第 4 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 同時刻交換関係の値の読み取り
- B-2. 生成・消滅演算子の交換関係の計算
- B-3. 消滅演算子の真空への作用
- B-4. Fourier 変換の直交性の確認
- B-5. \(\omega_{\mathbf{p}}\) の具体的な計算
- B-6. 場の演算子のエルミート性の確認
- B-7. 共役運動量密度のモード展開の導出
- B-8. 離散→連続の対応の確認
Medium(標準)
- M-1. 同時刻交換関係からの生成・消滅演算子の交換関係の導出
- M-2. Hamiltonian の生成・消滅演算子による表現
- M-3. 零点エネルギーと正規順序
- M-4. 複素スカラー場の量子化と粒子・反粒子
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 同時刻交換関係の値の読み取り¶
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解法の方針¶
同時刻交換関係 \([\hat{\phi}(t, \mathbf{x}),\, \hat{\pi}(t, \mathbf{y})] = i\,\delta^{(3)}(\mathbf{x} - \mathbf{y})\) に具体的な値を代入し、デルタ関数の基本性質を用いる。
(a) \(\mathbf{x} = (1,2,3)\), \(\mathbf{y} = (4,5,6)\) のとき
\(\mathbf{x} \neq \mathbf{y}\) なので \(\delta^{(3)}(\mathbf{x} - \mathbf{y}) = \delta^{(3)}((-3,-3,-3)) = 0\)。
物理的意味:異なる空間点の場と運動量密度は互いに可換であり、同時に確定した値を持てる。
(b) 空間全体で \(\mathbf{y}\) について積分
デルタ関数の基本性質 \(\int d^3y\, f(\mathbf{y})\,\delta^{(3)}(\mathbf{x} - \mathbf{y}) = f(\mathbf{x})\) において、\(f(\mathbf{y}) = 1\)(定数)とすれば
よって
(c) \([\hat{\pi}(t, \mathbf{x}),\, \hat{\phi}(t, \mathbf{y})]\) を表す
交換子の反対称性 \([A, B] = -[B, A]\) より
最後の等号では \(\delta^{(3)}(\mathbf{y} - \mathbf{x}) = \delta^{(3)}(\mathbf{x} - \mathbf{y})\)(デルタ関数の偶関数性)を用いた。
検算¶
(b) の結果は量子力学の \([\hat{q}, \hat{p}] = i\) の場の理論版に対応する。場の全空間にわたる積分が離散的な添字の和に対応し、\(\delta^{(3)}\) を積分すると Kronecker デルタの和 \(\sum_j \delta_{ij} = 1\) に相当する。整合的である。
B-2. 生成・消滅演算子の交換関係の計算¶
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解法の方針¶
交換子の公式 \([A, BC] = [A, B]C + B[A, C]\) を繰り返し使う。
(a) \([\hat{a}_{\mathbf{p}},\, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger \hat{a}_{\mathbf{q}}]\)
\(A = \hat{a}_{\mathbf{p}}\), \(B = \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger\), \(C = \hat{a}_{\mathbf{q}}\) として公式を適用する:
\([\hat{a}_{\mathbf{p}},\, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = \delta^{(3)}(\mathbf{p} - \mathbf{q})\) および \([\hat{a}_{\mathbf{p}},\, \hat{a}_{\mathbf{q}}] = 0\) を代入して
(b) \([\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger \hat{a}_{\mathbf{p}},\, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger]\)
\([AB, C] = A[B, C] + [A, C]B\) を用いる(\(A = \hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger\), \(B = \hat{a}_{\mathbf{p}}\), \(C = \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger\)):
\([\hat{a}_{\mathbf{p}},\, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = \delta^{(3)}(\mathbf{p} - \mathbf{q})\) および \([\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger,\, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = 0\) を代入して
(c) \([\hat{a}_{\mathbf{p}},\, (\hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger)^2]\)
\([A, BC] = [A, B]C + B[A, C]\) で \(B = C = \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger\) とする:
検算¶
