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Appendix D ループ計算の道具箱 — 次元解析・Feynman パラメータ・Wick 回転

前回までのあらすじ:

Appendix C ではガウス積分(1 変数・多変数)と Grassmann 数の代数・Berezin 積分を整理し、ボソン (\((\det A)^{-1/2}\)) とフェルミオン (\(\det A\)) の経路積分の対比を明確にした。

この章のゴール

  • 場の量子論の具体的なループ計算で必要となる「計算の道具箱」を整備する
  • 自然単位系と質量次元、符号の規約、Fourier 変換と \(2\pi\) の因子、Feynman パラメータによる分母の統合、Wick 回転による Euclid 空間への移行、そして運動量積分の評価公式を、いつでも参照できるレファレンスとしてまとめる
  • 第 13〜14 章のくりこみ計算で「Appendix D を参照」と指示されたら立ち返る場所となる

自然単位系と質量次元

🟡 リナ: これまでの章で何度も使ってきた自然単位系を、この Appendix で一度きちんと整理しておきましょう。ループ計算をするときに「この量の次元は何か」を間違えると、答えが桁違いにずれてしまうから。

🔵 カイ: \(c = 1\)\(\hbar = 1\) ってやつですよね。便利だけど、たまに「本当の単位」に戻したいとき混乱します。

🟡 リナ: まさにそこを整理するのが今日の目的よ。出発点は 2 つの等式:

\[ c = 2.998 \times 10^{8}\ \text{m/s} = 1 \tag{D.1} \]
\[ \hbar = 1.055 \times 10^{-34}\ \text{J} \cdot \text{s} = 1 \tag{D.2} \]

🟡 リナ: \(c = 1\) とすると「長さ」と「時間」が同じ次元になる。\(\hbar = 1\) とすると「エネルギー」と「逆時間」が同じ次元になる。結果として、すべての物理量は 質量次元 (mass dimension) ——「質量の何乗か」——だけで特徴づけられるの。たとえば距離 \(x\)\(\hbar c / E\) のような形で書けるから、\(\hbar = c = 1\) なら \(x \sim 1/E \sim 1/m\)。つまり距離の質量次元は \(-1\) よ。

⚪ メイ: なるほど、距離が「質量の \(-1\) 乗」の次元を持つのね。エネルギーが高いほど短い距離を探れる、という直感とも合っているわ。

🟡 リナ: その通り。ある量 \(X\) の質量次元を \([X]\) と書くわ。基本ルールをまとめると:

表 D.1: 基本的な物理量の質量次元

質量次元 理由
座標 \(x^\mu\)、時間 \(t\) \(-1\) \(x \sim 1/m\)
微分 \(\partial_\mu\)、運動量 \(p_\mu\) \(+1\) \(\partial_\mu = \partial/\partial x^\mu\) は座標の逆
速度 \(v = x/t\) \(0\) \(c = 1\) だから無次元
4 次元積分測度 \(d^4x\) \(-4\) \((-1) \times 4\)
作用 \(S = \int d^4x\,\mathcal{L}\) \(0\) \(e^{iS/\hbar}\) の指数は無次元
Lagrangian 密度 \(\mathcal{L}\) \(+4\) \([S] = [d^4x] + [\mathcal{L}] = 0\) より

🔵 カイ: 作用が無次元っていうのは、経路積分の \(e^{iS}\) から来てるんですね。第 10〜11 章でやった話だ。

🟡 リナ: そう。\(\hbar = 1\) だから \(e^{iS/\hbar} = e^{iS}\) で、指数の引数は無次元でなければならない。


場の質量次元

🟡 リナ: Lagrangian 密度 \([\mathcal{L}] = 4\) という条件から、場の質量次元が決まるわ。

スカラー場 \(\phi\) の場合、自由 Lagrangian は

\[ \mathcal{L} = \frac{1}{2}(\partial_\mu \phi)(\partial^\mu \phi) - \frac{1}{2}m^2 \phi^2 \]

運動項に注目すると:

\[ [\mathcal{L}] = [\partial_\mu]^2 + [\phi]^2 = 2 + 2[\phi] = 4 \]
\[ \therefore\quad [\phi] = 1 \tag{D.3} \]

🔵 カイ: Lagrangian の次元が 4 って決まってるだけで、場の次元が一意に出るんですね。シンプルだ。

🟡 リナ: そうなの。同じ論法で Dirac 場 \(\psi\) の質量次元も求められるわ。Dirac Lagrangian は \(\mathcal{L} = \bar{\psi}(i\gamma^\mu\partial_\mu - m)\psi\) だったわね。運動項 \(\bar{\psi}\,i\gamma^\mu\partial_\mu\,\psi\) に注目すると?

⚪ メイ: \([\bar{\psi}] + [\partial_\mu] + [\psi] = 2[\psi] + 1 = 4\) だから \([\psi] = 3/2\) ね。

\[ [\bar{\psi}] + [\partial_\mu] + [\psi] = 2[\psi] + 1 = 4 \]
\[ \therefore\quad [\psi] = \frac{3}{2} \tag{D.4} \]

🟡 リナ: その通り。まとめると:

表 D.2: 各場の質量次元

質量次元
スカラー場 \(\phi\) \(1\)
Dirac 場 \(\psi\) \(3/2\)
ゲージ場 \(A_\mu\) \(1\)

ゲージ場は \(-\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}\) から分かるわ。\(F_{\mu\nu} = \partial_\mu A_\nu - \partial_\nu A_\mu\) だから \([F_{\mu\nu}] = [\partial] + [A] = 1 + [A]\)\([F^2] = 2(1 + [A]) = 4\) より \([A_\mu] = 1\) ね。

🔵 カイ: 結合定数の次元もこれで決まりますか?

🟡 リナ: いい質問。たとえば QED の相互作用項 \(e\bar{\psi}\gamma^\mu\psi A_\mu\) の次元は:

\[ [e] + [\bar{\psi}] + [\psi] + [A_\mu] = [e] + \frac{3}{2} + \frac{3}{2} + 1 = [e] + 4 \]

\([\mathcal{L}] = 4\) だから \([e] = 0\)。つまり QED の結合定数 \(e\)無次元 よ。これが「繰り込み可能」であることの一つの目安になるの。第 14〜16 章で学んだ話ね。

理解度チェック:\(\phi^4\) 理論の結合定数 \(\lambda\) の質量次元は?

\(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\lambda}{4!}\phi^4\) より \([\lambda] + 4[\phi] = [\lambda] + 4 = 4\)。よって \([\lambda] = 0\)(無次元)。

📝 練習問題:


\(\hbar\)\(c\) の復元

🟡 リナ: 実験と比較するときは物理的な単位に戻す必要があるわ。覚えておくべき変換因子:

\[ 1\ \text{GeV} = 1.602 \times 10^{-10}\ \text{J} \tag{D.5} \]

自然単位系では \(\text{GeV}^{-2}\) が面積の次元を持つわ。これを SI 単位に戻すには \(\hbar c = 0.1973\ \text{GeV}\cdot\text{fm}\)\(1\ \text{fm} = 10^{-15}\ \text{m}\))を使って:

\[ (\hbar c)^2 = (0.1973\ \text{GeV}\cdot\text{fm})^2 = 0.03893\ \text{GeV}^2\cdot\text{fm}^2 \tag{D.6a} \]

したがって自然単位系で「\(1/\text{GeV}^2\)」と書かれた断面積を \(\text{fm}^2\) の単位に変換するには、\(\hbar c = 0.1973\ \text{GeV}\cdot\text{fm}\) という換算因子を使えばいいわ。具体的には:$$ 1\ \text{GeV}^{-2} \longrightarrow (\hbar c)^2 \times 1\ \text{GeV}^{-2} = 0.03893\ \text{GeV}^2!\cdot!\text{fm}^2 \times \text{GeV}^{-2} = 0.03893\ \text{fm}^2 = 0.3893\ \text{mb} = 3.893 \times 10^{-28}\ \text{cm}^2 \tag{D.6b} $$

ここで \(1\ \text{mb}\ (\text{millibarn}) = 10^{-27}\ \text{cm}^2 = 10^{-31}\ \text{m}^2\)\(1\ \text{pb}\ (\text{picobarn}) = 10^{-40}\ \text{m}^2\) よ。つまり \(1\ \text{GeV}^{-2} = 3.893 \times 10^{8}\ \text{pb}\) ね。自然単位系で「\(1/\text{GeV}^2\)」と書かれた断面積を実験値と比較するには、\((\hbar c)^2\) を掛けて \(\text{m}^2\) や barn に変換するの。

🔵 カイ: 「barn(バーン)」って変な名前ですね。

🟡 リナ: 原子核に粒子を当てる実験で、原子核が「納屋 (barn) のように大きい標的」に見えたことから来ているの。\(1\ \text{barn} = 10^{-28}\ \text{m}^2\) で原子核の断面積のオーダーね。


符号の規約

🟡 リナ: 次に、本「場の量子論」編全体で採用している符号の規約をまとめておくわ。教科書によって規約が違うから、他の本を参照するときは必ず確認してね。


計量テンソル

🟡 リナ: Minkowski (ミンコフスキー) 計量は:

\[ \eta^{\mu\nu} = \text{diag}(+1,\;-1,\;-1,\;-1) \tag{D.7} \]

これは「mostly minus」規約と呼ばれるわ。この規約だと質量殻条件は:

\[ p^2 = p_0^2 - \vec{p}^{\,2} = m^2 > 0 \tag{D.8} \]

⚪ メイ: 第 2 章で復習した特殊相対論の規約と同じね。\(p^2\) が正で質量の二乗に等しくなる。


Lagrangian の符号

🟡 リナ: 各場の自由 Lagrangian をまとめておくわ。符号は エネルギー密度が正 になるように決めてあるの。

実スカラー場:

\[ \mathcal{L} = \frac{1}{2}(\partial_\mu \phi)(\partial^\mu \phi) - \frac{1}{2}m^2\phi^2 \tag{D.9} \]

複素スカラー場:

\[ \mathcal{L} = (\partial_\mu \phi^*)(\partial^\mu \phi) - m^2\phi^*\phi \tag{D.10} \]

🔵 カイ: 実スカラーには \(\frac{1}{2}\) があるのに複素スカラーにはないのはなぜですか?

