第 3 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
Medium(標準)
Basic(基礎)¶
B-1. 双曲線関数の恒等式の導出¶
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解法の方針: \(\cosh\varphi\) と \(\sinh\varphi\) の定義式をそれぞれ二乗し、差をとる。
計算:
差をとると、
最終回答:
検算: \(\varphi = 0\) を代入すると \(\cosh 0 = 1\), \(\sinh 0 = 0\) なので \(1 - 0 = 1\)。✓
B-2. ラピディティと Lorentz 因子の関係¶
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解法の方針: \(\tanh\varphi = v/c\) と恒等式 \(\cosh^2\varphi - \sinh^2\varphi = 1\) を連立させる。
計算:
\(\tanh\varphi = \sinh\varphi / \cosh\varphi = v/c\) より、
これを恒等式に代入する:
\(\cosh\varphi > 0\)(定義から明らか)なので、
式 (1) に代入して、
検算: \(\cosh^2\varphi - \sinh^2\varphi = \gamma^2 - \gamma^2 v^2/c^2 = \gamma^2(1 - v^2/c^2) = 1\)。✓
B-3. Lorentz 変換行列の縮約計算¶
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解法の方針: \(dx^{1'} = \Lambda^{1'}{}_{\nu}\,dx^\nu\) を \(\nu = 0, 1, 2, 3\) について展開する。
計算:
行列の第 2 行(\(\mu' = 1\) の行)から各成分を読み取ると、
\(dx^\mu = (dt,\, dx,\, 0,\, 0)\) を代入すると、
検算: \(S'\) の原点 \(dx' = 0\) とすると \(dx = v\,dt\)、すなわち \(S'\) の原点は \(S\) 系で速度 \(v\) で動く。✓
Medium(標準)¶
M-1. Lorentz 変換の係数決定の詳細計算¶
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解法の方針: 交差項の式から \(a_2\) を \(a_1, a_6\) で表し、\(dx^2\) と \(dt^2\) の式を連立させて \(a_1, a_6\) を決定する。
(a) 交差項の式から \(a_2\) を表す¶
交差項 \(dt\,dx\) の係数の式
より、
(b) \(dx^2\) の式に代入¶
\(dx^2\) の係数の式
に式 (1) を代入:
両辺に \(c^2\,a_1^2\) をかける:
(c) \(dt^2\) の式から \(a_1^2\) を表す¶
\(dt^2\) の係数の式
より、
(d) \(a_6^2\) を求める¶
式 (3) を式 (2) に代入:
左辺を展開:
\(a_6^4\,v^2\) が打ち消し合って、
\(a_6^2\) について整理:
(e) 符号の決定(連続性)¶
\(v \to 0\) で恒等変換 \(a_6 \to +1\) に戻るべきだから、\(a_6\) の符号は プラス:
(マイナスを選ぶと空間反転が入った変換になり、\(v = 0\) の連続極限で恒等変換に戻らない。)
(f) \(a_1\) と \(a_2\) を求める¶
式 (3) に \(a_6^2 = \gamma^2\) を代入:
よって \(a_1^2 = 1/(1 - v^2/c^2) = \gamma^2\)。連続性から \(a_1 = +\gamma\)。
式 (1) に \(a_1 = \gamma\), \(a_6 = \gamma\) を代入:
最終回答¶
検算: これを本文 3.3 節の変換式
に代入すると、
となり、\(ct' = \gamma(ct - \beta\,x)\), \(x' = \gamma(x - \beta\,c\,t)\)(\(\beta = v/c\))を得る。本文 3.6 節の boxed 式と一致する。✓
M-2. Lorentz 変換による計量の保存条件¶
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解法の方針: 条件 \(\eta_{\mu'\nu'} = \Lambda^{\alpha}{}_{\mu'}\Lambda^{\beta}{}_{\nu'}\eta_{\alpha\beta}\) に具体的な \(\Lambda\) を代入して検証する。
添字の解釈について: 問題文の \(\Lambda^{\alpha}{}_{\mu'}\) は、ダッシュ付き座標からダッシュなし座標への変換(逆変換)の行列成分を表す。\(x\) 方向ブーストの場合、逆変換は \(v \to -v\) で得られるので、
