第 4 章 練習問題¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 複素数の絶対値と複素共役
- B-2. 複素数の掛け算と位相
- B-3. 極形式への変換
- B-4. 極形式での掛け算
- B-5. 干渉項の計算
- B-6. 複素共役と干渉項
- B-7. Dirac 記法と第 3 のルール
- B-8. 振幅の足し算と確率
Medium(標準)
- M-1. 干渉項の一般公式の導出
- M-2. 等振幅・等間隔 \(N\) スリットの干渉パターン
- M-3. 「観測する」と干渉が消える:数式による説明
- M-4. 2 枚の壁を通る振幅の計算
- M-5. 位相差と経路差の関係
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 複素数の絶対値と複素共役¶
次の複素数について、それぞれ (a) 複素共役 \(z^*\)、(b) 絶対値 \(|z|\)、(c) \(z \cdot z^*\) を求めよ。
- \(z = 1 + i\)
- \(z = 3 - 4i\)
- \(z = -2i\)
- \(z = 5\)
ヒント
\(z = a + bi\) のとき、\(z^* = a - bi\)、\(|z| = \sqrt{a^2 + b^2}\)、\(z \cdot z^* = a^2 + b^2 = |z|^2\) を使う。
→ 解答を見る
B-2. 複素数の掛け算と位相¶
次の積を \(a + bi\) の形に計算せよ。
- \((1 + i)(1 - i)\)
- \((2 + 3i)(1 + 2i)\)
- \(i \cdot (3 + 4i)\)
- \((1 + i)^2\)
ヒント
普通に展開して \(i^2 = -1\) を代入する。式 (4.2) の要領で計算すればよい。
→ 解答を見る
B-3. 極形式への変換¶
次の複素数を極形式 \(z = r(\cos\theta + i\sin\theta)\) で表せ。\(r\) と \(\theta\)(\(0 \leq \theta < 2\pi\))をそれぞれ求めよ。
- \(z = 1 + i\)
- \(z = -\sqrt{3} + i\)
- \(z = -2\)
- \(z = 3i\)
ヒント
\(r = |z| = \sqrt{a^2 + b^2}\)、\(\theta = \arctan(b/a)\)(ただし象限に注意)。複素平面上に点を描いて角度を確認するとよい。
→ 解答を見る
B-4. 極形式での掛け算¶
\(z_1 = 2(\cos\frac{\pi}{6} + i\sin\frac{\pi}{6})\)、\(z_2 = 3(\cos\frac{\pi}{3} + i\sin\frac{\pi}{3})\) のとき、
- 積 \(z_1 \cdot z_2\) を極形式で表せ。
- 積 \(z_1 \cdot z_2\) を \(a + bi\) の形に直せ。
ヒント
式 (4.8) を使う:絶対値は掛け算、偏角は足し算。\(\frac{\pi}{6} + \frac{\pi}{3} = \frac{\pi}{2}\) に注意。
→ 解答を見る
B-5. 干渉項の計算¶
2 つの確率振幅 \(\phi_1 = \frac{1}{\sqrt{2}}\)、\(\phi_2 = \frac{1}{\sqrt{2}} e^{i\theta}\) が与えられている。
- \(|\phi_1 + \phi_2|^2\) を \(\theta\) を用いて表せ。
- \(\theta = 0, \, \pi/2, \, \pi\) のそれぞれについて確率 \(P\) を計算せよ。
- 古典的に確率を足した場合 \(P_{\text{cl}} = |\phi_1|^2 + |\phi_2|^2\) はいくらか。
ヒント
式 (4.14) を使う。\(|\phi_1| = |\phi_2| = \frac{1}{\sqrt{2}}\) であり、位相差 \(\delta = \theta\) である。\(P = |\phi_1|^2 + |\phi_2|^2 + 2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta\) を代入計算する。
→ 解答を見る
B-6. 複素共役と干渉項¶
\(\phi_1 = 2e^{i\pi/4}\)、\(\phi_2 = 3e^{-i\pi/4}\) のとき、
- \(\phi_1 \phi_2^*\) を計算せよ。
- 干渉項 \(\phi_1 \phi_2^* + \phi_1^* \phi_2\) を計算し、実数であることを確認せよ。
- 確率 \(P = |\phi_1 + \phi_2|^2\) を求めよ。
ヒント