🟡 リナ: 実スカラー場の運動項 \((\partial\phi)^2\)\(\phi\) で変分すると、\(\phi\) が 2 箇所に現れているから微分の積の規則で因子 2 が出るの。\(\frac{1}{2}\) はそれを打ち消して正しい運動方程式を与えるためのものよ。一方、複素スカラーでは \(\phi\)\(\phi^*\) を独立な変数として扱うの(第 3 章で学んだわね)。\((\partial\phi^*)(\partial\phi)\)\(\phi^*\) で変分すると \(\phi\) は 1 箇所にしか現れないから因子 2 は出ない——だから \(\frac{1}{2}\) は不要なのよ。

ゲージ場:

\[ \mathcal{L} = -\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu},\qquad F_{\mu\nu} = \partial_\mu A_\nu - \partial_\nu A_\mu \tag{D.11} \]

Dirac フェルミオン: 🟡 リナ: ここで スラッシュ記法 (Feynman slash notation) を確認しておくわ(第 5 章で導入したわね)。任意の 4 元ベクトル \(a\) に対して \(\not\!a \equiv \gamma^\mu a_\mu\) と定義するの。たとえば \(\not\!\partial \equiv \gamma^\mu\partial_\mu\)\(\not\!p \equiv \gamma^\mu p_\mu\) ね。この記法を使うと Dirac Lagrangian は: $$ \mathcal{L} = \bar{\psi}(i!\not!\partial - m)\psi \tag{D.12} $$

と簡潔に書けるわ。


共変微分

🟡 リナ: 非 Abel (アーベル) ゲージ理論——つまり 2 つのゲージ変換を続けて行うとき、その順序を入れ替えると結果が変わるような理論——の共変微分 (covariant derivative) は:

\[ D_\mu = \partial_\mu - ig\,T^a_R\,A^a_\mu \tag{D.13} \]

ここで \(g\) は結合定数、\(T^a_R\) はゲージ群の生成子(添字 \(R\) は「表現 (representation)」の頭文字で、場の種類を区別するラベルよ)、\(A^a_\mu\) はゲージ場の成分(添字 \(a\) は群の生成子を区別するラベルで、たとえば \(SU(3)\) なら \(a = 1, 2, \ldots, 8\) の 8 個)。詳しくは第 17 章を参照してね。

🔵 カイ: 正直、「表現」とか「生成子」とか、ここだけ読んでもピンと来ないです……。

🟡 リナ: 大丈夫、ここは規約の確認だから、今は「共変微分の符号が \(-ig\) である」ということだけ押さえておけば十分よ。\(T^a_R\) は「ゲージ変換が場にどう作用するかを決める行列」で、場の種類によって行列のサイズが変わるの——たとえばクォーク場なら \(3 \times 3\) 行列、グルーオン場なら \(8 \times 8\) 行列。でも今はこの詳細は気にしなくていいわ。物理的な意味は第 17 章で丁寧に学ぶから、今は式の形だけ覚えておいてね。

⚪ メイ: つまり今の段階では「\(-ig\) という符号を採用している」というカタログ情報だけ持ち帰ればいいのね。

🟡 リナ: その通り。QED は \(U(1)\) ゲージ理論で、生成子は 1 つだけ(\(a\) の添字が不要)、その「行列」は単に粒子の電荷 \(Q\) という数になるの。だから式 (D.13) で \(g \to e\)\(T^a_R \to Q\) と置き換えて:

\[ D_\mu = \partial_\mu - ieQA_\mu \tag{D.14} \]

電子の電荷は \(-e\)\(e > 0\))だから、素電荷 \(e\) を単位として測ると \(Q = -1\) よ。式 (D.14) に代入すると \(D_\mu = \partial_\mu - ie(-1)A_\mu = \partial_\mu + ieA_\mu\) となるわ:

\[ D_\mu = \partial_\mu + ieA_\mu \tag{D.15} \]

Feynman 伝播関数

🟡 リナ: 本「場の量子論」編で使う Feynman 伝播関数 (Feynman propagator) の規約:

スカラー場:

\[ \langle 0|T\{\phi(x)\phi(y)\}|0\rangle = \int \frac{d^4p}{(2\pi)^4}\;e^{-ip(x-y)}\;\frac{i}{p^2 - m^2 + i\varepsilon} \tag{D.16} \]

ここで \(T\{\cdots\}\)時間順序積 (time-ordered product) で、時刻が後の場を左に並べる操作よ(第 10 章で導入したわね)。

ここで \(\varepsilon > 0\) は無限小の正の量で、\(i\varepsilon\) 処方 と呼ばれるわ。これは \(p_0\) の積分経路上で極をわずかにずらし、因果的な(時間順序に従う)伝播を選び出す役割を持つの。Wick 回転のところで再び重要になるから覚えておいてね。

🔵 カイ: \(i\varepsilon\) って、因果律を守るための「おまじない」みたいなものかと思ってたんですが、Wick 回転のときにも効いてくるんですね。

🟡 リナ: そうなの。Wick 回転で経路を虚軸に回せるのは、まさに \(i\varepsilon\) が極の位置をずらしてくれているおかげよ。

ゲージ場(共変ゲージ——Lorentz 共変性を保つゲージ固定の総称で、パラメータ \(\xi\) で特徴づけられるわ):

\[ \langle 0|T\{A_\mu(x)A_\nu(y)\}|0\rangle = \int \frac{d^4p}{(2\pi)^4}\;e^{-ip(x-y)}\;\frac{-i\!\left(\eta_{\mu\nu} - (1-\xi)\frac{p_\mu p_\nu}{p^2 + i\varepsilon}\right)}{p^2 + i\varepsilon} \tag{D.17} \]

\(\xi = 1\) が Feynman ゲージ、\(\xi = 0\) が Landau (ランダウ) ゲージ。

Dirac フェルミオン:

\[ \langle 0|T\{\psi(x)\bar{\psi}(y)\}|0\rangle = \int \frac{d^4p}{(2\pi)^4}\;e^{-ip(x-y)}\;\frac{i}{\not\!p - m + i\varepsilon} \tag{D.18} \]

🔵 カイ: あれ、伝播関数の指数って \(e^{-ip(x-y)}\)\(e^{+ip(x-y)}\) のどちらを使うかで教科書によって違ったりしますよね。ここでは全部 \(e^{-ip(x-y)}\) で統一してるんですか?

🟡 リナ: いい気づきね。結論から言うと、指数の符号の選び方と伝播関数の分子の形はセットで決まるから、どちらの規約でも物理的な結果は同じよ。実用上は Feynman 則で運動量空間の伝播関数 \(i/(\not\!p - m)\) を直接使うから、指数の符号を気にする場面はほとんどないわ。

仕組みを簡単に言うと、\(p\) は積分変数だから \(p \to -p\) と置換すれば指数 \(e^{-ip(x-y)}\)\(e^{+ip(x-y)}\) に変わるの。積分測度は \(d^4p \to d^4p\)(ヤコビアンは \((-1)^4 = 1\))で不変。分母も \(p\) の関数として書き換わるけれど、全体を整理すると座標空間の伝播関数は同じ結果になるわ。つまり積分変数の名前を付け替えるだけで吸収される違いなの。他の教科書で \(e^{+ip(x-y)}\) を使っているのを見ても、物理的な結果は変わらないから安心してね。

🔵 カイ: なるほど、積分変数の付け替えで吸収されるんですね。

🟡 リナ: そういうこと。本「場の量子論」編では \(e^{-ip(x-y)}\) を採用しているけれど、これは \(\psi(x)\) の Fourier 展開で消滅演算子に \(e^{-ipx}\) が伴うことに対応した自然な選択よ。

⚪ メイ: スカラーの分子が \(+i\) でゲージ場が \(-i\) なのは、何か理由があるの?

🟡 リナ: いい着眼点ね。伝播関数は運動方程式の Green 関数だから、Lagrangian の運動項の符号がそのまま反映されるの。スカラー場は \(+\frac{1}{2}(\partial\phi)^2\) で正の符号、ゲージ場は \(-\frac{1}{4}F^2\) で負の符号——この違いが分子の \(+i\)\(-i\) の違いになるのよ。

理解度チェック:Feynman ゲージ (\(\xi = 1\)) でのゲージ場伝播関数の分子は?