(a) は量子力学の \([\hat{a}, \hat{a}^\dagger \hat{a}] = \hat{a}\) に対応し、(b) は \([\hat{a}^\dagger \hat{a}, \hat{a}^\dagger] = \hat{a}^\dagger\) に対応する。デルタ関数が Kronecker デルタの連続版であることを考えれば、離散的な場合の結果と整合している。(c) は \([\hat{a}, (\hat{a}^\dagger)^2] = 2\hat{a}^\dagger\) の連続版であり、一般に \([\hat{a}, (\hat{a}^\dagger)^n] = n(\hat{a}^\dagger)^{n-1}\) の \(n=2\) の場合に対応する。
B-3. 消滅演算子の真空への作用¶
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解法の方針¶
真空の定義 \(\hat{a}_{\mathbf{p}}|0\rangle = 0\) と交換関係を組み合わせる。
(a) \(\hat{a}_{\mathbf{p}} |\mathbf{q}\rangle\)
交換関係を用いて \(\hat{a}_{\mathbf{p}}\) を \(\hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger\) の右に移す:
これを \(|0\rangle\) に作用させると、\(\hat{a}_{\mathbf{p}}|0\rangle = 0\) より
(b) \(\langle \mathbf{p} | \mathbf{q} \rangle\)
\(\langle \mathbf{p}| = (|\mathbf{p}\rangle)^\dagger = (\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger |0\rangle)^\dagger = \langle 0| \hat{a}_{\mathbf{p}}\) であるから
(a) の結果を使って
真空の規格化 \(\langle 0|0\rangle = 1\) より
(c) \(\hat{a}_{\mathbf{p}} \hat{a}_{\mathbf{q}} |0\rangle\)
\([\hat{a}_{\mathbf{p}}, \hat{a}_{\mathbf{q}}] = 0\) より \(\hat{a}_{\mathbf{p}}\) と \(\hat{a}_{\mathbf{q}}\) の順序は交換可能。いずれにせよ \(\hat{a}_{\mathbf{q}}|0\rangle = 0\) だから
検算¶
(b) の結果は、連続的な運動量ラベルを持つ 1 粒子状態の正規直交性を表す。量子力学の位置固有状態 \(\langle \mathbf{x}|\mathbf{y}\rangle = \delta^{(3)}(\mathbf{x}-\mathbf{y})\) と同じ構造であり、整合的。(c) は「真空から粒子を 2 回消滅させることはできない」という物理的に自然な結果。
B-4. Fourier 変換の直交性の確認¶
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解法の方針¶
基本公式 \(\int \frac{d^3x}{(2\pi)^3}\, e^{i(\mathbf{p}-\mathbf{q})\cdot\mathbf{x}} = \delta^{(3)}(\mathbf{p} - \mathbf{q})\) を適切に読み替える。
(a) \(\displaystyle \int \frac{d^3x}{(2\pi)^3}\, e^{i(\mathbf{p}+\mathbf{q})\cdot\mathbf{x}}\)
指数部を \(e^{i(\mathbf{p}-(-\mathbf{q}))\cdot\mathbf{x}}\) と書き直せば、基本公式で \(\mathbf{q} \to -\mathbf{q}\) とした場合に対応する:
(b) \(\displaystyle \int \frac{d^3x}{(2\pi)^3}\, e^{i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}}\, e^{-i\mathbf{q}\cdot\mathbf{x}}\, e^{i\mathbf{k}\cdot\mathbf{x}}\)
指数法則で指数部をまとめる:
基本公式を適用して
(c) \(\displaystyle \int d^3x\, \int \frac{d^3p}{(2\pi)^3}\, e^{i\mathbf{p}\cdot(\mathbf{x}-\mathbf{y})} f(\mathbf{x})\)
まず \(\mathbf{p}\) 積分を先に実行する。デルタ関数の Fourier 表示
を用いると
検算¶
(c) は Fourier 変換とその逆変換を連続して施すと元の関数に戻ることを表しており、Fourier 変換の基本定理そのものである。
B-5. \(\omega_{\mathbf{p}}\) の具体的な計算¶
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解法の方針¶
\(\omega_{\mathbf{p}} = \sqrt{|\mathbf{p}|^2 + m^2}\) に各条件を代入する。
(a) \(\mathbf{p} = \mathbf{0}\)
これは静止質量エネルギー \(E = mc^2\)(自然単位系で \(E = m\))に対応する。
(b) \(|\mathbf{p}| = m\)
(c) \(|\mathbf{p}| \gg m\)(超相対論的極限)
\(m/|\mathbf{p}| \ll 1\) で Taylor 展開 \(\sqrt{1+\epsilon} \approx 1 + \frac{\epsilon}{2}\) を用いて
最低次では
(d) \(m = 0\)
これは光子のような質量ゼロの粒子の分散関係 \(E = |p|\)(\(E = pc\))に対応する。
検算¶
(c) の超相対論的極限と (d) の質量ゼロの結果が一致しており、整合的。(a) は非相対論的極限 \(|\mathbf{p}| \to 0\) で静止エネルギーを再現している。
B-6. 場の演算子のエルミート性の確認¶
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解法の方針¶
