第 3 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 干渉項の計算
- B-2. 位相差と干渉の強弱
- B-3. 複素振幅の絶対値の 2 乗の展開
- B-4. 干渉縞の極大・極小条件
- B-5. 具体的な干渉縞の計算
- B-6. 確率分布の規格化
- B-7. 干渉の可視度 (visibility)
Medium(標準)
- M-1. 確率の足し算 vs 振幅の足し算の定量的比較
- M-2. 「どちらを通ったか」の情報と干渉項の消失
- M-3. 経路差と de Broglie 波長の関係
- M-4. 干渉の消失を「確率の条件付き分解」で理解する
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 干渉項の計算¶
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解法の方針: 与えられた確率振幅 \(\phi_1\), \(\phi_2\) の絶対値の 2 乗、和の絶対値の 2 乗、干渉項を順に計算する。
1. \(P_1 = |\phi_1|^2\)¶
2. \(P_2 = |\phi_2|^2\)¶
3. \(P_{12} = |\phi_1 + \phi_2|^2\)¶
まず位相差を求める:
公式 \(|\phi_1 + \phi_2|^2 = |\phi_1|^2 + |\phi_2|^2 + 2|\phi_1||\phi_2|\cos\delta\) を用いる:
4. 干渉項 \(2\mathrm{Re}(\phi_1^* \phi_2)\)¶
検算: \(P_{12} = P_1 + P_2 + 2\mathrm{Re}(\phi_1^*\phi_2) = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} + 0 = 1\) ✓。位相差が \(\pi/2\) なので干渉項がゼロになるのは \(\cos(\pi/2) = 0\) と整合する。
B-2. 位相差と干渉の強弱¶
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解法の方針: \(I_1 = I_2 = I_0\) のとき、式 (3.2) は
1. \(\delta = 0\)¶
2. \(\delta = \pi/2\)¶
3. \(\delta = \pi\)¶
4. \(\delta = 2\pi/3\)¶
検算: \(\delta = 0\) で最大 \(4I_0\)(完全な強め合い)、\(\delta = \pi\) で最小 \(0\)(完全な弱め合い)。これは等振幅の干渉の典型的な結果。\(\delta = \pi/2\) で \(2I_0 = I_1 + I_2\)(干渉項ゼロ)も正しい。
B-3. 複素振幅の絶対値の 2 乗の展開¶
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解法の方針: \(|z|^2 = z^* z\) を用いて \((\phi_1 + \phi_2)^*(\phi_1 + \phi_2)\) を展開する。
各項を計算する: - \(\phi_1^*\phi_1 = (Ae^{-i\alpha})(Ae^{i\alpha}) = A^2\) - \(\phi_2^*\phi_2 = (Be^{-i\beta})(Be^{i\beta}) = B^2\) - \(\phi_1^*\phi_2 = (Ae^{-i\alpha})(Be^{i\beta}) = ABe^{i(\beta - \alpha)}\) - \(\phi_2^*\phi_1 = (Be^{-i\beta})(Ae^{i\alpha}) = ABe^{i(\alpha - \beta)}\)
交差項をまとめる:
したがって:
検算: \(A = B\), \(\alpha = \beta\) のとき \(|2Ae^{i\alpha}|^2 = 4A^2\) であり、公式からも \(A^2 + A^2 + 2A^2\cos 0 = 4A^2\) ✓。\(\alpha - \beta = \pi\) のとき \(A^2 + B^2 - 2AB = (A-B)^2\) であり、\(|Ae^{i\alpha} + Be^{i(\alpha+\pi)}|^2 = |A - B|^2 = (A-B)^2\) ✓。
B-4. 干渉縞の極大・極小条件¶
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解法の方針: 経路差 \(\Delta = dx/L\) に対応する位相差は \(\delta = 2\pi\Delta/\lambda = 2\pi dx/(\lambda L)\)。
1. 極大(強め合い)条件¶
強め合いは \(\cos\delta = +1\)、すなわち \(\delta = 2n\pi\)(\(n\) は整数)のとき起こる。
2. 極小(弱め合い)条件¶