\(\phi_2^* = 3e^{+i\pi/4}\) であるから、\(\phi_1 \phi_2^* = 2 \cdot 3 \cdot e^{i\pi/4} \cdot e^{i\pi/4} = 6e^{i\pi/2}\)。式 (4.13) を利用してもよい。
→ 解答を見る
B-7. Dirac 記法と第 3 のルール¶
粒子が源 \(s\) からスリット \(k\)(\(k = 1, 2, 3\))を経由して検出器位置 \(x\) に到達する。各段階の振幅が以下で与えられているとき、スリット \(k\) 経由の経路全体の振幅 \(\phi_k = \langle x | k \rangle \langle k | s \rangle\) をそれぞれ計算せよ。
| \(k\) | \(\langle k \mid s \rangle\) | \(\langle x \mid k \rangle\) |
|---|---|---|
| 1 | \(\frac{1}{\sqrt{3}}\) | \(e^{i\pi/3}\) |
| 2 | \(\frac{1}{\sqrt{3}}\) | \(e^{i\pi}\) |
| 3 | \(\frac{1}{\sqrt{3}}\) | \(e^{i5\pi/3}\) |
ヒント
第 3 のルール(掛け算)を使う。\(\phi_k = \langle x | k \rangle \cdot \langle k | s \rangle\)。複素数と実数の掛け算は、実数が絶対値を変え、位相はそのまま。
→ 解答を見る
B-8. 振幅の足し算と確率¶
D7 で求めた \(\phi_1, \phi_2, \phi_3\) を第 2 のルール(足し算)で加え、全振幅 \(\phi = \phi_1 + \phi_2 + \phi_3\) を求めよ。さらに第 1 のルールを適用して確率 \(P = |\phi|^2\) を計算せよ。
ヒント
各 \(\phi_k\) を \(a + bi\) の形に直してから足すとよい。\(e^{i\pi/3} = \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i\)、\(e^{i\pi} = -1\)、\(e^{i5\pi/3} = \frac{1}{2} - \frac{\sqrt{3}}{2}i\) を使う。
→ 解答を見る
Medium(標準)¶
M-1. 干渉項の一般公式の導出¶
\(N\) 個の区別できない経路があり、各経路の振幅が \(\phi_k\)(\(k = 1, 2, \ldots, N\))で与えられているとする。
- 確率 \(P = \left|\sum_{k=1}^{N} \phi_k \right|^2\) を展開し、
となることを示せ。
-
干渉項(交差項)の個数が \(N(N-1)\) 個であることを説明せよ。
-
すべての振幅の絶対値が等しく \(|\phi_k| = A\) であり、\(\phi_k\) と \(\phi_j\)(\(j \neq k\))の位相差がすべてランダムに分布する場合、干渉項の寄与が平均的にゼロとなる理由を定性的に説明せよ。
ヒント
\(\left|\sum_k \phi_k\right|^2 = \left(\sum_j \phi_j\right)\left(\sum_k \phi_k\right)^* = \sum_j \sum_k \phi_j \phi_k^*\) を \(j = k\) と \(j \neq k\) に分けて整理する。位相がランダムなら \(\cos\delta_{jk}\) の平均は 0。
→ 解答を見る
M-2. 等振幅・等間隔 \(N\) スリットの干渉パターン¶
\(N\) 個のスリットが等間隔 \(d\) で並んでおり、粒子の運動量を \(p\) とする。各スリットから検出器位置 \(x\) までの経路差が隣接スリット間で一定値 \(\Delta r\) であるとし、位相差を \(\delta = p\Delta r / \hbar\) とする。各スリットを通る振幅の絶対値はすべて等しく \(A\) とする。
-
\(k\) 番目のスリット(\(k = 0, 1, \ldots, N-1\))を通る振幅を \(\phi_k = A e^{ik\delta}\) と書けることを説明せよ。
-
全振幅 \(\phi = \sum_{k=0}^{N-1} A e^{ik\delta}\) を等比級数の公式を用いて閉じた形に書け。
-
確率 \(P = |\phi|^2\) が
となることを示せ。
- \(N = 2\) のとき、この式が式 (4.14)(\(|\phi_1| = |\phi_2| = A\) の場合)と一致することを確認せよ。
ヒント