\(\hat{\phi}^\dagger(\mathbf{x})\) を計算し、積分変数の置換 \(\mathbf{p} \to -\mathbf{p}\) と \(\omega_{\mathbf{p}} = \omega_{-\mathbf{p}}\) を用いて \(\hat{\phi}(\mathbf{x})\) に一致することを示す。
計算の詳細¶
\(\hat{\phi}(\mathbf{x})\) のエルミート共役を取る。積分や c-数(\(\omega_{\mathbf{p}}\) や \((2\pi)^{3/2}\) など)はそのまま、演算子と複素数のエルミート共役を取る:
ここで \((\hat{a}_{\mathbf{p}})^\dagger = \hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger\)、\((e^{i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}})^* = e^{-i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}}\)(\(\mathbf{p}, \mathbf{x}\) は実数)を用いた。
2 つの項の順序を入れ替えて書き直すと
これは式 (4.11) の \(\hat{\phi}(\mathbf{x})\) そのものである。
補足: 上の計算では項の順序を入れ替えただけで結果が得られた。より一般的には、積分変数を \(\mathbf{p} \to -\mathbf{p}\) に置換する方法もある。その場合、\(d^3p \to d^3p\)(ヤコビアンは \(|-1|^3 = 1\))、\(\omega_{\mathbf{p}} = \omega_{-\mathbf{p}}\)(\(\omega_{\mathbf{p}}\) は \(|\mathbf{p}|^2\) にのみ依存)を使えば同じ結果が得られる。
検算¶
実スカラー場は \(\hat{\phi}^\dagger = \hat{\phi}\) を満たすべきであり、これはモード展開が \(\hat{a}_{\mathbf{p}}\) と \(\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger\) の両方を含む構造から自然に保証される。量子力学の調和振動子で \(\hat{q} = \frac{1}{\sqrt{2\omega}}(\hat{a} + \hat{a}^\dagger)\) がエルミートであることの場の理論版。
B-7. 共役運動量密度のモード展開の導出¶
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解法の方針¶
\(\hat{\phi}(t, \mathbf{x})\) の時間微分 \(\hat{\pi}(t, \mathbf{x}) = \partial_0 \hat{\phi}(t, \mathbf{x})\) を計算する。
計算の詳細¶
時間依存性を含むモード展開は
時間微分を実行する。\(\hat{a}_{\mathbf{p}}\) と \(\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger\) は時間に依存しない(Schrödinger 描像の演算子)ので、微分は指数関数にのみ作用する:
よって
\(\omega_{\mathbf{p}}\) を \(\frac{1}{\sqrt{2\omega_{\mathbf{p}}}}\) と合わせて整理する:
したがって
\(t = 0\) とすると
これは式 (4.12) に一致する。
検算¶
\(\hat{\pi}(\mathbf{x})\) のエルミート性を確認する。\(\hat{\pi}^\dagger\) を取ると \(\hat{a}_{\mathbf{p}} \leftrightarrow \hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger\)、\(e^{i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}} \leftrightarrow e^{-i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}}\)、\((-i)^* = +i\) となる。全体の符号を確認すると \(\hat{\pi}^\dagger = \hat{\pi}\) が成り立ち、共役運動量密度もエルミートであることが確認できる。
B-8. 離散→連続の対応の確認¶
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解法の方針¶
体積 \(V = L^3\) の箱で離散化された運動量を考え、連続極限 \(L \to \infty\) での対応関係を導く。
(a) \(\displaystyle\sum_{\mathbf{n}} \to \int \frac{V\, d^3p}{(2\pi)^3}\) の導出
離散化された運動量は \(\mathbf{p} = \frac{2\pi}{L}\mathbf{n}\)(\(\mathbf{n} \in \mathbb{Z}^3\))であり、隣り合う運動量の間隔は各方向で
3 次元での運動量空間の 1 セルの体積は
離散和を Riemann 和と見なすと
\(L \to \infty\) で \(\Delta p \to 0\) となり、Riemann 和は積分に収束する:
よって
(b) \(\hat{a}_{\mathbf{p}}\) と \(\hat{a}_{\mathbf{n}}\) のスケーリング関係
離散的な交換関係は
連続極限では Kronecker デルタとデルタ関数の間に以下の対応がある。\(\mathbf{p} = \frac{2\pi}{L}\mathbf{n}\), \(\mathbf{q} = \frac{2\pi}{L}\mathbf{m}\) として
デルタ関数の離散近似 \(\delta^{(3)}(\mathbf{p} - \mathbf{q}) \approx \frac{\delta_{\mathbf{n},\mathbf{m}}}{(\Delta p)^3} = \frac{V}{(2\pi)^3}\,\delta_{\mathbf{n},\mathbf{m}}\) を用いると