弱め合いは \(\cos\delta = -1\)、すなわち \(\delta = (2n+1)\pi\) のとき起こる。
3. 隣り合う極大間の間隔 \(\Delta x\)¶
\(n\) 次の極大の位置は \(\Delta = n\lambda\) より \(dx_n/L = n\lambda\)、すなわち \(x_n = n\lambda L/d\)。
隣り合う極大間の間隔は:
検算: 次元解析:\([\lambda L/d] = \mathrm{m} \cdot \mathrm{m} / \mathrm{m} = \mathrm{m}\) ✓。\(\lambda\) が大きいほど、\(L\) が大きいほど縞間隔は広がり、\(d\) が大きいほど狭まる。これは物理的に妥当。
B-5. 具体的な干渉縞の計算¶
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1. 電子の de Broglie 波長 \(\lambda\)¶
加速電圧 \(V\) で加速された電子の運動量:
de Broglie 波長:
2. 干渉縞の間隔 \(\Delta x\)¶
D4 の結果を用いて:
検算: 150 V で加速された電子の de Broglie 波長が約 1 Å というのは、電子線回折の典型的な値と一致する(Davisson-Germer 実験でも同程度)。縞間隔 50 μm は光学顕微鏡で十分観測可能なスケールであり、妥当。
B-6. 確率分布の規格化¶
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解法の方針: 1 周期分 \(-\frac{\lambda L}{2d} \le x \le \frac{\lambda L}{2d}\) で \(\int P(x)\,dx = 1\) となるように \(C\) を決める。
\(u = \frac{\pi d x}{\lambda L}\) と置換すると、\(du = \frac{\pi d}{\lambda L}dx\)、すなわち \(dx = \frac{\lambda L}{\pi d}du\)。
\(x\) の範囲 \(\left[-\frac{\lambda L}{2d}, \frac{\lambda L}{2d}\right]\) は \(u\) の範囲 \(\left[-\frac{\pi}{2}, \frac{\pi}{2}\right]\) に対応する。
\(\cos^2 u = \frac{1}{2}(1 + \cos 2u)\) を用いて:
したがって:
検算: \(C\) の次元は \([1/\text{長さ}]\)(確率密度の次元)であり、\(d/(\lambda L) = \mathrm{m}/(\mathrm{m}\cdot\mathrm{m}) = \mathrm{m}^{-1}\) ✓。また、積分区間の幅は \(\lambda L/d\) であり、\(P(x)\) の平均値は \(C/2 = d/(\lambda L)\)。平均値 × 区間幅 \(= d/(\lambda L) \times \lambda L/d = 1\) ✓。
B-7. 干渉の可視度 (visibility)¶
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解法の方針: 式 (3.2) \(I_{12} = I_1 + I_2 + 2\sqrt{I_1 I_2}\cos\delta\) から \(I_{\max}\) と \(I_{\min}\) を求める。
\(\cos\delta = +1\) のとき最大:
\(\cos\delta = -1\) のとき最小:
可視度を計算する:
検算: - \(I_1 = I_2 = I_0\) のとき:\(\mathcal{V} = \frac{2\sqrt{I_0^2}}{2I_0} = \frac{2I_0}{2I_0} = 1\) ✓(完全な可視度) - \(I_1 \gg I_2\) のとき:\(\mathcal{V} \approx \frac{2\sqrt{I_1 I_2}}{I_1} = 2\sqrt{I_2/I_1} \to 0\) ✓(一方が支配的だと縞が見えにくい) - \(0 \le \mathcal{V} \le 1\) であることは、相加平均 ≥ 相乗平均(\(I_1 + I_2 \ge 2\sqrt{I_1 I_2}\))から確認できる ✓
Medium(標準)¶
M-1. 確率の足し算 vs 振幅の足し算の定量的比較¶
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1. 量子力学的な確率分布 \(P_{12}^{\mathrm{QM}}(x)\)¶
経路差の近似 \(r_1 - r_2 \approx dx/L\) を用いると、位相差は \(\delta = k \cdot dx/L = \frac{2\pi dx}{\lambda L}\)。