等比級数の和:\(\sum_{k=0}^{N-1} r^k = \frac{1 - r^N}{1 - r}\)。\(r = e^{i\delta}\) を代入し、\(|1 - e^{iN\delta}|^2 = 4\sin^2(N\delta/2)\) を使う(\(|1 - e^{i\alpha}|^2 = 2 - 2\cos\alpha = 4\sin^2(\alpha/2)\) を示すとよい)。
→ 解答を見る
M-3. 「観測する」と干渉が消える:数式による説明¶
二重スリット実験で、スリット 1 を通る振幅を \(\phi_1\)、スリット 2 を通る振幅を \(\phi_2\) とする。
-
どちらのスリットを通ったか観測しない場合の確率が \(P = |\phi_1 + \phi_2|^2\) であることを、第 2 のルールを用いて説明せよ。
-
どちらのスリットを通ったかを観測した場合、粒子がスリット 1 を通ったと判明する確率は \(P_1 = |\phi_1|^2\)、スリット 2 を通ったと判明する確率は \(P_2 = |\phi_2|^2\) であり、検出器 \(x\) に到達する全確率は
となる。この式に干渉項が現れない理由を、「経路が区別できるようになった」という観点から第 2 のルールの適用条件を用いて説明せよ。
- \(|\phi_1| = |\phi_2|\) の場合について、\(P\) と \(P_{\text{obs}}\) の差(すなわち干渉項 \(2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta\))が検出器位置 \(x\) の関数としてどのように振る舞うかを定性的に説明し、「干渉縞が消える」とはどういう意味かを述べよ。
ヒント
第 2 のルールの適用条件は「経路が原理的に区別できない」こと。観測によってどちらの経路を通ったかの情報が得られると、2 つの経路はもはや「区別できない」とは言えない。その場合、振幅を足すのではなく、確率を足す(古典的な確率の加法則に戻る)。
→ 解答を見る
M-4. 2 枚の壁を通る振幅の計算¶
源 \(s\) と検出器 \(x\) の間に 2 枚の壁がある。第 1 の壁にはスリット \(A_1, A_2\) が、第 2 の壁にはスリット \(B_1, B_2, B_3\) がある。どのスリットを通ったかは観測しない。
-
粒子が \(s\) から \(x\) に到達するすべての可能な経路を列挙せよ(経路の数を答えよ)。
-
第 3 のルールを用いて、経路「\(s \to A_j \to B_k \to x\)」の振幅を Dirac 記法で書け。
-
第 2 のルールを用いて、全振幅 \(\langle x | s \rangle\) を書き下せ。
-
各段階の振幅がすべて実数で等しい値 \(c\)(すなわち \(\langle A_j | s \rangle = \langle B_k | A_j \rangle = \langle x | B_k \rangle = c\))であると仮定した場合、確率 \(P = |\langle x | s \rangle|^2\) を \(c\) を用いて表せ。
ヒント
経路の数は第 1 の壁の選択肢 × 第 2 の壁の選択肢。各経路の振幅は 3 段階の積(第 3 のルール)。すべての経路の振幅を足す(第 2 のルール)。振幅がすべて等しければ、\(N\) 本の経路の振幅の和は \(N \times (\text{1 本の振幅})\)。
→ 解答を見る
M-5. 位相差と経路差の関係¶
二重スリット実験で、スリット間隔を \(d\)、スリットの壁から検出器スクリーンまでの距離を \(L\)(\(L \gg d\))とする。スクリーン上の位置 \(x\)(スクリーン中央を原点とする)に対して、
- スリット 1 から \(x\) までの距離 \(r_1\) とスリット 2 から \(x\) までの距離 \(r_2\) の差 \(\Delta r = r_1 - r_2\) が、\(L \gg d\) の近似で
となることを幾何学的に導け。
-
式 (4.22) を用いて位相差 \(\delta\) を \(x\) の関数として表せ。
-
干渉の明線条件(強め合い)\(\delta = 2n\pi\)(\(n\) は整数)から、明線の位置 \(x_n\) を求めよ。
-
de Broglie(ド・ブロイ)関係 \(p = h/\lambda\) を用いて、隣り合う明線の間隔 \(\Delta x\) を波長 \(\lambda\) で表せ。
ヒント
2 つのスリットから検出器位置 \(x\) への経路を描き、\(L \gg d\) のとき 2 本の経路がほぼ平行であることを利用する。経路差は \(d\sin\theta \approx d \cdot x/L\) となる。\(p/\hbar = 2\pi/\lambda\) を使う。
→ 解答を見る
Advanced(発展)¶
A-1. Mach–Zehnder (マッハ・ツェンダー) 干渉計の量子力学的解析¶