連続極限の交換関係 \([\hat{a}_{\mathbf{p}}, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = \delta^{(3)}(\mathbf{p} - \mathbf{q})\) を再現するために、\(\hat{a}_{\mathbf{p}} = c\,\hat{a}_{\mathbf{n}}\) とおくと
これが \(\delta^{(3)}(\mathbf{p} - \mathbf{q})\) に等しくなるためには \(|c|^2 = \frac{V}{(2\pi)^3}\) が必要。よって
検算¶
次元解析で確認する。\(\hat{a}_{\mathbf{n}}\) は無次元(\([\hat{a}_{\mathbf{n}}, \hat{a}_{\mathbf{m}}^\dagger] = \delta_{\mathbf{n},\mathbf{m}}\) は無次元)。一方 \([\hat{a}_{\mathbf{p}}, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = \delta^{(3)}(\mathbf{p}-\mathbf{q})\) はデルタ関数の次元 \([\text{momentum}]^{-3}\) を持つので、\(\hat{a}_{\mathbf{p}}\) は \([\text{momentum}]^{-3/2}\) の次元を持つ。\(\sqrt{V/(2\pi)^3}\) は \([\text{length}]^{3/2} = [\text{momentum}]^{-3/2}\) の次元を持ち、整合的。
Medium(標準)¶
M-1. 同時刻交換関係からの生成・消滅演算子の交換関係の導出¶
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解法の方針¶
\([\hat{\phi}(\mathbf{x}), \hat{\phi}(\mathbf{y})] = 0\) にモード展開 (4.11) を代入し、Fourier 変換の直交性を用いて \([\hat{a}_{\mathbf{p}}, \hat{a}_{\mathbf{q}}] = 0\) を導く。
計算の詳細¶
\(t = 0\) でのモード展開を代入する(\(t\) は共通なので省略):
\([\hat{\phi}(\mathbf{x}), \hat{\phi}(\mathbf{y})]\) を展開する。積分変数をそれぞれ \(\mathbf{p}\), \(\mathbf{q}\) として
ここで既知の交換関係 \([\hat{a}_{\mathbf{p}}, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = \delta^{(3)}(\mathbf{p}-\mathbf{q})\) を第 2 項に代入し、第 3 項には \([\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger, \hat{a}_{\mathbf{q}}] = -[\hat{a}_{\mathbf{q}}, \hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger] = -\delta^{(3)}(\mathbf{q}-\mathbf{p})\) を代入する。
第 2 項の寄与: \(\delta^{(3)}(\mathbf{p}-\mathbf{q})\) で \(\mathbf{q}\) 積分を実行すると \(\mathbf{q} = \mathbf{p}\) に固定される:
第 3 項の寄与: 同様に
第 3 項で \(\mathbf{p} \to -\mathbf{p}\) と置換すると(\(\omega_{\mathbf{p}} = \omega_{-\mathbf{p}}\), \(d^3p \to d^3p\)):
よって第 2 項と第 3 項はちょうどキャンセルする。
残るのは第 1 項と第 4 項のみ:
ここで \([\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = ([\hat{a}_{\mathbf{q}}, \hat{a}_{\mathbf{p}}])^\dagger\) であることに注意する。\([\hat{a}_{\mathbf{p}}, \hat{a}_{\mathbf{q}}] = f(\mathbf{p}, \mathbf{q})\) とおくと、\([\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger, \hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger] = f^*(\mathbf{q}, \mathbf{p})\)。
上式が任意の \(\mathbf{x}, \mathbf{y}\) に対して成り立つためには、Fourier 変換の完全性から、被積分関数の Fourier 係数がゼロでなければならない。
第 1 項に着目する。\(e^{i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}} e^{i\mathbf{q}\cdot\mathbf{y}}\) は \(\mathbf{x}\) と \(\mathbf{y}\) に関して独立な Fourier モードを形成する。この項がすべての \(\mathbf{x}, \mathbf{y}\) に対してゼロになるためには
\(\omega_{\mathbf{p}}, \omega_{\mathbf{q}} > 0\) なので
これのエルミート共役を取れば
検算¶
同様の計算を \([\hat{\pi}(\mathbf{x}), \hat{\pi}(\mathbf{y})] = 0\) に対して行っても、同じ条件 \([\hat{a}_{\mathbf{p}}, \hat{a}_{\mathbf{q}}] = 0\) が得られる。\(\hat{\pi}\) のモード展開では \(\sqrt{\omega_{\mathbf{p}}/2}\) の因子が入るが、\(\omega_{\mathbf{p}} > 0\) なので結論は変わらない。
M-2. Hamiltonian の生成・消滅演算子による表現¶
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解法の方針¶
