 方向ブーストの生成子、\(M^{12}\) は \(xy\) 平面の回転の生成子である。交換関係 \([M^{01}, M^{02}] = -iM^{12}\) は「\(x\) 方向ブーストと \(y\) 方向ブーストを交互に行うと、\(xy\) 平面の回転が生じる」ことを意味する(Thomas 歳差運動の起源)。
場の量子論への意義:
Lorentz 群の Lie 代数は、場がどのように Lorentz 変換のもとで振る舞うかを決定する。異なる表現 (representation) が異なるスピンの場に対応する:
- スカラー場(スピン 0):自明表現。\(M^{\mu\nu} = 0\)(場自体は変換しない、座標依存性のみ変わる)。
- ベクトル場(スピン 1):4 次元表現。上で計算した \((M^{\mu\nu})^\alpha{}_\beta\) がそのまま使われる。電磁場 \(A^\mu\) がこの表現に属する。
- スピノル場(スピン 1/2):2 次元表現(Weyl スピノル)または 4 次元表現(Dirac スピノル)。生成子は \(\sigma^{\mu\nu} = \frac{i}{4}[\gamma^\mu, \gamma^\nu]\) で与えられる。電子場がこの表現に属する。
場の量子論では、Lagrangian が Lorentz 不変であることを要求する。これは場の変換則(すなわち Lorentz 群のどの表現に属するか)と、それらの場の組み合わせ方(Lorentz スカラーの構成)を制約する。したがって、Lorentz 群の Lie 代数構造が許される相互作用の形を決定する出発点となる。
検算¶
次元の確認: 6 個の生成子は 3 回転 + 3 ブースト = 6 パラメータに対応。\(4 \times 4\) 反対称行列の独立成分数 \(\frac{4 \times 3}{2} = 6\) とも一致。✓
エルミート性の確認: 回転の生成子 \(M^{12}\) は:
エルミートである(回転はユニタリ変換を生成)。一方、ブーストの生成子 \(M^{01}\) は:
反エルミートではない(ブーストは非ユニタリ変換)。これは Lorentz 群が非コンパクト群であることの反映であり、物理的にはブーストのラピディティが無限大まで取れることに対応する。✓
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