\(\xi = 1\) を代入すると \((1-\xi) = 0\) なので、分子は単に \(-i\eta_{\mu\nu}\) になる。最も計算が簡単になるゲージ。

✅ 理解度チェック: スカラー場の Feynman 伝播関数に現れる \(i\varepsilon\) 処方の物理的な役割は何か。

答え

\(i\varepsilon\)\(\varepsilon > 0\) の無限小量)は、\(p_0\) の複素平面上で伝播関数の極を実軸からわずかにずらす役割を持つ。これにより因果的な(時間順序に従う)伝播を選び出し、また後の Wick 回転で積分経路を実軸から虚軸に回転させる際に極を横切らないことを保証する。


\(2\pi\) の因子

🟡 リナ: ループ計算で最も頻繁に起こるミスの一つが \(2\pi\) の付け忘れよ。ルールを明確にしておくわ。

🔵 カイ: なんで \(2\pi\) がそんなに厄介なんですか?

🟡 リナ: Fourier 変換の定義に起源があるの。デルタ関数の積分表示:

\[ \int_{-\infty}^{\infty} dp\; e^{\pm ipx} = 2\pi\,\delta(x) \tag{D.19} \]

4 次元に拡張すると:

\[ \int d^4p\; e^{\pm ip \cdot x} = (2\pi)^4\,\delta^{(4)}(x) \tag{D.20} \]

本「場の量子論」編の Fourier 変換の規約:

\[ f(x) = \int \frac{d^4p}{(2\pi)^4}\;\tilde{f}(p)\,e^{-ipx} \tag{D.21} \]
\[ \tilde{f}(p) = \int d^4x\;f(x)\,e^{+ipx} \tag{D.22} \]

この規約は伝播関数(式 (D.16))の \(e^{-ip(x-y)}\) と整合しているわ。

⚪ メイ: つまり 運動量空間の積分には \(1/(2\pi)^4\) がつき、座標空間の積分にはつかない。この非対称性を覚えておけばいいのね。

🟡 リナ: そう。Feynman 則で内部ループの運動量について積分するとき、必ず

\[ \int \frac{d^4k}{(2\pi)^4} \]

と書くのはこの規約から来ているの。

✅ 理解度チェック: 本書の Fourier 変換の規約では、\(2\pi\) の因子は運動量空間と座標空間のどちらの積分に付くか。

答え

運動量空間の積分に \(1/(2\pi)^4\) が付き、座標空間の積分には付かない。すなわち \(f(x) = \int \frac{d^4p}{(2\pi)^4}\tilde{f}(p)e^{-ipx}\) であり、\(\tilde{f}(p) = \int d^4x\,f(x)e^{+ipx}\) である。

運動量と微分の対応は:

\[ p_\mu \longleftrightarrow i\partial_\mu \tag{D.23} \]

これは平面波 \(e^{-ipx}\)\(i\partial_\mu\) を作用させると \(i(-ip_\mu)e^{-ipx} = p_\mu e^{-ipx}\) となることから確認できるわ。空間成分について補足すると、\(p_0 = E \leftrightarrow i\partial_t\) は時間成分。空間成分では \(p_i \leftrightarrow i\partial_i\) だけれど、mostly minus 規約では \(p^i = -p_i\) だから、反変成分で書くと \(p^i \leftrightarrow -i\partial_i\)。ここで \(\vec{p} = (p^1, p^2, p^3)\) は空間の反変成分を並べたベクトルだから、\(\vec{p} \longleftrightarrow -i\vec{\nabla}\)。量子力学でおなじみの関係ね。


Feynman パラメータ

🟡 リナ: ここからがループ計算の核心的な技法よ。第 13 章で見たように、Feynman ダイアグラムでは各内部線(ループを構成する仮想粒子の伝播関数)が \(i/(k^2 - m^2 + i\varepsilon)\) のような因子を与え、ループを一周する運動量 \(k\) について積分するの。内部線が複数あれば、それぞれの伝播関数が掛け合わさって「複数の異なる分母の積」を含む積分が現れるのよ。

🔵 カイ: つまり、分母に伝播関数が何個も掛け算で並ぶってことですか?

🟡 リナ: そう。分子の \(i\) は全体の係数として括り出せるし、\(i\varepsilon\) は Feynman パラメータの導入や平方完成の段階では積分の代数的構造に影響しないから(Wick 回転で重要になるけれど、それは後で説明するわ)、ひとまず分母の形に注目すると、たとえば 1 ループの自己エネルギーでは

\[ \int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(k^2 - m_1^2 + i\varepsilon)((k-p)^2 - m_2^2 + i\varepsilon)} \]

のような形。分母が 2 つの因子の積になっている。(以降、\(i\varepsilon\) は各因子に付いているものとして省略するわ。)

🔵 カイ: これ、どうやって積分するんですか? 分母がバラバラだと手が出ません。

🟡 リナ: そこで使うのが Feynman パラメータ (Feynman parameter) という技法。分母の積を、補助変数を導入して一つの分母にまとめるの。


基本公式

🟡 リナ: 最も基本的な公式はこれよ。アイデアは「\(A\)\(B\) の加重平均 \(xA + (1-x)B\) を作って、パラメータ \(x\) を 0 から 1 まで動かすことで \(A\)\(B\) の両方の情報を一つの式に詰め込む」というもの。2 つの因子 \(A\)\(B\) が正の実数(あるいは正の虚部を持つ複素数)のとき:

\[ \frac{1}{AB} = \int_0^1 dx\;\frac{1}{[xA + (1-x)B]^2} \tag{D.24} \]

🔵 カイ: えっ、なんでこれが成り立つんですか? 突然出てきた感じがします。

🟡 リナ: 証明してみましょう。\(A \neq B\) の場合で示すわ(\(A = B\) なら両辺とも \(1/A^2\) で自明に成り立つわね)。右辺の被積分関数を \(x\) で積分するわ。\(D = xA + (1-x)B = x(A-B) + B\) とおくと、\(dD = (A-B)\,dx\) だから:

\[ \int_0^1 dx\;\frac{1}{[x(A-B) + B]^2} = \int_B^A \frac{dD}{(A-B)}\;\frac{1}{D^2} \]

⚪ メイ: 置換積分ね。\(x = 0\) のとき \(D = B\)\(x = 1\) のとき \(D = A\) だから積分範囲は \(B\) から \(A\)

🟡 リナ: そう。続けると:

\[ = \frac{1}{A-B}\int_B^A \frac{dD}{D^2} = \frac{1}{A-B}\left[-\frac{1}{D}\right]_B^A = \frac{1}{A-B}\left(-\frac{1}{A} + \frac{1}{B}\right) \]
\[ = \frac{1}{A-B}\cdot\frac{A-B}{AB} = \frac{1}{AB} \]

🔵 カイ: おお! きれいに \(1/(AB)\) が出てきた!

🟡 リナ: これが Feynman パラメータの基本公式の証明よ。\(x\) は 0 から 1 まで走る補助変数で、最終的な物理量には現れない。


一般化:\(n\) 個の因子

🟡 リナ: 3 つ以上の因子がある場合の一般化も書いておくわ:

\[ \frac{1}{A_1 A_2 \cdots A_n} = (n-1)!\int_0^1 dx_1\cdots dx_n\;\frac{\delta(1 - x_1 - \cdots - x_n)}{[x_1 A_1 + x_2 A_2 + \cdots + x_n A_n]^n} \tag{D.25} \]

デルタ関数 \(\delta(1 - x_1 - \cdots - x_n)\) は「パラメータの和が 1」という制約を課しているの。

✅ 理解度チェック: Feynman パラメータの一般公式 (D.25) に現れるデルタ関数 \(\delta(1 - x_1 - \cdots - x_n)\) の役割は何か。

答え

Feynman パラメータ \(x_1, x_2, \ldots, x_n\) の和が 1 になるという制約を課す。これにより、分母の中身 \(x_1 A_1 + \cdots + x_n A_n\) が各 \(A_i\) の凸結合(重み付き平均)として表される。\(n=2\) の場合は \(x_2 = 1 - x_1\) となり、基本公式 (D.24) に帰着する。

⚪ メイ: \(n = 2\) の場合、\(\delta(1 - x_1 - x_2)\)\(x_2 = 1 - x_1\) と置けば式 (D.24) に戻るわね。\((n-1)! = 1! = 1\) だから係数も合う。

🟡 リナ: さらに、分母の冪が異なる場合も重要よ。この公式には「階乗」を整数以外にも拡張した関数が登場するの。「なぜ整数の階乗だけじゃダメなの?」と思うかもしれないから、先に動機を言っておくわね。理由は 2 つあるの。第一に、すぐ後の式 (D.34) で基本積分を閉じた形に書くときにガンマ関数が自然に現れるの——ベータ関数の積分を実行すると結果がガンマ関数で書かれるからよ。第二に、第 14 章で学ぶ次元正則化という手法では空間の次元を \(d = 4 - 2\epsilon\) のように「4 よりほんの少し小さい非整数」に取って、ループ積分の発散を \(\epsilon \to 0\) の極として捉えるの。そうすると公式中の「4」が「\(d\)」に置き換わり、たとえば \(\Gamma(d/2)\) のように引数が非整数になるから、階乗を非整数に拡張した関数が不可欠になるのよ。