Hamiltonian の 3 つの項 \(\hat{\pi}^2\), \((\nabla\hat{\phi})^2\), \(m^2\hat{\phi}^2\) をそれぞれモード展開で書き下し、\(\mathbf{x}\) 積分で Fourier の直交性を使い、最後に合わせる。
計算の詳細¶
\(t = 0\) でのモード展開を用いる。簡潔のため以下の略記を導入する:
ステップ 1: \(\int d^3x\, \frac{1}{2}\hat{\pi}^2\) の計算¶
\((-i)^2 = -1\) に注意。展開すると 4 つの項が出る:
\(\mathbf{x}\) で積分すると、Fourier の直交性 (4.15) により: - \(e^{i(\mathbf{p}+\mathbf{q})\cdot\mathbf{x}}\) の項 → \(\delta^{(3)}(\mathbf{p}+\mathbf{q})\)(\(\mathbf{q} = -\mathbf{p}\) に固定) - \(e^{i(\mathbf{p}-\mathbf{q})\cdot\mathbf{x}}\) の項 → \(\delta^{(3)}(\mathbf{p}-\mathbf{q})\)(\(\mathbf{q} = \mathbf{p}\) に固定)
具体的に \(\mathbf{q}\) 積分を実行する。\(\delta^{(3)}(\mathbf{p}+\mathbf{q})\) の項では \(\mathbf{q} \to -\mathbf{p}\), \(\omega_q \to \omega_p\):
ここで \((2\pi)^3\) は \(\delta\) 関数の \((2\pi)^{3/2} \times (2\pi)^{3/2}\) の規格化と打ち消し合い、\(\int d^3p\) のみが残る(正確には \(\int \frac{d^3p\, d^3q}{(2\pi)^3} \cdot (2\pi)^3 \delta^{(3)}(\cdots) = \int d^3p\))。
整理すると
ステップ 2: \(\int d^3x\, \frac{1}{2}(\nabla\hat{\phi})^2\) の計算¶
\(\nabla\) が \(e^{i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}}\) に作用すると \(i\mathbf{p}\, e^{i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}}\) を与える。よって
\((\nabla\hat{\phi})^2\) を展開し、\(\mathbf{x}\) 積分を実行する。\(\hat{\pi}^2\) の計算と同じ構造だが、\(\sqrt{\omega_p \omega_q}/2\) の代わりに \(\frac{(-\mathbf{p}\cdot\mathbf{q})}{2\sqrt{\omega_p \omega_q}}\) が現れ、\((i)^2 = -1\) の符号も入る。
\(\delta^{(3)}(\mathbf{p}+\mathbf{q})\) の項では \(\mathbf{q} = -\mathbf{p}\) なので \(\mathbf{p}\cdot\mathbf{q} = -|\mathbf{p}|^2\)。 \(\delta^{(3)}(\mathbf{p}-\mathbf{q})\) の項では \(\mathbf{q} = \mathbf{p}\) なので \(\mathbf{p}\cdot\mathbf{q} = |\mathbf{p}|^2\)。
ステップ 3: \(\int d^3x\, \frac{1}{2}m^2\hat{\phi}^2\) の計算¶
\(\hat{\phi}^2\) の展開は \((\nabla\hat{\phi})^2\) と同じ構造で、\(\mathbf{p}\) の因子がなく \(1/(2\omega_p)\) の因子が入る。
ステップ 4: 3 つの寄与を合わせる¶
\(H = (\text{I}) + (\text{II}) + (\text{III})\)
\(\hat{a}_p \hat{a}_{-p}\) と \(\hat{a}_p^\dagger \hat{a}_{-p}^\dagger\) の項の係数:
(I) からの寄与: \(-\frac{1}{4}\omega_p\)
(II) からの寄与: \(+\frac{1}{4}\frac{|\mathbf{p}|^2}{\omega_p}\)
(III) からの寄与: \(+\frac{1}{4}\frac{m^2}{\omega_p}\)
合計:
ここで \(\omega_p^2 = |\mathbf{p}|^2 + m^2\) を用いた。\(\hat{a}_p \hat{a}_{-p}\) 型の項は完全にキャンセルする。
\(\hat{a}_p \hat{a}_p^\dagger + \hat{a}_p^\dagger \hat{a}_p\) の項の係数:
(I) からの寄与: \(+\frac{1}{4}\omega_p\)
(II) からの寄与: \(+\frac{1}{4}\frac{|\mathbf{p}|^2}{\omega_p}\)
(III) からの寄与: \(+\frac{1}{4}\frac{m^2}{\omega_p}\)
合計:
よって
ステップ 5: 交換関係を用いた整理¶
交換関係 (4.13) \([\hat{a}_p, \hat{a}_p^\dagger] = \delta^{(3)}(\mathbf{0})\)(\(\mathbf{p} = \mathbf{q}\) の場合)を用いて
代入すると
ここで \((2\pi)^3\) の因子について補足する。本文の規格化では \(\int d^3p\) は \(\int \frac{d^3p}{(2\pi)^3}\) と書くべきかもしれないが、モード展開 (4.11) の規格化因子 \((2\pi)^{3/2}\) を用いた場合、\(\mathbf{x}\) 積分で \((2\pi)^3\) が吸収され、最終結果は
検算¶
- 次元解析: \(\omega_p\) はエネルギーの次元、\(\hat{a}_p^\dagger \hat{a}_p\) は \([\text{momentum}]^{-3}\) の次元(\(\delta^{(3)}(\mathbf{0})\) と同じ)、\(\int \frac{d^3p}{(2\pi)^3}\) は \([\text{momentum}]^3\) の次元。全体でエネルギーの次元になり、整合的。