2. 古典的粒子像の確率分布 \(P_{12}^{\mathrm{cl}}(x)\)¶
(位置 \(x\) によらず一様)
3. 干渉項の議論¶
正になる \(x\) の範囲(強め合い):
すなわち、各極大位置 \(x_n = n\lambda L/d\) を中心とした幅 \(\lambda L/(2d)\) の領域で正。
負になる \(x\) の範囲(弱め合い):
すなわち、各極小位置の周辺で負。
物理的意味: 干渉項は 1 周期にわたって平均するとゼロになる(\(\cos\) の平均はゼロ)。量子力学は古典的予測に比べて、ある場所では電子が到達しやすく(確率の再分配による強め合い)、別の場所では到達しにくい(弱め合い)。全体の確率の総和は保存される。
検算: \(P_{12}^{\mathrm{QM}}\) を \(x\) について 1 周期分積分すると、\(\int_0^{\lambda L/d}(1 + \cos(\cdots))dx = \lambda L/d\)。\(P_{12}^{\mathrm{cl}}\) の同区間の積分も \(\lambda L/d\)。確率の総和は等しい ✓。
M-2. 「どちらを通ったか」の情報と干渉項の消失¶
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1. 完全な経路識別(\(b = 0\), \(b' = 0\), \(|a|^2 = |a'|^2 = 1\))¶
式 (3.9) に代入する:
\(b = 0\), \(b' = 0\) を代入:
\(|a|^2 = |a'|^2 = 1\) を代入:
干渉項は完全に消失している。 \(\blacksquare\)
物理的解釈: \(b = 0\) は「電子が孔 2 を通ったのに光子が \(D_1\) で検出される確率がゼロ」を意味し、光子の検出位置から電子の経路が完全に特定できる。この場合、2 つの経路は区別可能な終状態に対応するため、確率を足す。
2. 経路識別が全くできない場合(\(a = a' = b = b' = 1/\sqrt{2}\))¶
式 (3.9) に代入:
干渉縞が完全に回復する。 \(\blacksquare\)
物理的解釈: \(a = b\) かつ \(a' = b'\) のとき、光子が \(D_1\) に入っても \(D_2\) に入っても、電子がどちらの孔を通ったかについて何の情報も得られない。経路が区別不可能なので、振幅を足してから 2 乗する規則が適用される。
検算: (2) で 2 つの項が同一になることを確認。第 1 項:\(|a\phi_1 + b\phi_2|^2 = |\frac{1}{\sqrt{2}}(\phi_1 + \phi_2)|^2 = \frac{1}{2}|\phi_1 + \phi_2|^2\)。第 2 項:\(|b'\phi_1 + a'\phi_2|^2 = |\frac{1}{\sqrt{2}}(\phi_1 + \phi_2)|^2 = \frac{1}{2}|\phi_1 + \phi_2|^2\)。和は \(|\phi_1 + \phi_2|^2\) ✓。
M-3. 経路差と de Broglie 波長の関係¶
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1. de Broglie 波長¶
加速電圧 \(V\) で加速された電子の運動エネルギー:
de Broglie 波長:
2. \(n\) 次の干渉極大の位置¶
極大条件は \(\Delta = n\lambda\)、すなわち \(dx_n/L = n\lambda\):
3. 加速電圧を \(4V\) に変えたとき¶
新しい波長:
新しい干渉縞の間隔:
検算: 加速電圧を上げると電子の運動量が増え、de Broglie 波長が短くなる。波長が短いほど干渉縞は細かくなるので、物理的に妥当。次元解析:\(\lambda = h/\sqrt{2m_e eV}\) の次元は \(\mathrm{J\cdot s}/\sqrt{\mathrm{kg \cdot C \cdot V}} = \mathrm{J\cdot s}/\sqrt{\mathrm{kg \cdot J}} = \mathrm{J\cdot s}/\sqrt{\mathrm{kg \cdot kg \cdot m^2/s^2}} = \mathrm{m}\) ✓。
M-4. 干渉の消失を「確率の条件付き分解」で理解する¶
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1. 全確率の公式の破綻¶
対称なスリットを仮定すると \(P(A_1) = P(A_2) = 1/2\)。古典的な全確率の公式は:
ここで \(P(x|A_1)\) は「孔 1 を通った場合に \(x\) に到達する確率」= \(P_1(x)\)(孔 1 だけ開けたときの分布を適切に規格化したもの)、同様に \(P(x|A_2) = P_2(x)\)。したがって全確率の公式は:
を予測する。
一方、実験で観測される量子力学的な確率分布は:
(ここで \(|\phi_1|^2 = P_1/1 = P_1\) 等と規格化を合わせると)
干渉項 \(2\mathrm{Re}(\phi_1^*\phi_2) \neq 0\) が存在するため:
全確率の公式が成り立たない。 \(\blacksquare\)
2. 破綻の原因¶
全確率の公式 \(P(x) = \sum_i P(x|A_i)P(A_i)\) が成り立つための前提条件は:
- 事象 \(A_1\) と \(A_2\) が排反(同時に起こらない)
- 事象 \(A_1\) と \(A_2\) が網羅的(必ずどちらかが起こる)
- 各事象 \(A_i\) が確定した事実として存在する
二重スリット実験で干渉縞が観測されるとき、破綻しているのは条件 3 である。
「電子は孔 1 を通った」「電子は孔 2 を通った」という事象が、観測されない限り確定した事実として存在しない。 経路が確定していない(実在しない)状況では、「どちらを通ったか」を前提とした条件付き確率の分解自体が不適切になる。
これは本文で述べられた「命題 A(各電子はどちらか一方を通る)を仮定すると \(P_{12} = P_1 + P_2\) が導かれるが、実験結果と矛盾する」という議論と対応する。古典的実在論——「測定しなくても物理量は確定した値を持つ」——が崩壊していることを意味する。
検算: 「どちらを通ったか」を実際に観測した場合(光源をつけた実験)には、経路が確定した事実となるため、全確率の公式が回復し \(P_{12}' = P_1 + P_2\) となる。これは本文の式 (3.6) と一致 ✓。
Advanced(発展)¶
A-1. 部分的経路情報と干渉の可視度¶
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1. 標識をトレースアウトした確率分布¶
全系の状態:
電子のスクリーン上の確率分布は、標識の自由度をトレースアウトして得る。標識空間の任意の完全正規直交基底 \(\{|e_k\rangle\}\) を用いて:
しかし、より直接的に密度行列を用いる方法で計算する。電子の位置 \(x\) に到達する確率は:
正確には、\(P(x)\) は標識の状態空間でのトレースとして:
ここで \(|\Psi(x)\rangle\) は標識空間のベクトル \(\frac{1}{\sqrt{2}}(\phi_1(x)|m_1\rangle + \phi_2(x)|m_2\rangle)\) である。
\(\langle m_1|m_1\rangle = \langle m_2|m_2\rangle = 1\)、\(\langle m_1|m_2\rangle = \gamma\)(実数)、\(\langle m_2|m_1\rangle = \gamma^*= \gamma\) を代入:
干渉項の係数が \(\gamma\) で抑制されている。
2. 可視度 \(\mathcal{V}\) を \(\gamma\) で表す¶
\(|\phi_1| = |\phi_2| = A\) とする。\(\phi_1^*\phi_2 = A^2 e^{-i\delta}\) として:
最大値(\(\cos\delta = 1\)):\(P_{\max} = A^2(1 + \gamma)\)
最小値(\(\cos\delta = -1\)):\(P_{\min} = A^2(1 - \gamma)\)
3. 極限の確認¶
\(\gamma = 1\) のとき(\(|m_1\rangle = |m_2\rangle\)、標識が経路情報を持たない):
(最後の等式は \(|\phi_1+\phi_2|^2 = |\phi_1|^2 + |\phi_2|^2 + 2\mathrm{Re}(\phi_1^*\phi_2)\) から確認できる。)
完全な干渉縞が回復する。\(\mathcal{V} = 1\)。本文の「経路識別が全くできない場合に干渉が回復する」という議論と一致。 ✓
\(\gamma = 0\) のとき(\(\langle m_1|m_2\rangle = 0\)、完全に区別可能):
干渉項が完全に消失。\(\mathcal{V} = 0\)。本文の「完全な経路識別で干渉が消える」という議論と一致。 ✓
4. Englert の相補性不等式 \(\mathcal{V}^2 + \mathcal{D}^2 = 1\)¶
\(\mathcal{V} = \gamma\) および \(\mathcal{D} = \sqrt{1 - \gamma^2}\) より:
物理的意味: 干渉の可視度(波動性の指標)と経路の区別可能性(粒子性の指標)は相補的な関係にある。一方を完全に得ると他方は完全に失われ、部分的な情報の場合は両者がトレードオフの関係にある。これは Bohr (ボーア) の相補性原理の定量的表現である。