🔵 カイ: なるほど、整数じゃない次元を扱うから、整数の階乗だけじゃ足りないんですね。

🟡 リナ: そういうこと。では公式を書くわね:

\[ \frac{1}{A^a B^b} = \frac{\Gamma(a+b)}{\Gamma(a)\Gamma(b)}\int_0^1 dx\;\frac{x^{a-1}(1-x)^{b-1}}{[xA + (1-x)B]^{a+b}} \tag{D.26} \]

ここで \(\Gamma\)ガンマ関数 (gamma function) よ。積分表示は \(\Gamma(z) = \int_0^\infty t^{z-1}e^{-t}\,dt\)\(z > 0\))で、正の整数 \(n\) に対しては \(\Gamma(n) = (n-1)!\) となり階乗の一般化になっているの。「\(z\) が非整数のとき \(t^{z-1}\) って何?」と思うかもしれないけれど、\(t > 0\) のとき自然対数 \(\ln t\) が定義できるから、\(t^{z-1} = e^{(z-1)\ln t}\) と定義すれば任意の実数 \(z\) に対して意味を持つわ(たとえば \(t^{1/2} = e^{(1/2)\ln t} = \sqrt{t}\) ね)。ただし積分 \(\int_0^\infty t^{z-1}e^{-t}dt\) が収束するのは \(z > 0\) のときだけ。\(z \leq 0\) への拡張は、すぐ後で説明する再帰関係を使うの。たとえば \(\Gamma(1) = 1\)\(\Gamma(2) = 1\)\(\Gamma(3) = 2\)。非整数でも定義されていて、\(\Gamma(1/2) = \sqrt{\pi}\) が有名ね。

⚪ メイ: \(\Gamma(1/2) = \sqrt{\pi}\) って、ガウス積分 \(\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}dx = \sqrt{\pi}\) と関係しているのかしら。

🟡 リナ: まさにそう! \(\Gamma(1/2) = \int_0^\infty t^{-1/2}e^{-t}dt\)\(t = x^2\) と置換すると \(\int_0^\infty \frac{2}{2x}\,x\,2x\,e^{-x^2}dx = 2\int_0^\infty e^{-x^2}dx = \sqrt{\pi}\) になるわ。重要な性質は再帰関係 \(\Gamma(z+1) = z\,\Gamma(z)\) よ。これを書き直すと:

\[ \Gamma(z) = \frac{\Gamma(z+1)}{z} \]

この式は右辺が定義されている限り左辺を定義するから、\(z > 0\) だった定義域を \(z \leq 0\)(ただし \(z \neq 0, -1, -2, \ldots\))にまで拡張できるの。\(z \to 0\) の極限を考えてみて。分子は \(\Gamma(0+1) = \Gamma(1) = 1\) で有限なのに、分母の \(z\)\(0\) に近づくから、\(\Gamma(z) \approx 1/z \to \infty\) と発散するの(正確には \(z = 0\)\(1/z\) 型の極を持つ)。この発散が後でループ積分の発散と結びつくわ。

🔵 カイ: でも一つ確認——\(\Gamma(z) = \Gamma(z+1)/z\)\(z \to 0\) にすると分母がゼロだから発散する、というのは分かります。でも \(z = -1\) とか \(z = -2\) でも同じように発散するんですか?

🟡 リナ: いい質問。\(\Gamma(-1) = \Gamma(0)/(-1)\) だけど、分子の \(\Gamma(0)\) がすでに無限大だから \(\Gamma(-1)\) も発散するの。同様に \(\Gamma(-2) = \Gamma(-1)/(-2)\) も発散する。つまり \(z = 0, -1, -2, \ldots\) のすべてで極を持つのよ。でもそれ以外の負の実数——たとえば \(z = -1/2\) とか——では有限の値を持つわ。ループ計算で重要なのは \(z = 0\) の極だけだから、今はそこだけ覚えておけば十分よ。

また、後で使う ベータ関数 (beta function) もここで紹介しておくわ。定義は \(B(a,b) = \int_0^1 t^{a-1}(1-t)^{b-1}\,dt\) で、ガンマ関数との関係は:

\[ B(a,b) = \frac{\Gamma(a)\Gamma(b)}{\Gamma(a+b)} \]

たとえば \(B(1,1) = \int_0^1 1\,dt = 1\)\(B(2,2) = \int_0^1 t(1-t)\,dt = \int_0^1 (t - t^2)\,dt = \frac{1}{2} - \frac{1}{3} = \frac{1}{6}\) ね。基本積分の導出で使うから覚えておいて。


実際の使い方

🟡 リナ: 具体例を見せるわね。先ほどの積分:

\[ I = \int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(k^2 - m_1^2 + i\varepsilon)((k-p)^2 - m_2^2 + i\varepsilon)} \]

(以降、\(i\varepsilon\) は各因子に付いているものとして省略するわ。)

\(A = k^2 - m_1^2\)\(B = (k-p)^2 - m_2^2\) として Feynman パラメータを導入:

\[ I = \int_0^1 dx \int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{[x(k^2 - m_1^2) + (1-x)((k-p)^2 - m_2^2)]^2} \tag{D.27} \]

🔵 カイ: 分母を展開するんですか?

🟡 リナ: そう。分母の中身を整理するわ:

\[ x(k^2 - m_1^2) + (1-x)((k-p)^2 - m_2^2) \]
\[ = xk^2 - xm_1^2 + (1-x)k^2 - 2(1-x)k\cdot p + (1-x)p^2 - (1-x)m_2^2 \]
\[ = [x + (1-x)]k^2 - 2(1-x)k\cdot p + (1-x)p^2 - xm_1^2 - (1-x)m_2^2 \]
\[ = k^2 - 2(1-x)k\cdot p + (1-x)p^2 - xm_1^2 - (1-x)m_2^2 \]

🟡 リナ: ここで 平方完成 するの。\(\ell = k - (1-x)p\) と変数変換すると \(k = \ell + (1-x)p\) だから、各項を代入してみて。

⚪ メイ: やってみるわ。\(k = \ell + (1-x)p\) を代入すると:

\[ k^2 = \ell^2 + 2(1-x)\ell\cdot p + (1-x)^2 p^2 \]
\[ -2(1-x)k\cdot p = -2(1-x)\ell\cdot p - 2(1-x)^2 p^2 \]

足し合わせると:

\[ k^2 - 2(1-x)k\cdot p = \ell^2 - (1-x)^2 p^2 \]

🟡 リナ: 完璧。だから分母は:

\[ \ell^2 - (1-x)^2 p^2 + (1-x)p^2 - xm_1^2 - (1-x)m_2^2 \]
\[ = \ell^2 + (1-x)p^2[1 - (1-x)] - xm_1^2 - (1-x)m_2^2 \]
\[ = \ell^2 + x(1-x)p^2 - xm_1^2 - (1-x)m_2^2 \]

\(\Delta \equiv xm_1^2 + (1-x)m_2^2 - x(1-x)p^2\) と定義すれば、\(-\Delta = x(1-x)p^2 - xm_1^2 - (1-x)m_2^2\) だから、直前の式は \(\ell^2 + x(1-x)p^2 - xm_1^2 - (1-x)m_2^2 = \ell^2 - \Delta\) とまとまるから:

\[ I = \int_0^1 dx \int \frac{d^4\ell}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell^2 - \Delta)^2} \tag{D.28} \]

🔵 カイ: おお! 分母が \(\ell\) だけの関数になった! \(\ell\) の奇数冪の項も消えてるんですか?

🟡 リナ: するどい。\(\ell\) の積分範囲は \(-\infty\) から \(+\infty\) の全空間で、分母は \(\ell^2\)(偶関数)だけに依存しているわ。だから分子に \(\ell^\mu\) のような奇数冪があると、\(\ell \to -\ell\) で被積分関数の符号が反転して、積分全体がゼロになるの。1 次元で \(\int_{-\infty}^{\infty} x\,f(x^2)\,dx = 0\) と同じ理屈ね。これが Feynman パラメータと変数変換の威力よ——任意のループ積分を、球対称な標準形に帰着させることができるの。

✅ 理解度チェック: Feynman パラメータ導入後の変数変換(平方完成)で、\(\ell^\mu\) の奇数冪の項が消えるのはなぜか。

答え

変数変換後の新しいループ運動量 \(\ell\) の積分範囲は全空間 \((-\infty, +\infty)\) であり、分母は \(\ell^2\)(偶関数)のみに依存する。分子に \(\ell^\mu\) の奇数冪がある場合、\(\ell \to -\ell\) の置換で被積分関数の符号が反転するため、対称性により積分はゼロになる。

理解度チェック:Feynman パラメータの目的を一言で述べよ

複数の伝播関数の積(分母の積)を一つの分母にまとめ、運動量の変数変換(平方完成)によって球対称な標準形の積分に帰着させること。

📝 練習問題:


Wick 回転

🟡 リナ: さて、式 (D.28) の形に帰着できたけれど、まだ問題があるわ。

🔵 カイ: どんな問題ですか?

🟡 リナ: \(\ell^2 = \ell_0^2 - \vec{\ell}^{\,2}\) は Minkowski 計量だから、\(\ell_0\) の積分経路上に特異点(極)が存在する可能性があるの。Minkowski 空間のまま積分を実行するのは数学的に厄介なのよ。

🔵 カイ: じゃあ、特異点を避ける方法があるんですか?