- \(\hat{a}_p \hat{a}_{-p}\) 型の項のキャンセル: \(\omega_p^2 = |\mathbf{p}|^2 + m^2\) という分散関係が本質的に効いている。これは Klein-Gordon 方程式の帰結であり、物理的に正しい。
- 特殊ケース: 1 モードの場合に量子力学の調和振動子 \(H = \omega(a^\dagger a + 1/2)\) を再現する。
M-3. 零点エネルギーと正規順序¶
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(a) 真空エネルギーの発散¶
S2 の結果を用いて真空期待値を計算する。
\(\hat{a}_{\mathbf{p}}|0\rangle = 0\) より \(\langle 0|\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger \hat{a}_{\mathbf{p}}|0\rangle = 0\)。よって
この式は二重の発散を含む:
- 赤外発散(体積発散): \(\delta^{(3)}(\mathbf{0})\) は形式的に無限大。箱の体積 \(V = L^3\) で正則化すると \(\delta^{(3)}(\mathbf{0}) = V/(2\pi)^3\) となる。これは零点エネルギーが空間全体に広がっていることを反映しており、エネルギー密度としては
- 紫外発散: \(\omega_{\mathbf{p}} = \sqrt{|\mathbf{p}|^2 + m^2}\) は \(|\mathbf{p}| \to \infty\) で \(|\mathbf{p}|\) のように増大するため、\(\int d^3p\, \omega_{\mathbf{p}}\) は紫外で発散する。球座標で \(\int_0^\Lambda dp\, p^2 \cdot p \sim \Lambda^4\) のように発散する。
物理的問題:真空のエネルギー密度が無限大になってしまう。各モードの零点エネルギー \(\frac{1}{2}\omega_{\mathbf{p}}\) を全モードにわたって足し上げた結果であり、これは無限個の調和振動子の零点エネルギーの総和に対応する。
(b) 正規順序による真空エネルギーの除去¶
正規順序 \(:\!\hat{O}\!:\) は、すべての生成演算子 \(\hat{a}^\dagger\) を消滅演算子 \(\hat{a}\) の左に並べ替える操作である。このとき交換関係から生じる c-数の項は捨てる。
真空期待値を計算すると
\(\hat{a}_{\mathbf{p}}|0\rangle = 0\) より
よって
正規順序は「真空のエネルギーをゼロに再定義する」操作に対応する。エネルギーの絶対値は物理的に観測不可能であり(重力を除けば)、エネルギーの差のみが物理的意味を持つため、この操作は正当化される。
(c) Casimir 効果と零点エネルギーの差¶
零点エネルギーの絶対値は正規順序で除去できるが、境界条件が異なる場合の零点エネルギーの差は物理的に観測可能である。
Casimir 効果の説明:
2 枚の平行な導体板を距離 \(L\) で配置すると、板の間では電磁場(あるいはスカラー場)の許されるモードが離散化される(境界条件により特定の波長のみが許される)。一方、板の外側では連続的なモードが許される。
- 板の間の零点エネルギー: 離散モードの和 \(E_{\text{in}}(L) = \sum_n \frac{1}{2}\omega_n\)
- 板がない場合の零点エネルギー: 連続モードの積分 \(E_{\text{free}}\)
両者の差 \(\Delta E = E_{\text{in}}(L) - E_{\text{free}}\) は有限な値を持ち、\(L\) に依存する。この差から導かれる力
は引力として観測される。これが Casimir 効果であり、1948 年に Casimir によって予言され、1997 年に Lamoreaux によって実験的に確認された。
要点:発散する零点エネルギーの絶対値は物理的に意味を持たないが、境界条件の変化に伴う零点エネルギーの差は有限であり、実験で測定可能な力を生む。
M-4. 複素スカラー場の量子化と粒子・反粒子¶
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(a) 共役運動量密度の導出¶
Lagrangian 密度は
\(\phi\) と \(\phi^*\) を独立な場として扱う。
\(\phi\) に対する共役運動量密度:
\(\mathcal{L}\) の中で \(\partial_0 \phi\) を含む項は \((\partial_0 \phi^*)(\partial_0 \phi)\)(\(\mu = 0\) の項、計量 \(\eta^{00} = +1\))。\(\phi^*\) は \(\phi\) と独立なので
\(\phi^*\) に対する共役運動量密度:
(b) \(\hat{\phi}^\dagger(\mathbf{x})\) の表式¶
与えられたモード展開は
エルミート共役を取る。\((\hat{a}_{\mathbf{p}})^\dagger = \hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger\), \((\hat{b}_{\mathbf{p}}^\dagger)^\dagger = \hat{b}_{\mathbf{p}}\), \((e^{i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}})^* = e^{-i\mathbf{p}\cdot\mathbf{x}}\):
注意: 実スカラー場と異なり、\(\hat{\phi}^\dagger \neq \hat{\phi}\) である。\(\hat{\phi}\) には \(\hat{a}\) と \(\hat{b}^\dagger\) が、\(\hat{\phi}^\dagger\) には \(\hat{a}^\dagger\) と \(\hat{b}\) が現れる。
(c) 粒子と反粒子の物理的な違い¶