検算: - \(\gamma = 1\): \(\mathcal{V} = 1\), \(\mathcal{D} = 0\), \(1 + 0 = 1\) ✓ - \(\gamma = 0\): \(\mathcal{V} = 0\), \(\mathcal{D} = 1\), \(0 + 1 = 1\) ✓ - \(\gamma = 1/\sqrt{2}\): \(\mathcal{V} = 1/\sqrt{2}\), \(\mathcal{D} = 1/\sqrt{2}\), \(1/2 + 1/2 = 1\) ✓
A-2. 遅延選択実験 (delayed choice experiment) の解析¶
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1. 50:50 ビームスプリッターでの出力振幅¶
\(t = 1/\sqrt{2}\), \(r = i/\sqrt{2}\) として:
\(\phi_1 = |\phi_1|e^{i\alpha}\), \(\phi_2 = |\phi_2|e^{i\beta}\), \(\delta = \alpha - \beta\) とおく。
\(|\phi_A|^2\) の計算:
交差項を丁寧に計算する:
\(\phi_1^*\phi_2 = |\phi_1||\phi_2|e^{i(\beta-\alpha)} = |\phi_1||\phi_2|e^{-i\delta}\) なので:
したがって:
\(|\phi_B|^2\) の計算:
交差項:
2. \(|\phi_1| = |\phi_2| = 1/\sqrt{2}\) のとき¶
\(|\phi_A|^2\) と \(|\phi_B|^2\) はともに位相差 \(\delta\) の関数として振動する。\(\delta\) はスクリーン上の位置(あるいは 2 つの経路の光路差)に依存するので、干渉が観測される。
具体的に: - \(\delta = \pi/2\) のとき:\(|\phi_A|^2 = 1\), \(|\phi_B|^2 = 0\)(全ての電子がポート A に出る) - \(\delta = -\pi/2\) のとき:\(|\phi_A|^2 = 0\), \(|\phi_B|^2 = 1\)(全ての電子がポート B に出る) - \(\delta = 0\) のとき:\(|\phi_A|^2 = |\phi_B|^2 = 1/2\)(等分配)
出力ポートの検出確率が位相差に依存して変動することは、干渉の明確な証拠である。
検算: \(|\phi_A|^2 + |\phi_B|^2 = \frac{1}{2}(1+\sin\delta) + \frac{1}{2}(1-\sin\delta) = 1\) ✓(確率の保存)。
3. ビームスプリッターを除去した場合¶
ビームスプリッターを除去すると、\(\phi_A = \phi_1\), \(\phi_B = \phi_2\) となる。
検出器 A で電子が検出されれば「経路 1 を通った」、検出器 B で検出されれば「経路 2 を通った」と結論できる。経路情報が得られる。
しかし、\(|\phi_A|^2\) と \(|\phi_B|^2\) はいずれも位相差 \(\delta\) に依存しない定数(\(1/2\))である。干渉は観測されない。
これは本文のルール「過程が原理的に区別できるとき → 確率を足す(干渉なし)」の具体例である。
4. 古典的実在論との矛盾¶
古典的実在論の仮定: 電子はスリットを通過する時点で、確定した経路(孔 1 または孔 2)を持つ。この経路は、後から何をしようと変わらない(過去の事実は確定している)。
矛盾の論証:
もし電子がスリット通過時点で経路が確定しているなら:
- 「孔 1 を通った電子」と「孔 2 を通った電子」の 2 つの集団が存在する
- 後からビームスプリッターを入れるか入れないかは、すでに通過した電子の経路を変えることはできない
- したがって、ビームスプリッターの有無にかかわらず、検出パターンは同じ(\(P_1 + P_2\))になるはず
しかし実験結果は: - ビームスプリッターを挿入すると干渉パターン(\(\sin\delta\) 依存性)が現れる - ビームスプリッターを除去すると干渉が消え、経路情報が得られる
電子がスリットを通過した後に(遅延選択で)ビームスプリッターの挿入/除去を決めても、結果は変わらない。これは「通過時点で経路が確定していた」という仮定と矛盾する。
結論: 電子は測定装置の最終的な配置が確定するまで、「どちらの経路を通ったか」が確定した事実として存在しない。Wheeler の遅延選択実験は、過去の事象でさえ、測定が完了するまでは確定した実在を持たないことを示唆する。これは古典的実在論(物理量は測定とは独立に確定した値を持つ)の根本的な否定である。
検算: この結論は因果律に違反しない。なぜなら、ビームスプリッターの選択によって過去に「信号を送る」ことはできないからである。個々の電子の検出位置はランダムであり、干渉パターンは多数の電子を集計して初めて現れる。したがって、遅延選択の結果を利用して超光速通信を行うことは不可能である ✓。
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