\[(\Lambda^{-1})^{\alpha}{}_{\mu'} = \begin{pmatrix} \gamma & \gamma v & 0 & 0 \\ \gamma v & \gamma & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}\]ただし、\(x\) 方向ブーストの行列は対称行列であるため、\(\Lambda^{\mu'}{}_{\nu}\) の「\(\mu'\) 行 \(\nu\) 列」と \((\Lambda^{-1})^{\alpha}{}_{\mu'}\) の「\(\alpha\) 行 \(\mu'\) 列」を読み取る際、転置の操作が結果に影響しない。
実際、計量保存条件は行列形式で \((\Lambda^{-1})^T \eta\, \Lambda^{-1} = \eta\) と書けるが、これは \(\Lambda^T \eta\, \Lambda = \eta\) と同値である(両辺に \(\Lambda^T\) を左から、\(\Lambda\) を右からかければよい)。以下では問題文のヒントに従い、\(\Lambda^{\alpha}{}_{0'} = (\gamma, -\gamma v, 0, 0)\)(順変換の行列の第 0 列)を用いて計算する。\(x\) 方向ブーストでは行列が対称なので、順変換の列を読むことと逆変換の行を読むことは同じ結果を与える。
\((\mu', \nu') = (0, 0)\) の検証¶
\(\eta_{\alpha\beta}\) が対角なので \(\alpha = \beta\) の項のみ残る:
これは \(\eta_{0'0'} = -1\) と一致する。✓
\((\mu', \nu') = (0, 1)\) の検証¶
これは \(\eta_{0'1'} = 0\) と一致する。✓
最終回答: 両成分とも Minkowski 計量の保存条件を満たすことが確認された。
検算: 行列形式で \(\Lambda^T \eta \Lambda = \eta\) を確認することもできる。\(\det\Lambda = \gamma^2 - \gamma^2 v^2 = \gamma^2(1-v^2) = 1\) なので、\(\Lambda\) は proper Lorentz 変換。✓
M-3. 同時性の相対性の定量的帰結¶
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解法の方針: Lorentz 変換の時間成分に \(\Delta t = 0\), \(\Delta x = L\) を代入する。
計算¶
Lorentz 変換の時間成分は(\(c\) を明示して書くと)、
\(S\) 系で同時刻(\(\Delta t = 0\))に距離 \(\Delta x = L\) だけ離れた二つの事象に対して、
同時性の相対性の帰結¶
この結果は以下のことを示している:
-
同時性は絶対的ではない: \(S\) 系で同時(\(\Delta t = 0\))だった二つの事象が、\(S'\) 系では一般に同時ではない(\(\Delta t' \neq 0\))。\(\Delta t' = 0\) となるのは \(v = 0\)(両系が同じ)または \(L = 0\)(同じ場所の事象)の場合のみである。
-
時間差の大きさは距離に比例する: \(|\Delta t'| = \gamma v L / c^2\) であり、二つの事象の空間的な距離 \(L\) が大きいほど、\(S'\) 系での時間差も大きくなる。
-
時間順序は \(v\) の符号に依存する: \(v > 0\) のとき \(\Delta t' < 0\)(\(x\) 座標が大きい方の事象が先に起きる)、\(v < 0\) のとき \(\Delta t' > 0\)(\(x\) 座標が小さい方の事象が先に起きる)。空間的に離れた同時刻の事象の時間順序は、観測者の運動状態によって逆転しうる。
-
因果律との整合性: \(\Delta t = 0\), \(\Delta x = L \neq 0\) の二つの事象の時空間隔は \(\Delta s^2 = -c^2(\Delta t)^2 + (\Delta x)^2 = L^2 > 0\)(空間的)である。空間的に離れた事象間には因果関係がないため、時間順序が観測者に依存しても因果律は破られない。
検算¶
次元確認:\([\gamma v L / c^2] = (\text{m/s})(\text{m})/(\text{m/s})^2 = \text{s}\)。時間の次元で正しい。✓
\(v \ll c\) の極限:\(\gamma \approx 1\) で \(\Delta t' \approx -vL/c^2\)。日常的なスケール(\(v \sim 10\;\text{m/s}\), \(L \sim 1\;\text{m}\))では \(|\Delta t'| \sim 10^{-16}\;\text{s}\) と極めて小さく、同時性のずれは検出不可能。✓
M-4. 固有時間と座標時間の関係¶
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解法の方針: \(d\tau^2 = -ds^2\) を \(dt^2\) でくくり出し、3 次元速度を代入する。
計算:
固有時間の定義(\(c = 1\)):