\(U(1)\) 対称性 \(\phi \to e^{i\alpha}\phi\), \(\phi^* \to e^{-i\alpha}\phi^*\) に対応する Noether 電荷は
量子化後、モード展開を代入して計算すると(S2 と同様の手順で \(\mathbf{x}\) 積分を実行し、Fourier の直交性を使う)
この結果から:
- \(\hat{a}_{\mathbf{p}}^\dagger\) が生成する粒子は電荷 \(Q = +1\) を持つ(\(\hat{a}^\dagger \hat{a}\) の項の符号が \(+\))
- \(\hat{b}_{\mathbf{p}}^\dagger\) が生成する粒子は電荷 \(Q = -1\) を持つ(\(\hat{b}^\dagger \hat{b}\) の項の符号が \(-\))
両者は同じ質量 \(m\)(\(\omega_{\mathbf{p}} = \sqrt{|\mathbf{p}|^2 + m^2}\) は \(\hat{a}\), \(\hat{b}\) に共通)を持つが、\(U(1)\) 電荷の符号が反対である。
これが反粒子の起源である。複素スカラー場を量子化すると、\(U(1)\) 対称性の存在により、2 種類の生成演算子が必然的に現れ、粒子と反粒子が自動的に出現する。実スカラー場(\(\hat{\phi}^\dagger = \hat{\phi}\))では \(\hat{a} = \hat{b}\) となり、粒子と反粒子が同一(自己共役粒子)になる。
検算¶
電荷の保存を確認する。\(:\!Q\!:\) は \(:\!H\!:\) と交換する(\([:\!Q\!:, :\!H\!:] = 0\))ことが、\([\hat{a}_p^\dagger \hat{a}_p, \hat{a}_q^\dagger \hat{a}_q] = 0\) と \([\hat{b}_p^\dagger \hat{b}_p, \hat{b}_q^\dagger \hat{b}_q] = 0\) から確認できる。これは Noether の定理の帰結(\(U(1)\) 対称性 → 電荷保存)と整合的。
Advanced(発展)¶
A-1. 1 次元 Casimir 効果の定量的計算¶
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(a) 許される運動量モード¶
Dirichlet 境界条件 \(\hat{\phi}(0) = \hat{\phi}(L) = 0\) を課す。1 次元の場のモード展開は
の形を取る(\(\cos\) は \(x = 0\) でゼロにならないので不適)。
\(x = 0\) での境界条件:\(\sin(0) = 0\) ✓(自動的に満たされる)
\(x = L\) での境界条件:\(\sin(p_n L) = 0\) より
\(n = 0\) は \(\sin(0) = 0\) で自明な解(場がゼロ)なので除外。\(n < 0\) は \(\sin(-p_n x) = -\sin(p_n x)\) で \(n > 0\) と同じモードを表すので独立ではない。
(b) ゼータ関数正則化による零点エネルギー¶
\(m = 0\) なので \(\omega_n = |p_n| = \frac{n\pi}{L}\)。零点エネルギーは
\(\sum_{n=1}^{\infty} n\) は明らかに発散する。ゼータ関数正則化を適用する。
手順: 発散する和を一般化して
と置き換え、\(s = -1\) への解析接続を用いる。Riemann ゼータ関数の \(s = -1\) での値は
よって
(c) Casimir 力¶
\(F < 0\) なので、力は壁の間隔 \(L\) を縮める方向、すなわち引力である。
(d) 正則化の物理的正当化¶
発散部分を捨てて有限部分だけを取り出すことの正当化は、以下のように理解できる。
物理的に測定可能なのは、境界条件の有無による零点エネルギーの差である。
壁がある場合の零点エネルギー \(E_{\text{in}}(L)\) と、壁がない場合(自由空間)の零点エネルギー \(E_{\text{free}}(L)\)(同じ長さ \(L\) の領域で計算)の差
を考える。両者とも紫外発散を含むが、高エネルギー(短波長)のモードは壁の存在にほとんど影響されない(波長が壁の間隔 \(L\) に比べて十分短いモードは、壁があってもなくても同じ振る舞いをする)。したがって、発散部分はキャンセルし、有限な差のみが残る。
指数関数的カットオフによる明示的確認:
カットオフ \(e^{-\epsilon n}\)(\(\epsilon > 0\))を導入して
を計算する。\(\sum_{n=1}^{\infty} n\, e^{-\epsilon n} = \frac{e^{-\epsilon}}{(1-e^{-\epsilon})^2}\) を \(\epsilon \to 0\) で展開すると
\(1/\epsilon^2\) の発散項は壁の有無によらない(自由空間でも同じ発散が現れる)ため、差を取ると消える。残る有限部分 \(-1/12\) がゼータ関数正則化の結果と一致する。
このように、ゼータ関数正則化は「物理的に無関係な発散部分を自動的に除去し、境界条件に依存する有限部分のみを抽出する」巧妙な手法である。
検算¶
- 次元解析: 自然単位系で \(E \sim 1/L\) は正しい(1+1 次元では \([E] = [\text{length}]^{-1}\))。
- \(L \to \infty\) の極限: \(E(L) \to 0\), \(F \to 0\)。壁が無限に離れると Casimir 効果は消える。物理的に正しい。
- 符号: 1 次元 Dirichlet 境界条件では引力。3+1 次元の電磁場の Casimir 効果(平行導体板)でも引力であり、定性的に整合的。
A-2. 場の交換関係の Lorentz 不変性と因果律¶
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(a) 空間的間隔での同時刻フレームの存在¶
2 つの時空点 \(x^\mu\) と \(y^\mu\) の間隔が空間的であるとする:
これは \(|\Delta t| < |\Delta \mathbf{x}|\)(\(\Delta t = x^0 - y^0\), \(\Delta \mathbf{x} = \mathbf{x} - \mathbf{y}\))を意味する。
\(\Delta \mathbf{x}\) の方向を \(x^1\) 軸に取る(空間回転で常に可能)。すると問題は 1+1 次元に帰着し、\(\Delta t\) と \(\Delta x^1\) のみを考えればよい。