光子 1 個が Mach–Zehnder 干渉計に入射する。干渉計は以下の要素からなる:
- ビームスプリッター BS1:入射光子を 2 つの経路(経路 \(A\) と経路 \(B\))に分ける。反射の振幅は \(\frac{i}{\sqrt{2}}\)、透過の振幅は \(\frac{1}{\sqrt{2}}\) とする。
- ミラー \(M_A\)、\(M_B\):それぞれの経路で光子を反射する。反射の振幅は \(i\)(位相 \(\pi/2\) のシフト)とする。
- ビームスプリッター BS2:2 つの経路を再び合流させる。BS1 と同じ性質(反射 \(\frac{i}{\sqrt{2}}\)、透過 \(\frac{1}{\sqrt{2}}\))。
- 2 つの出力ポート:検出器 \(D_1\) と検出器 \(D_2\)。
経路 \(A\) には追加の位相シフト \(e^{i\varphi}\) を導入できる位相板があるとする(経路 \(B\) には追加位相なし)。
-
光子が入射ポートから \(D_1\) に到達する 2 つの経路(経路 \(A\) 経由と経路 \(B\) 経由)の振幅を、第 3 のルールを用いてそれぞれ計算せよ。(各経路で光子が経験する要素を順に書き出し、振幅を掛け合わせること。)
-
第 2 のルールを用いて全振幅を求め、\(D_1\) で光子が検出される確率 \(P_1(\varphi)\) を計算せよ。
-
同様に \(D_2\) で検出される確率 \(P_2(\varphi)\) を計算せよ。\(P_1 + P_2 = 1\) が成り立つことを確認せよ。
-
\(\varphi = 0\) と \(\varphi = \pi\) の場合について、\(P_1\) と \(P_2\) の値を求め、物理的意味を述べよ。
-
経路 \(A\) の途中に「どちらの経路を通ったか検出する装置」を挿入した場合、干渉がどのように変化するかを第 2 のルールの適用条件に基づいて論じよ。
ヒント
経路 \(A\) 経由で \(D_1\) に至る過程:BS1 で反射 → 位相板 → ミラー \(M_A\) で反射 → BS2 で透過(または反射)。各要素の振幅を順に掛ける。\(D_1\) に至るとき BS2 で透過するか反射するかは干渉計の幾何学的配置に依存する。典型的な配置では、経路 \(A\) は BS2 で透過して \(D_1\) へ、経路 \(B\) は BS2 で反射して \(D_1\) へ向かう(逆の設定でもよいが一貫させること)。
→ 解答を見る
A-2. 3 状態系における干渉と「量子消しゴム」の原理¶
粒子が源 \(s\) から 3 つのスリット(\(1, 2, 3\))を通って検出器 \(x\) に到達する実験を考える。各スリットを通る振幅は
で、\(\alpha_1 = 0\)、\(\alpha_2 = 2\pi/3\)、\(\alpha_3 = 4\pi/3\) とする(等間隔スリットの中央での位相差に対応)。
Part I:完全な干渉
-
全振幅 \(\phi = \phi_1 + \phi_2 + \phi_3\) を計算し、\(P = |\phi|^2\) を求めよ。
-
この結果を、\(e^{i \cdot 2\pi/3}\) が「1 の原始 3 乗根」であることと結びつけて解釈せよ。
Part II:部分的な経路情報
スリット 1 に「マーカー」を付けて、粒子がスリット 1 を通ったかどうかだけは判別できるが、スリット 2 とスリット 3 の区別はつかない装置を導入する。
-
この場合、確率をどのように計算すべきかを、Feynman の 3 つのルールに基づいて論じよ。具体的に \(P(x)\) を式で表せ。
-
Part I の結果と比較し、「部分的な経路情報を得ることで干渉が部分的に回復する」現象が起こりうるかどうかを議論せよ。
Part III:量子消しゴム
- Part II のマーカー情報を「消去」する(読み取らないことにする)と、干渉パターンはどうなるか。第 2 のルールの適用条件に立ち返って説明せよ。これが「量子消しゴム (quantum eraser)」の基本原理であることを述べよ。
ヒント
Part I:\(1 + e^{i2\pi/3} + e^{i4\pi/3} = 0\)(1 の原始 \(n\) 乗根の和は 0)。Part II:スリット 1 は他と区別できるので、スリット 1 の振幅は独立に確率に変換する。スリット 2 と 3 は区別できないので振幅を足す。\(P = |\phi_1|^2 + |\phi_2 + \phi_3|^2\)。Part III:マーカー情報を消去すると、再びすべての経路が区別不可能になり、振幅を足すルールが復活する。
→ 解答を見る
このページについてフィードバック
分からなかった箇所、誤りの指摘、改善提案などをお寄せください。