🟡 リナ: いい質問。そこで使うのが Wick (ウィック) 回転 というアイデアよ。Euclid (ユークリッド) 空間に移れば \(\ell_E^2 = \ell_0^2 + \vec{\ell}^{\,2}\) で常に正だから、特異点の問題がなくなるの。

⚪ メイ: なるほど、計量の符号が全部プラスになるから、分母がゼロにならないのね。


Wick 回転の手順

🟡 リナ: 具体的に見ていくわ。\(\ell_0\) の積分を複素平面で考えましょう。まず極の位置を確認するわね:

\[ \ell_0^2 - \vec{\ell}^{\,2} - \Delta + i\varepsilon = 0 \implies \ell_0 = \pm\sqrt{\vec{\ell}^{\,2} + \Delta - i\varepsilon} \]

🔵 カイ: 極が実軸からほんの少しずれてるんですね。

🟡 リナ: そう。もう少し詳しく見てみましょう。\(\varepsilon > 0\) が小さいとき、\(\sqrt{a - i\varepsilon}\) の値を求めたいわ。「複素数の平方根って何?」と思うかもしれないけれど、ここでは「2 乗すると \(a - i\varepsilon\) になる数」のことよ。そういう数は 2 つあるけれど(符号が逆の 2 つ)、実部が正になる方を選ぶ約束(主値)にするわね。\(a > 0\)\(\varepsilon\) が十分小さいとき、\(\sqrt{a - i\varepsilon} = \sqrt{a(1 - i\varepsilon/a)}\) と書けるわ。ここで Taylor 展開 \(\sqrt{1+x} \approx 1 + x/2\)\(|x| \ll 1\) のとき)を \(x = -i\varepsilon/a\) に対して使うと——この公式は \(x\) が複素数でも \(|x| \ll 1\) なら成り立つの——\(\sqrt{a}\,(1 - i\varepsilon/(2a)) = \sqrt{a} - i\varepsilon/(2\sqrt{a})\) と近似できるわ。\(a = \vec{\ell}^{\,2} + \Delta\) とすれば \(\sqrt{\vec{\ell}^{\,2} + \Delta - i\varepsilon} \approx \sqrt{\vec{\ell}^{\,2} + \Delta} - i\frac{\varepsilon}{2\sqrt{\vec{\ell}^{\,2} + \Delta}}\) だから、正の極 \(\ell_0 \approx +\sqrt{\vec{\ell}^{\,2}+\Delta}\) は虚部が負——つまり実軸のわずか(第 4 象限)に、負の極 \(\ell_0 \approx -\sqrt{\vec{\ell}^{\,2}+\Delta}\) は虚部が正——つまり実軸のわずか(第 2 象限)にずれているの。

🔵 カイ: つまり、\(\ell_0\) の複素平面で見ると、第 1 象限と第 3 象限には極がないんですね。

🟡 リナ: その通り! 図 D.1「Wick 回転の複素 \(\ell_0\) 平面」 を見てちょうだい。もとの Minkowski の積分経路は実軸上(図の青い線)で、Wick 回転後の Euclid の積分経路は虚軸上(図の赤い線)よ。正の実軸上の経路は第 1 象限を通って正の虚軸へ、負の実軸上の経路は第 3 象限を通って負の虚軸へ回転するの。回転が掃く領域(第 1・第 3 象限)に極がないから、途中で極を横切らずに経路を変形でき、積分値が保存されるのよ。

Wick回転の複素平面上の経路

図 D.1: Wick 回転の複素 \(\ell_0\) 平面。Minkowski の積分経路(青、実軸)を反時計回りに \(90°\) 回転して Euclid の積分経路(赤、虚軸)に移す。\(i\varepsilon\) 処方により極(×印)は第 2 象限(負の実部・正の虚部)と第 4 象限(正の実部・負の虚部)にあるため、第 1・第 3 象限を通る回転の際に極を横切らず、積分値が保存される。

ここで使うのが複素解析の Cauchy (コーシー) の定理 から導かれる「経路変形の原理」よ。簡単に言うと、「複素平面上で積分経路を連続的に変形しても、その間に特異点(極)を横切らなければ積分の値は変わらない」というもの。

なぜこれが成り立つか、直感的に説明するわね。複素平面上の関数 \(f(z)\) が、ある領域で \(1/z\) のような爆発(極)を持たず滑らかに振る舞っているとき——つまり極がない領域では——積分経路を自由に変形しても積分値が変わらないの。これを Cauchy の定理 と呼ぶわ(厳密な証明は複素解析の教科書に譲るけれど、ここでは「極がない領域では経路変形が自由にできる」という事実だけ使うわね)。

🔵 カイ: 水の流れとか何かに例えるとイメージしやすくなりませんか?

🟡 リナ: いい例えね。水の流れで例えるわ(あくまで比喩だから、厳密な対応ではないけれど直感をつかむには便利よ)。平らな水槽の中に、水が湧き出す穴(=極)がいくつかあるとして。水槽の中で A 地点から B 地点まで糸を張って、糸を横切る水の流量を測ることを考えて。もし糸の経路を変えても、その間に湧き出し穴がなければ、流量は変わらないでしょう? でも経路の間に穴があると、そこから湧き出す水の分だけ流量が変わってしまう。複素積分でもこれと似たことが起きるの——極を囲まない限り、経路をどう変形しても積分値は変わらないのよ。

⚪ メイ: 穴=極を避けて糸を動かす限り、流量=積分値が一定。分かりやすい比喩ね。

🟡 リナ: もう少し具体的に言うと、元の経路(実軸)と新しい経路(虚軸)を端点で結んで閉じた経路を作ったとき、その内部に極がなければ、閉じた経路に沿った積分はゼロになるの(Cauchy の積分定理)。ここで「端点で結ぶ」というのは、実軸の端(\(\pm R\))から虚軸の端(\(\pm iR\))まで四分円弧でつなぐイメージよ。\(R \to \infty\) のとき、被積分関数が十分速く減衰すれば円弧上の積分はゼロになるから、閉路積分=実軸の積分+虚軸の積分(逆向き)=0。つまり実軸の積分と虚軸の積分が等しいということよ。今の場合、分母が \(\ell_0\) の高い冪で増大するから、\(|\ell_0| \to \infty\) で被積分関数は \(1/|\ell_0|^{2n}\) のように急速にゼロに近づく——だから円弧上の寄与は確かに消えるの。厳密な証明は複素解析の教科書に譲るけれど、ここでは「極を避けて経路を回転できる」という事実を使うわね。

具体的には:

\[ \ell_0 \to i\ell_0^E \tag{D.29} \]

と置き換える。ここで \(\ell_0^E\) は実数。すると:

\[ \ell^2 = \ell_0^2 - \vec{\ell}^{\,2} = (i\ell_0^E)^2 - \vec{\ell}^{\,2} = -(\ell_0^E)^2 - \vec{\ell}^{\,2} = -\ell_E^2 \]

ここで \(\ell_E^2 = (\ell_0^E)^2 + \vec{\ell}^{\,2}\) は 4 次元 Euclid 空間のノルムの二乗。

⚪ メイ: 積分測度はどうなるの?

🟡 リナ: \(d\ell_0 = i\,d\ell_0^E\) だから:

\[ d^4\ell = d\ell_0\,d^3\vec{\ell} = i\,d\ell_0^E\,d^3\vec{\ell} = i\,d^4\ell_E \tag{D.30} \]

標準形への適用

🟡 リナ: 式 (D.28) に Wick 回転を適用してみましょう:

\[ \int \frac{d^4\ell}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell^2 - \Delta)^2} = \int \frac{i\,d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(-\ell_E^2 - \Delta)^2} \]

分母は \((-\ell_E^2 - \Delta)^2 = [-(\ell_E^2 + \Delta)]^2 = (-1)^2(\ell_E^2 + \Delta)^2 = (\ell_E^2 + \Delta)^2\) だから:

\[ = i\int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell_E^2 + \Delta)^2} \tag{D.31} \]

🔵 カイ: \((-1)^2 = 1\) で分母の符号が消えた! そして \(\ell_E^2 + \Delta\) は常に正だから、安心して積分できますね。

🟡 リナ: その通り。Euclid 空間では積分が球対称だから、4 次元球座標を使えるの。


4 次元球座標での積分

🟡 リナ: 4 次元 Euclid 空間で球対称な被積分関数 \(f(\ell_E^2)\) の積分は、3 次元での類推で理解できるわ。3 次元では \(\int d^3x\,f(r^2) = 4\pi\int_0^\infty r^2\,dr\,f(r^2)\) と書けるでしょう? 表面積 \(4\pi r^2\) を掛けて動径方向に積分するの。4 次元でも同じで、「4 次元球の表面積」\(\times\) \(\ell_E^3\,d\ell_E\) で積分する:

\[ \int d^4\ell_E\;f(\ell_E^2) = 2\pi^2\int_0^\infty d\ell_E\;\ell_E^3\;f(\ell_E^2) \tag{D.32} \]

ここで \(2\pi^2\) は 4 次元単位球の表面積(すぐ後で導出するわ)。\(\ell_E^3\) は体積要素の動径部分で、\(d\) 次元では一般に \(\ell_E^{d-1}\) になるの。なぜかというと、3 次元で \(d^3x = r^2\sin\theta\,dr\,d\theta\,d\phi\) と書けるように、\(d\) 次元でも体積要素は「動径方向 \(d\ell_E\)\(\times\)「角度方向の面積要素」に分解されるの。角度部分をすべて積分すると、半径 \(\ell_E\)\((d-1)\) 次元球面の表面積 \(S_d \cdot \ell_E^{d-1}\) が出てくる。だから体積要素は \(S_d \cdot \ell_E^{d-1}\,d\ell_E\) となるわ。4 次元なら \(\ell_E^3\,d\ell_E\) の部分ね。

🔵 カイ: 3 次元だと \(r^2\,dr\) で、4 次元だと \(\ell_E^3\,d\ell_E\)——つまり次元が 1 上がるごとに冪が 1 上がるんですね。

🟡 リナ: その通り。一般に \(d\) 次元では:

\[ \int d^d\ell_E\;f(\ell_E^2) = \frac{2\pi^{d/2}}{\Gamma(d/2)}\int_0^\infty d\ell_E\;\ell_E^{d-1}\;f(\ell_E^2) \tag{D.33} \]

⚪ メイ: 3 次元の場合で確認したいわ。\(d = 3\) を代入すると \(S_3 = 2\pi^{3/2}/\Gamma(3/2)\) になるけど、\(\Gamma(3/2)\) っていくつ?