\(x^1\) 方向への速度 \(v\) の Lorentz ブーストを施すと、時間差は
\(\Delta t' = 0\) とするには
空間的間隔の条件 \(|\Delta t| < |\Delta x^1|\) より
これは物理的に許される Lorentz ブースト速度(光速未満)である。
(b) 微小因果律の証明¶
(i) 空間的に離れた 2 点 \(x, y\)(\((x-y)^2 < 0\))に対して、(a) で示したように、適切な Lorentz 変換で同時刻にできるフレーム \(S'\) が存在する。
(ii) フレーム \(S'\) では \(x'^0 = y'^0\) なので、同時刻交換関係 (4.5) より
(iii) スカラー場の交換関係 \([\hat{\phi}(x), \hat{\phi}(y)]\) は Lorentz スカラーである。これは以下のように理解できる:
スカラー場は Lorentz 変換 \(x \to x' = \Lambda x\) に対して \(\hat{\phi}'(x') = \hat{\phi}(x)\) と変換する。したがって
つまり交換関係の値は座標系によらない。
(iv) フレーム \(S'\) で \([\hat{\phi}(x'), \hat{\phi}(y')] = 0\) であるから、任意のフレームでも
微小因果律 (microcausality) の物理的意味:
空間的に離れた 2 点での場の演算子は可換である。これは、空間的に離れた 2 つの領域での測定が互いに影響を及ぼさないことを意味する。光速を超えた信号の伝達は不可能であり、特殊相対論の因果律が量子場の理論でも保たれている。
(c) フェルミ統計による量子化と微小因果律の破れ¶
Klein-Gordon 場をフェルミ統計(反交換関係)で量子化しようとすると、交換関係の代わりに
を課す。ここで \(\{A, B\} = AB + BA\) は反交換子。
実スカラー場の反交換関係 \(\{\hat{\phi}(\mathbf{x}), \hat{\phi}(\mathbf{y})\}\) を計算する。モード展開を代入すると、(b) の証明と同様の計算で、交換子 \([\cdot, \cdot]\) の代わりに反交換子 \(\{\cdot, \cdot\}\) が現れる。
\(\{\hat{a}_p, \hat{a}_q\} = 0\), \(\{\hat{a}_p^\dagger, \hat{a}_q^\dagger\} = 0\) より第 1 項と第 4 項は消える。残る第 2 項と第 3 項は
(反交換子は対称 \(\{A, B\} = \{B, A\}\) なので \(\{\hat{a}_p^\dagger, \hat{a}_q\} = \{\hat{a}_q, \hat{a}_p^\dagger\} = \delta^{(3)}(\mathbf{q}-\mathbf{p}) = \delta^{(3)}(\mathbf{p}-\mathbf{q})\))
\(\mathbf{q}\) 積分を \(\delta\) 関数で実行すると
重要な違い: ボース統計(交換子)の場合、S1 で見たように \([\hat{\phi}(\mathbf{x}), \hat{\phi}(\mathbf{y})]\) では第 2 項と第 3 項が引き算になり、\(e^{i\mathbf{p}\cdot(\mathbf{x}-\mathbf{y})} - e^{-i\mathbf{p}\cdot(\mathbf{x}-\mathbf{y})}\) が現れて、\(\mathbf{p} \to -\mathbf{p}\) の置換でキャンセルした。しかしフェルミ統計(反交換子)では足し算になり、\(e^{i\mathbf{p}\cdot(\mathbf{x}-\mathbf{y})} + e^{-i\mathbf{p}\cdot(\mathbf{x}-\mathbf{y})}\) が現れる。
この積分は \(\mathbf{x} \neq \mathbf{y}\) でも一般にゼロにならない。実際、\(\mathbf{r} = \mathbf{x} - \mathbf{y}\) として球座標で計算すると
これは \(|\mathbf{r}| \neq 0\) で有限の値を持つ(\(m = 0\) の場合は \(\frac{1}{2\pi^2 |\mathbf{r}|^2}\) に比例する)。
したがって、空間的に離れた 2 点(\(\mathbf{x} \neq \mathbf{y}\), 同時刻)でも
であり、微小因果律が破れる。
スピン-統計定理との関連:
この結果は、整数スピンの場はボース統計で量子化しなければならないことを示している。逆に、半整数スピンの場(Dirac 場など)をボース統計で量子化しようとすると、エネルギーが下に有界でなくなる(Hamiltonian が正定値にならない)という別の問題が生じる。
これらを合わせると: - 整数スピン → ボース統計(交換関係):微小因果律が保たれる - 半整数スピン → フェルミ統計(反交換関係):エネルギーが正定値になる
これがスピン-統計定理の核心であり、相対論的量子場の理論の基本的な帰結の一つである。
検算¶
- (a) の結果は、時間的間隔(\((x-y)^2 > 0\))では \(|v| > 1\) となり、Lorentz ブーストで同時刻にできないことと整合的。光円錐上(\((x-y)^2 = 0\))では \(|v| = 1\) で境界的。
- (b) の微小因果律は、Lorentz 不変な関数 \(\Delta(x-y) = [\hat{\phi}(x), \hat{\phi}(y)]\) が空間的領域でゼロであることを述べている。この関数は Pauli-Jordan 関数と呼ばれ、\(\Delta(x-y) = \frac{1}{(2\pi)^3}\int d^3p\, \frac{1}{2\omega_p}(e^{-ip\cdot(x-y)} - e^{ip\cdot(x-y)})\) と表される。被積分関数が \(p \to -p\) で符号を変える(奇関数)ことから、空間的領域でのゼロが保証される。
- (c) の反交換子の場合は被積分関数が偶関数になるため、キャンセルが起こらず、ゼロにならない。この対比が本質的。
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