第 1 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
Medium(標準)
Basic(基礎)¶
B-1. 海王星の質量の推定¶
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問題: 天王星の軌道半径 \(r_U\)、海王星の軌道半径 \(r_N\)、観測された加速度のずれ \(\delta a\) から、海王星の質量 \(M_N\) を表せ。
解答:
海王星が天王星に及ぼす重力加速度は、Newton の万有引力から:
\(\delta a = \frac{GM_N}{(r_N - r_U)^2}\)
ここで簡単のため、天王星と海王星が同じ側にあり、距離が \(|r_N - r_U|\) であると近似した。\(M_N\) について解くと:
\(\boxed{M_N = \frac{\delta a \cdot (r_N - r_U)^2}{G}}\)
注意: 実際の Le Verrier と Adams の計算はこれよりはるかに複雑で、軌道の楕円性や惑星の相対位置の時間変化を考慮している。この問題は本質的なアイデアを簡略化したもの。
B-2. なぜ T-V であって T+V ではないのか¶
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(a) \(L = T - V\) の場合(正しい Lagrangian):
\(L = \frac{1}{2}m\dot{y}^2 - mgy\)
各偏微分:
\(\frac{\partial L}{\partial \dot{y}} = m\dot{y}, \qquad \frac{\partial L}{\partial y} = -mg\)
Euler-Lagrange 方程式 \(\frac{d}{dt}\frac{\partial L}{\partial \dot{y}} - \frac{\partial L}{\partial y} = 0\) に代入:
\(\frac{d}{dt}(m\dot{y}) - (-mg) = 0 \quad\Rightarrow\quad m\ddot{y} + mg = 0\)
\(\boxed{m\ddot{y} = -mg}\)
これは Newton の運動方程式で、「重力が下向き(\(-y\) 方向)に働き、ボールは下向きに加速する」を正しく表す。
(b) \(L' = T + V\) の場合(誤った Lagrangian):
\(L' = \frac{1}{2}m\dot{y}^2 + mgy\)
各偏微分:
\(\frac{\partial L'}{\partial \dot{y}} = m\dot{y}, \qquad \frac{\partial L'}{\partial y} = +mg\)
Euler-Lagrange 方程式に代入:
\(\frac{d}{dt}(m\dot{y}) - mg = 0 \quad\Rightarrow\quad m\ddot{y} - mg = 0\)
\(\boxed{m\ddot{y} = +mg \quad(\text{非物理的})}\)
これは「重力が上向きに働き、ボールは上向きに加速する」を意味し、実験と矛盾する。
物理的意味: Lagrangian の形は「自然法則」ではなく「仮説」である。\(L = T - V\) という形は「仮に置いて Euler-Lagrange 方程式を適用したら Newton の運動方程式が出てくる」という事後的な正当化によって支持されているにすぎない。つまり Lagrangian 形式でも、最終的には実験との整合性によって正しい形が選ばれている。このことはプロローグの「物理のモデルは全て仮説」という立場と整合する。
検算: 初速 \(\dot{y}(0) = v_0\) で投げ上げた場合、(a) では \(y(t) = v_0 t - \frac{1}{2}gt^2\)(最高点を経て落下する放物運動)、(b) では \(y(t) = v_0 t + \frac{1}{2}gt^2\)(無限に加速して上昇する非物理解)となり、(a) だけが実験と一致する。
Medium(標準)¶
M-1. Kepler の第 3 法則の導出¶
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問題: 万有引力 \(F = GMm/r^2\) と円運動の条件 \(F = mv^2/r\) を使って、\(T^2 \propto r^3\) を導出せよ。
解答:
円軌道上の惑星(質量 \(m\))に対して、万有引力が向心力を提供する:
\(G\frac{Mm}{r^2} = \frac{mv^2}{r}\)
両辺の \(m\) を消去し、\(v\) について解く:
\(v^2 = \frac{GM}{r}\)
円運動の周期は \(T = 2\pi r / v\) なので:
\(T = \frac{2\pi r}{v} = 2\pi r \cdot \frac{1}{\sqrt{GM/r}} = 2\pi \sqrt{\frac{r^3}{GM}}\)
両辺を 2 乗すると:
\(\boxed{T^2 = \frac{4\pi^2}{GM} r^3}\)
\(G\) と \(M\)(太陽の質量)は定数なので、\(T^2 \propto r^3\) が示された。これが Kepler の第 3 法則。
ポイント: Newton のモデルからは、比例定数 \(4\pi^2/(GM)\) まで具体的に決まる。Kepler の法則は「\(T^2 \propto r^3\)」という関係を経験的に見出しただけだが、Newton のモデルは比例定数の値まで予測する。これが「記述」と「説明」の違い。
M-2. 重力ポテンシャルの計算¶
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問題: \(r \neq 0\) の領域で \(\nabla^2 \Phi = 0\) を球対称の仮定のもとで解き、\(\Phi = -GM/r\) を導出せよ。
解答:
球対称なので \(\Phi = \Phi(r)\) とする。球座標でのラプラシアンは:
\(\nabla^2 \Phi = \frac{1}{r^2}\frac{d}{dr}\left(r^2 \frac{d\Phi}{dr}\right)\)
\(r \neq 0\) の領域では \(\rho = 0\) なので、\(\nabla^2 \Phi = 0\):
\(\frac{1}{r^2}\frac{d}{dr}\left(r^2 \frac{d\Phi}{dr}\right) = 0\)
\(r^2 \neq 0\) なので、括弧の中が定数:
\(r^2 \frac{d\Phi}{dr} = C_1\)
\(\frac{d\Phi}{dr} = \frac{C_1}{r^2}\)
積分すると:
\(\Phi = -\frac{C_1}{r} + C_2\)
境界条件として、\(r \to \infty\) で \(\Phi \to 0\)(無限遠でポテンシャルがゼロ)を課すと \(C_2 = 0\)。
次に、\(C_1\) を決める。原点に質量 \(M\) があるので、ポアソン方程式を原点を含む球で体積積分する(Gauss の定理を使う):
\(\int \nabla^2 \Phi \, dV = 4\pi G \int \rho \, dV = 4\pi G M\)
左辺に Gauss の定理を適用:
\(\oint \nabla\Phi \cdot d\mathbf{S} = \oint \frac{d\Phi}{dr} \cdot r^2 \sin\theta \, d\theta \, d\phi = \frac{C_1}{r^2} \cdot 4\pi r^2 = 4\pi C_1\)
よって \(4\pi C_1 = 4\pi GM\)、すなわち \(C_1 = GM\)。
\(\boxed{\Phi = -\frac{GM}{r}}\)
確認: この \(\Phi\) から力を計算すると \(F = -m \frac{d\Phi}{dr} = -m \cdot \frac{GM}{r^2}\)(引力方向にマイナス)。\(|F| = GMm/r^2\) となり、Newton の万有引力と一致する。
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