🟡 リナ: さっきの再帰関係を使えばいいわ。\(\Gamma(3/2) = \frac{1}{2}\Gamma(1/2) = \sqrt{\pi}/2\)。だから \(S_3 = 2\pi^{3/2}/(\sqrt{\pi}/2) = 4\pi\)。おなじみの球の表面積ね。

⚪ メイ: なるほど、ちゃんと \(4\pi\) が出るのね。公式が整合していることが確認できたわ。

🔵 カイ: 4 次元の表面積が \(2\pi^2\) って、不思議ですね。3 次元が \(4\pi\) で 4 次元が \(2\pi^2\)……。

🟡 リナ: ここで \(S_d\) は「\(d\) 次元空間における単位球の表面積」——つまり \((d-1)\) 次元球面の面積——を表しているの。\(S_d = 2\pi^{d/2}/\Gamma(d/2)\) は、ガウス積分の \(d\) 次元版から導出できるわ。\(d = 4\) を代入すれば \(S_4 = 2\pi^2/\Gamma(2) = 2\pi^2\) で、式 (D.32) の係数と一致する。つまり式 (D.32) は式 (D.33) の \(d = 4\) の特殊ケースなのよ。

アイデアだけ言うと、\(d\) 次元のガウス積分 \(\int d^d x\,e^{-|\vec{x}|^2} = \pi^{d/2}\) を球座標で書き直すと \(S_d \int_0^\infty r^{d-1}e^{-r^2}dr\) になるわ。

🔵 カイ: ちょっと待ってください。なんで \(\int d^d x\,e^{-|\vec{x}|^2} = \pi^{d/2}\) なんですか?

🟡 リナ: いい質問。\(|\vec{x}|^2 = x_1^2 + x_2^2 + \cdots + x_d^2\) だから、\(e^{-|\vec{x}|^2} = e^{-x_1^2}\cdot e^{-x_2^2}\cdots e^{-x_d^2}\) と各軸方向の指数関数の積に分解できるの。積分も \(\int d^d x = \int dx_1 \int dx_2 \cdots \int dx_d\) と分解できるから、全体が \(d\) 個の独立な 1 次元ガウス積分 \(\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x_i^2}dx_i = \sqrt{\pi}\) の積になるわ(この \(\sqrt{\pi}\) という値はAppendix Cの式 (C.1) で \(a = 2\) とした場合に対応するわ)。だから \(\sqrt{\pi}^{\,d} = \pi^{d/2}\) ね。Appendix Cの式 (C.1) で \(a = 2\) とすれば \(\int e^{-q^2}dq = \sqrt{\pi}\) が得られるから、それを \(d\) 回掛けた形よ。

⚪ メイ: 各軸が独立だから、\(d\) 次元のガウス積分が 1 次元の \(d\) 乗になるのね。きれいだわ。

🔵 カイ: あ、指数の中身が各変数の二乗の和だから、掛け算に分解できるんですね。動径積分の \(\int_0^\infty r^{d-1}e^{-r^2}dr\) って、このままだとガンマ関数の形に見えないんですけど……。

🟡 リナ: いい着眼点ね。\(t = r^2\) と置換するの。すると \(r = \sqrt{t}\) だから \(dr = dt/(2\sqrt{t})\)\(r^{d-1} = t^{(d-1)/2}\)。掛け合わせると \(r^{d-1}dr = t^{(d-1)/2} \cdot dt/(2\sqrt{t}) = \frac{1}{2}t^{d/2-1}dt\) となるわ。だから \(\int_0^\infty r^{d-1}e^{-r^2}dr = \frac{1}{2}\int_0^\infty t^{d/2-1}e^{-t}dt = \Gamma(d/2)/2\) とガンマ関数の定義そのものになるの。

これで両方の結果を等しいとおけるわ:

\[ \pi^{d/2} = S_d \cdot \frac{\Gamma(d/2)}{2} \]

\(S_d\) について解くと \(S_d = 2\pi^{d/2}/\Gamma(d/2)\) が出るわ。\(d = 4\) なら \(S_4 = 2\pi^2/\Gamma(2) = 2\pi^2\) ね。これで導出は完了よ。

⚪ メイ: つまり \(d\) 次元の表面積 \(S_d = 2\pi^{d/2}/\Gamma(d/2)\) という一つの公式で、\(d = 3\)\(4\pi\)\(d = 4\)\(2\pi^2\) も統一的に出てくるのね。梨奈さんが言った次元正則化で \(d\) を非整数にする場合にも、この公式がそのまま使えるということね。


基本的な運動量積分公式

🟡 リナ: Wick 回転と球座標を使えば、ループ計算で現れる標準的な積分を評価できるわ。結果をまとめておくわね。


Euclid 空間の基本積分

🟡 リナ: \(\Delta > 0\) として、4 次元 Euclid 空間での基本積分:

\[ \int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} = \frac{1}{(4\pi)^2}\;\frac{\Gamma(n-2)}{\Gamma(n)}\;\frac{1}{\Delta^{n-2}} \tag{D.34} \]

🔵 カイ: これはどうやって導くんですか?

🟡 リナ: 式 (D.32) を使って:

\[ \int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} = \frac{2\pi^2}{(2\pi)^4}\int_0^\infty d\ell_E\;\frac{\ell_E^3}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} \]

\(u = \ell_E^2\) と置換すると \(du = 2\ell_E\,d\ell_E\)\(\ell_E^3\,d\ell_E = \frac{1}{2}u\,du\) だから:

\[ = \frac{1}{16\pi^2}\int_0^\infty du\;\frac{u}{(u + \Delta)^n} \]

(ここで前の係数を整理するわ。\(\frac{2\pi^2}{(2\pi)^4} = \frac{2\pi^2}{16\pi^4} = \frac{2}{16\pi^2} = \frac{1}{8\pi^2}\)。これに \(u\) 置換で出た \(\frac{1}{2}\) を掛けると \(\frac{1}{8\pi^2} \times \frac{1}{2} = \frac{1}{16\pi^2} = \frac{1}{(4\pi)^2}\) になったわ。)

🔵 カイ: なるほど、\(1/(4\pi)^2\) の係数はここから来てるんですね。ループ計算でよく見かける因子だ。

🟡 リナ: そう、「ループ因子 \(1/(4\pi)^2\)」と呼ばれることもあるわ。この積分をさっき紹介したベータ関数の形に持ち込みたいから、積分範囲を \([0,\infty)\) から \([0,1]\) に写す置換を探すの。\(t = u/(u + \Delta)\) とすれば、\(u = 0\)\(t = 0\)\(u \to \infty\)\(t \to 1\) となるからちょうどいいわ。\(u = \Delta t/(1-t)\)\(du = \Delta/(1-t)^2\,dt\)\(u + \Delta = \Delta/(1-t)\) よ。被積分関数を書き換えると:

\[ \frac{u}{(u+\Delta)^n} = \frac{\Delta t/(1-t)}{[\Delta/(1-t)]^n} = \frac{\Delta t/(1-t)}{\Delta^n/(1-t)^n} = \frac{t\,(1-t)^{n-1}}{\Delta^{n-1}} \]

これに \(du = \Delta/(1-t)^2\,dt\) を掛けると:

\[ \frac{u\,du}{(u+\Delta)^n} = \frac{t\,(1-t)^{n-1}}{\Delta^{n-1}}\cdot\frac{\Delta}{(1-t)^2}\,dt = \frac{t\,(1-t)^{n-3}}{\Delta^{n-2}}\,dt \]

\(u: 0 \to \infty\) のとき \(t: 0 \to 1\) だから:

\[ \int_0^\infty \frac{u\,du}{(u+\Delta)^n} = \Delta^{2-n}\int_0^1 t\,(1-t)^{n-3}\,dt \]

⚪ メイ: あ、これは \(B(2, n-2) = \int_0^1 t^{2-1}(1-t)^{(n-2)-1}dt\) の形そのものね。

🟡 リナ: その通り。これは先ほど紹介した ベータ関数 \(B(a,b) = \int_0^1 t^{a-1}(1-t)^{b-1}dt = \frac{\Gamma(a)\Gamma(b)}{\Gamma(a+b)}\) の形ね。ここでは \(a = 2\)\(b = n-2\) だから:

\[ \int_0^1 t\,(1-t)^{n-3}\,dt = B(2,\,n-2) = \frac{\Gamma(2)\Gamma(n-2)}{\Gamma(n)} \]

これを代入すると:

\[ = \frac{1}{(4\pi)^2}\cdot\frac{1}{\Delta^{n-2}}\cdot\frac{\Gamma(2)\Gamma(n-2)}{\Gamma(n)} = \frac{1}{(4\pi)^2}\;\frac{\Gamma(n-2)}{\Gamma(n)}\;\frac{1}{\Delta^{n-2}} \]

\(\Gamma(2) = 1! = 1\) だから、これで式 (D.34) が得られたわ。

⚪ メイ: \(n = 2\) の場合、\(\Gamma(0)\) が発散するわね。これって積分が無限大になるということ?