\(dt^2\) でくくり出す:
3 次元速度 \(v^i = dx^i/dt\) を用いると、\(v^2 = (dx/dt)^2 + (dy/dt)^2 + (dz/dt)^2\) なので、
最終回答:
物理的意味: \(\gamma \geq 1\)(等号は \(v = 0\) のときのみ)なので、\(d\tau \leq dt\)。すなわち、粒子に同伴する時計(固有時間 \(\tau\) を刻む)は、座標時間 \(t\) よりも常にゆっくり進む。これが時間の遅れ (time dilation) である。
有限の時間間隔では、
「動いている時計は遅れる」——静止している観測者の座標時間 \(\Delta t\) に比べ、動いている粒子の固有時間 \(\Delta\tau\) は短い。
検算: \(v = 0\) のとき \(\gamma = 1\) で \(d\tau = dt\)(静止している時計は座標時間と同じ)。✓
次元解析:\(c\) を復元すると \(d\tau/dt = \sqrt{1 - v^2/c^2}\)、\(v \ll c\) で \(d\tau \approx dt\)。✓
M-5. 速度の合成則の導出¶
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解法の方針: ラピディティの加法性と \(\tanh\) の加法公式を用いる。
計算:
\(S \to S'\) のブーストのラピディティを \(\varphi_1\)、\(S' \to S''\) のブーストのラピディティを \(\varphi_2\) とする。Lorentz ブーストの行列は双曲線関数で書かれるので、2 回のブーストの合成は
すなわち、合成のラピディティは
合成速度 \(v_{12}\) は \(\tanh\varphi_{12} = v_{12}\)(\(c = 1\))で与えられる。\(\tanh\) の加法公式を使うと、
\(\tanh\varphi_1 = v_1\), \(\tanh\varphi_2 = v_2\) を代入して、
検算:
- \(v_1, v_2 \ll 1\) のとき \(v_{12} \approx v_1 + v_2\)(Galilei の速度合成に帰着)。✓
- \(v_1 = 1\)(光速)のとき \(v_{12} = (1 + v_2)/(1 + v_2) = 1\)(光速は光速のまま)。✓
- \(v_1 = v_2 = 0.9\) のとき \(v_{12} = 1.8/1.81 \approx 0.9945 < 1\)(光速を超えない)。✓
補足:ラピディティの加法性の証明
\(x\) 方向ブーストの行列をラピディティで書くと、
(\(t\)-\(x\) 部分のみ表示、\(c = 1\))。2 つの行列の積を計算すると、
双曲線関数の加法公式 \(\cosh(\varphi_1+\varphi_2) = \cosh\varphi_1\cosh\varphi_2 + \sinh\varphi_1\sinh\varphi_2\), \(\sinh(\varphi_1+\varphi_2) = \sinh\varphi_1\cosh\varphi_2 + \cosh\varphi_1\sinh\varphi_2\) により、
M-6. 同時性の相対性(具体例)¶
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解法の方針: \(S\) 系の事象 \(A = (0, 0)\), \(B = (0, L)\) に Lorentz 変換を適用する。
計算:
(a) 時間差の計算¶
Lorentz 変換の時間成分(\(c = 1\)):
事象 \(A\):\(t_A = 0\), \(x_A = 0\)
事象 \(B\):\(t_B = 0\), \(x_B = L\)
時間差:
(b) どちらが先に起きるか¶
-
\(v > 0\)(\(S'\) が \(+x\) 方向に運動)のとき:\(\Delta t' = -\gamma vL < 0\)、すなわち \(t'_B < t'_A\)。事象 \(B\) が先に起きる。
-
\(v < 0\)(\(S'\) が \(-x\) 方向に運動)のとき:\(\Delta t' = -\gamma vL > 0\)、すなわち \(t'_B > t'_A\)。事象 \(A\) が先に起きる。
-
\(v = 0\) のとき: \(\Delta t' = 0\)。同時のまま。
最終回答: \(S\) 系で同時だった二つの事象は、\(S'\) 系では一般に同時ではない。先に起きる事象は \(v\) の符号に依存する。
検算: 二つの事象の時空間隔は \(\Delta s^2 = -0 + L^2 = L^2 > 0\)(空間的)。空間的に離れた事象の時間順序は慣性系に依存するという一般的結論と整合する。✓
\(c\) を復元すると \(\Delta t' = -\gamma vL/c^2\)。\(v \ll c\) で \(\Delta t' \approx -vL/c^2 \approx 0\)、日常スケールでは同時性のずれは無視できる。✓
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