🟡 リナ: するどい! まさにそう。\(n = 2\) のとき \(\Gamma(n-2) = \Gamma(0) = \infty\) で、積分が対数的に発散する。これが第 13 章で見た「ループの中に現れる無限」——紫外発散の正体よ。次元正則化ではこの発散を \(d = 4 - 2\epsilon\) とすることで \(1/\epsilon\) の極として捉えるの。詳しくは第 14 章を見てね。

✅ 理解度チェック: Euclid 空間の基本積分公式 (D.34) で \(n = 2\) のとき発散が生じるのはなぜか。数学的にはどの関数の性質に起因するか。

答え

\(n = 2\) のとき公式に現れる \(\Gamma(n-2) = \Gamma(0)\) が発散するためである。ガンマ関数は \(z = 0\) に極を持ち、\(\Gamma(0) = \infty\) となる。物理的にはこれはループ積分の紫外発散(対数発散)に対応しており、次元正則化では \(d = 4 - 2\epsilon\) として \(1/\epsilon\) の極として捉えられる。

📝 練習問題:


\(n = 2\) の場合(対数発散)

🟡 リナ: \(n = 2\) は最も重要なケースだから、別の方法でも発散の様子を見ておくわ。式 (D.34) では \(\Gamma(0) = \infty\) が現れて公式がそのまま使えなかったわね。そこで、積分の上限を有限の値 \(\Lambda^2\) で打ち切る——つまり「運動量の大きさが \(\Lambda\) を超える寄与を無視する」という近似をするの。この \(\Lambda\)紫外カットオフ と呼ぶわ。物理的には「理論が有効な最大エネルギースケール」に対応するイメージね。

🔵 カイ: 「ここまでしか信用しない」というエネルギーの上限を手で入れるんですね。

🟡 リナ: そういうこと。被積分関数の分子 \(u\)\((u+\Delta) - \Delta\) と書き換えるの——これは単に \(\Delta\) を足して引いただけの恒等的な変形よ。こうすると分母の \((u+\Delta)\) と約分できる形が現れるの:

\[ \frac{u}{(u+\Delta)^2} = \frac{(u+\Delta) - \Delta}{(u+\Delta)^2} = \frac{1}{u+\Delta} - \frac{\Delta}{(u+\Delta)^2} \]

各項を積分するわ。第 1 項は \(\int_0^{\Lambda^2} \frac{du}{u+\Delta} = [\ln(u+\Delta)]_0^{\Lambda^2} = \ln(\Lambda^2+\Delta) - \ln\Delta = \ln\frac{\Lambda^2+\Delta}{\Delta}\)。第 2 項は \(\int_0^{\Lambda^2} \frac{\Delta\,du}{(u+\Delta)^2} = \Delta\left[-\frac{1}{u+\Delta}\right]_0^{\Lambda^2} = \Delta\left(-\frac{1}{\Lambda^2+\Delta} + \frac{1}{\Delta}\right) = 1 - \frac{\Delta}{\Lambda^2+\Delta} = \frac{\Lambda^2}{\Lambda^2+\Delta}\)。合わせると:

\[ \int_0^{\Lambda^2} du\;\frac{u}{(u + \Delta)^2} = \ln\frac{\Lambda^2 + \Delta}{\Delta} - \frac{\Lambda^2}{\Lambda^2 + \Delta} \tag{D.35} \]

\(\Lambda \gg \sqrt{\Delta}\) のとき:

\[ \approx \ln\frac{\Lambda^2}{\Delta} - 1 + O(\Delta/\Lambda^2) \tag{D.36} \]

🔵 カイ: あ、\(\ln\Lambda^2\) が出てきた。カットオフを大きくすると対数的に発散するんですね。

🟡 リナ: 注意してね——式 (D.34) の導出で見たように、完全なループ積分にはこの前に \(\frac{1}{(4\pi)^2}\) の係数が掛かるわ。つまり式 (D.28) で \(n = 2\) とした場合の Wick 回転後の結果は \(\frac{i}{(4\pi)^2}\left(\ln\frac{\Lambda^2}{\Delta} - 1 + \cdots\right)\) となるの。

🔵 カイ: カットオフ \(\Lambda\) に対して対数的に発散するんですね。\(\Lambda^2\) とかの冪で発散するよりはマシだけど、やっぱり無限大……。

🟡 リナ: そう。でもこの対数発散は繰り込みで処理できる。第 14 章で学んだ通りね。


分子に \(\ell\) がある場合

🟡 リナ: 分子にループ運動量 \(\ell_E^\mu\)\(\ell_E^\mu \ell_E^\nu\) が入る場合の公式も重要よ:

奇数冪:

\[ \int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{\ell_E^\mu}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} = 0 \tag{D.37} \]

対称性から明らか。

偶数冪:

\[ \int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{\ell_E^\mu \ell_E^\nu}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} = \frac{\delta^{\mu\nu}}{4}\int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{\ell_E^2}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} \tag{D.38} \]

🔵 カイ: なんで \(\delta^{\mu\nu}/4\) が出てくるんですか?

🟡 リナ: Euclid 空間では積分が 4 次元回転に対して対称だから、結果は回転不変なテンソルでなければならないの。2 階の対称テンソルで回転不変なものは \(\delta^{\mu\nu}\) だけ。だから \(\int \ell_E^\mu \ell_E^\nu (\cdots) = C\,\delta^{\mu\nu}\) と書けるわ。係数 \(C\) を決めるには、両辺で \(\mu = \nu\) として和を取ればいいの。左辺は \(\int \ell_E^2 (\cdots)\) になり、右辺は \(C \cdot \delta^{\mu\mu} = 4C\)(4 次元だから \(\delta^{\mu\mu} = 4\))。比較すると \(C = \frac{1}{4}\int \ell_E^2 (\cdots)\) ね。

⚪ メイ: つまり「4」は次元の数ね。4 次元だから 4 で割る。もし 3 次元の積分なら \(\delta^{\mu\nu}/3\) になるはず。

🟡 リナ: その通り。一般に \(d\) 次元で同じ議論をすれば \(\delta^{\mu\nu}/d\) になるわ。次元正則化で \(d = 4 - 2\epsilon\) とするときに使う事実ね。では式 (D.38) の右辺を計算してみましょう。分子の \(\ell_E^2\)\((\ell_E^2 + \Delta) - \Delta\) と書くと:

\[ \frac{\delta^{\mu\nu}}{4}\int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{\ell_E^2}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} = \frac{\delta^{\mu\nu}}{4}\left[\int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell_E^2 + \Delta)^{n-1}} - \Delta\int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell_E^2 + \Delta)^n}\right] \]

式 (D.34) を適用すると:

\[ = \frac{\delta^{\mu\nu}}{4}\cdot\frac{1}{(4\pi)^2}\left[\frac{\Gamma(n-3)}{\Gamma(n-1)}\;\frac{1}{\Delta^{n-3}} - \frac{\Gamma(n-2)}{\Gamma(n)}\;\frac{1}{\Delta^{n-3}}\right] \]

🔵 カイ: 分子に \(\ell_E^2\) があっても、\(\Delta\) を足し引きするだけで基本公式に帰着させられるんですね。さっきの \(n = 2\) のカットオフ計算と同じテクニックだ。

⚪ メイ: 梨奈さんが教えてくれた再帰関係 \(\Gamma(z+1) = z\,\Gamma(z)\) を繰り返し使えばいいのね。\(\Gamma(n-1) = (n-2)\Gamma(n-2) = (n-2)(n-3)\Gamma(n-3)\) だから \(\frac{\Gamma(n-3)}{\Gamma(n-1)} = \frac{1}{(n-2)(n-3)}\)。同様に \(\Gamma(n) = (n-1)(n-2)\Gamma(n-2)\) だから \(\frac{\Gamma(n-2)}{\Gamma(n)} = \frac{1}{(n-1)(n-2)}\)

🟡 リナ: いいわね。差を取ると(通分して):

\[ \frac{1}{(n-2)(n-3)} - \frac{1}{(n-1)(n-2)} = \frac{1}{n-2}\left(\frac{1}{n-3} - \frac{1}{n-1}\right) = \frac{1}{n-2}\cdot\frac{(n-1)-(n-3)}{(n-3)(n-1)} = \frac{2}{(n-1)(n-2)(n-3)} \]

🔵 カイ: 再帰関係を 3 回使うと \(\Gamma(n) = (n-1)(n-2)(n-3)\Gamma(n-3)\) だから、分母がそのまま \(\Gamma(n)/\Gamma(n-3)\) になるんですね。

🟡 リナ: その通り。\(\frac{2}{(n-1)(n-2)(n-3)} = \frac{2\,\Gamma(n-3)}{\Gamma(n)}\) ね。前の \(\delta^{\mu\nu}/4\) と合わせると \(\frac{\delta^{\mu\nu}}{4} \times \frac{2\,\Gamma(n-3)}{\Gamma(n)} = \frac{\delta^{\mu\nu}}{2}\cdot\frac{\Gamma(n-3)}{\Gamma(n)}\) だから:

\[ \int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{\ell_E^\mu \ell_E^\nu}{(\ell_E^2 + \Delta)^n} = \frac{\delta^{\mu\nu}}{2}\cdot\frac{1}{(4\pi)^2}\;\frac{\Gamma(n-3)}{\Gamma(n)}\;\frac{1}{\Delta^{n-3}} \tag{D.39} \]

Minkowski 空間に戻した結果

🟡 リナ: 実際の計算では Wick 回転前の Minkowski 空間の結果が欲しいことが多いわ。式 (D.31) の \(i\) 因子を含めると:

\[ \int \frac{d^4\ell}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell^2 - \Delta + i\varepsilon)^n} = \frac{i\,(-1)^n}{(4\pi)^2}\;\frac{\Gamma(n-2)}{\Gamma(n)}\;\frac{1}{\Delta^{n-2}} \tag{D.40} \]

🔵 カイ: \((-1)^n\) はどこから来るんですか?

🟡 リナ: Minkowski 空間の積分を Euclid 空間に移すとき、2 つの効果が重なるの:

  1. \(d^4\ell = i\,d^4\ell_E\)(式 (D.30))から \(i\) 因子が 1 つ出る
  2. \(\ell^2 - \Delta \to -\ell_E^2 - \Delta = -(\ell_E^2 + \Delta)\)

⚪ メイ: つまり積分測度から \(i\) が出て、分母からは \((-1)^n\) が出るのね。

🟡 リナ: その通り。分母の \(n\) 乗は \((\ell^2 - \Delta + i\varepsilon)^n = [-(\ell_E^2 + \Delta - i\varepsilon)]^n = (-1)^n(\ell_E^2 + \Delta - i\varepsilon)^n\) と変わるわ。Euclid 空間では \(\ell_E^2 + \Delta > 0\) だから分母がゼロになる心配はなく、\(\varepsilon\) はもう不要——安全に \(\varepsilon \to 0^+\) として:

\[ \int \frac{d^4\ell}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell^2-\Delta+i\varepsilon)^n} = \frac{i}{(-1)^n}\int \frac{d^4\ell_E}{(2\pi)^4}\;\frac{1}{(\ell_E^2+\Delta)^n} \]

ここで \(n\) は正の整数だから \((-1)^n = \pm 1\) よ。\(\pm 1\) の逆数は自分自身だから \(1/(-1)^n = (-1)^n\) ね(確認:\((-1)^n \times (-1)^n = (-1)^{2n} = 1\))。したがって \(\frac{i}{(-1)^n} = i \cdot (-1)^n\) となり、全体の係数は \(i\,(-1)^n\) になるわ。式 (D.31) は \(n = 2\) の場合で \((-1)^2 = 1\) だから \(i\) だけが残っていたけれど、一般の \(n\) ではこの \((-1)^n\) が残るのよ。

⚪ メイ: 確認:\(n = 2\) なら \((-1)^2 = 1\) だから係数は \(i/(4\pi)^2 \cdot \Gamma(0)/\Gamma(2) \cdot 1/\Delta^0\) の形になるけど、\(\Gamma(0)\) が発散するからこの公式はそのままでは使えない——これが紫外発散ね。\(n = 3\) なら \((-1)^3 = -1\)\(-i/(4\pi)^2 \cdot \Gamma(1)/\Gamma(3) \cdot 1/\Delta = -i/(32\pi^2\Delta)\)。こちらは有限。

🟡 リナ: 正しいわ。これで式 (D.40) が確認できたわね。

理解度チェック:Wick 回転の本質的な効果を 2 つ述べよ
  1. Minkowski 計量 \(\ell^2 = \ell_0^2 - \vec{\ell}^{\,2}\) を Euclid 計量 \(-\ell_E^2 = -(\ell_0^E)^2 - \vec{\ell}^{\,2}\) に変え、被積分関数の極を回避する。
  2. 積分が 4 次元球対称になり、角度積分が実行可能になる。

まとめ:道具箱の一覧

🟡 リナ: 最後に、この Appendix の主要公式を一覧にしておくわ。ループ計算で迷ったらここに戻ってきてね。

表 D.3: 付録D主要公式の一覧

番号 公式 用途
(D.3)–(D.4) \([\phi] = 1\), \([\psi] = 3/2\) 場と結合定数の次元決定
(D.7) \(\eta^{\mu\nu} = (+,-,-,-)\) 計量の規約
(D.21)–(D.22) Fourier 変換の規約 \(2\pi\) 因子の追跡
(D.24) Feynman パラメータ(2 因子) 分母の統合
(D.25) Feynman パラメータ(\(n\)因子) 多重伝播関数の統合
(D.26) べきが異なる場合 不等冪の分母統合
(D.29)–(D.30) \(\ell_0 \to i\ell_0^E\), \(d^4\ell = i\,d^4\ell_E\) Wick 回転
(D.34) Euclid 空間の基本積分 スカラー型ループ積分
(D.37)–(D.39) 分子に \(\ell\) がある場合 テンソル型ループ積分
(D.40) Minkowski 空間の最終結果 物理的な振幅の計算

🔵 カイ: これだけあれば、第 13〜14 章のくりこみの計算が具体的にできそうですね。でも一つ気になるのは、2 ループ以上になったら Feynman パラメータが何個も出てきて、最後の \(x\) 積分がすごく複雑になりませんか?

🟡 リナ: いい疑問ね。実際、2 ループ以上では Feynman パラメータの多重積分が残って、解析的に実行できないことも多いわ。そういう場合は数値積分や、特殊な関数(多重対数関数など)を使うことになるの。でも運動量積分を実行するまでの手順——分母をまとめて、平方完成して、Wick 回転して、球座標で積分する——は同じよ。

🔵 カイ: 手順自体は同じで最後の Feynman パラメータ積分が難しくなるだけ、というのは分かりました。でも 2 ループだとループ運動量が 2 つありますよね。Wick 回転も 2 回やるんですか? それとも一気に 2 つの時間成分を同時に回転させるんですか?

🟡 リナ: そう、各ループ運動量 \(k_1\), \(k_2\) それぞれについて \(k_{1,0} \to ik_{1,0}^E\)\(k_{2,0} \to ik_{2,0}^E\) と Wick 回転するの。一方のループ運動量を先に積分して(このとき 1 ループの公式が使える)、残ったもう一方についてもう一度同じ手順を踏む、という流れね。

🔵 カイ: 入れ子構造になってるんですね。外側のループを固定して内側を先に片付ける——プログラミングの二重ループみたいだ。でも内側のループを積分した結果が外側のループ運動量に依存してたら、外側の積分がまた複雑になりませんか? 結局どこかで手に負えなくなったりしないんですか?

🟡 リナ: いい心配ね。実際、内側のループ積分の結果は外側のループ運動量や Feynman パラメータの関数として残るから、外側の積分は一般に 1 ループより複雑になるわ。解析的に閉じた形で書けないことも多い。でも手順自体——Feynman パラメータ → 平方完成 → Wick 回転 → 球座標——は同じだから、原理的には計算可能よ。

🔵 カイ: なるほど。じゃあ逆に言えば、この付録の道具だけで原理的にはどんなループ次数でも計算の枠組みは立てられるけど、実際に答えを閉じた形で書き下せるかどうかは別問題ってことですね。

⚪ メイ: 整理すると、ループ計算の骨格は「①Feynman パラメータで分母統合 → ②平方完成で標準形 → ③Wick 回転で Euclid 化 → ④球座標で積分実行」の 4 ステップね。2 ループ以上では各ループ運動量についてこの 4 ステップを繰り返し適用し、最後に Feynman パラメータの多重積分が残る。

🔵 カイ: 4 ステップ、覚えました。でも一つだけ——この道具箱は「積分が収束する」場合の話ですよね。発散する場合(\(n = 2\) とか)は、結局カットオフや次元正則化で別の処理が必要になる。道具箱だけでは完結しないってことか。

🟡 リナ: その通り。この付録は「積分を標準形に持ち込む」ところまでの道具箱で、発散の処理——つまり正則化と繰り込み——は第 14 章の仕事よ。でもこの 4 ステップがなければ、そもそも「何が発散しているのか」を特定することすらできないの。だから土台として不可欠なのよ。

🔵 カイ: 道具箱で「何が発散しているか」を見極めて、その処理は第 14 章に任せる——役割分担がはっきりしていて分かりやすいです。


参考文献

  • Quantum Field Theory and the Standard Model (M. Schwartz) Appendix B「Regularization」
  • An Introduction to Quantum Field Theory (Peskin & Schroeder) 付録 A「Some Useful Formulas」
  • Quantum Field Theory (Srednicki) 第 14 章「Loop Integrals in Vacuum」