第 7 章 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 相互作用項の質量次元
- B-2. 相互作用描像の演算子の時間微分
- B-3. 時間順序積の具体的計算
- B-4. \(\hat{\phi}^4\) の演算子構造
- B-5. Dyson 級数の 1 次の項
- B-6. 時間順序積の対称性
- B-7. \(\hat{S} = \mathbb{1} + i\hat{T}\) の分解
- B-8. 相互作用 Hamiltonian の描像変換
Medium(標準)
- M-1. 相互作用描像の状態の運動方程式の導出
- M-2. Dyson 級数 2 次の項と時間順序積
- M-3. \(\phi^4\) 理論の 2→2 散乱振幅(最低次)
- M-4. 正規順序と Wick の定理(2 場の場合)
- M-5. S 行列のユニタリ性と確率保存
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 相互作用項の質量次元¶
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問題:
\(d\) 次元時空(\(d = 4\) の場合)で、自然単位系 \(\hbar = c = 1\) において \([\mathcal{L}] = d = 4\)、\([\phi] = 1\) である。以下の相互作用項それぞれについて、結合定数の質量次元を求めよ。
(a) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -g\,\phi^3\)
(b) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\lambda}{4!}\,\phi^4\)
(c) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\kappa}{5!}\,\phi^5\)
(d) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\eta}{6!}\,\phi^6\)
解法の方針:
4 次元時空の自然単位系で \([\mathcal{L}] = 4\)、\([\phi] = 1\) である。相互作用項 \(\mathcal{L}_{\text{int}}\) の質量次元が 4 になる条件から、結合定数の質量次元を求める。
計算:
\([\text{結合定数}] + n[\phi] = 4\) より \([\text{結合定数}] = 4 - n\)。
(a) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -g\,\phi^3\):
(b) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\lambda}{4!}\,\phi^4\):
(c) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\kappa}{5!}\,\phi^5\):
(d) \(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\eta}{6!}\,\phi^6\):
最終回答:
| 相互作用項 | 結合定数の質量次元 | 繰り込み可能性 |
|---|---|---|
| \(g\,\phi^3\) | \([g] = 1\) | super-renormalizable |
| \(\frac{\lambda}{4!}\,\phi^4\) | \([\lambda] = 0\) | marginal (renormalizable) |
| \(\frac{\kappa}{5!}\,\phi^5\) | \([\kappa] = -1\) | non-renormalizable |
| \(\frac{\eta}{6!}\,\phi^6\) | \([\eta] = -2\) | non-renormalizable |
検算:
質量次元が負の結合定数をもつ理論は、ループ補正の次数が上がるごとに新しい発散構造が現れ、有限個の反項では繰り込めない(non-renormalizable)。\([\lambda] = 0\) の \(\phi^4\) 理論が繰り込み可能であることは、4 次元の場の量子論の標準的結果と一致する。
B-2. 相互作用描像の演算子の時間微分¶
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問題:
相互作用描像の場の演算子が \(\hat{\phi}_I(t, \mathbf{x}) = e^{i\hat{H}_0 t}\,\hat{\phi}_S(\mathbf{x})\,e^{-i\hat{H}_0 t}\) で定義されるとき、式 (7.3) を直接計算して
が成り立つことを示せ。途中の微分計算を省略せずに書き下すこと。
解法の方針:
\(\hat{\phi}_I(t, \mathbf{x}) = e^{i\hat{H}_0 t}\,\hat{\phi}_S(\mathbf{x})\,e^{-i\hat{H}_0 t}\) を \(t\) で微分し、積の微分則を適用する。
計算の詳細:
\(\hat{\phi}_I(t, \mathbf{x})\) を \(t\) で微分する。3 つの因子の積なので、積の微分則を適用する:
(\(\hat{\phi}_S(\mathbf{x})\) は時間に依存しないので、中間の項は寄与しない。)
各指数関数の微分は:
代入すると:
第 1 項は \(i\hat{H}_0\,\hat{\phi}_I(t, \mathbf{x})\) と認識でき、第 2 項は \(-i\,\hat{\phi}_I(t, \mathbf{x})\,\hat{H}_0\) と認識できる(\(\hat{H}_0 = e^{i\hat{H}_0 t}\hat{H}_0 e^{-i\hat{H}_0 t}\) は \(\hat{H}_0\) が自分自身と交換するため)。
したがって:
両辺に \(i\) をかけると:
検算:
右辺の交換子 \([\hat{\phi}_I, \hat{H}_0] = \hat{\phi}_I \hat{H}_0 - \hat{H}_0 \hat{\phi}_I = -[\hat{H}_0, \hat{\phi}_I]\) なので、\(i\frac{\partial}{\partial t}\hat{\phi}_I = -i[\hat{H}_0, \hat{\phi}_I] \cdot (-1) = [\hat{\phi}_I, \hat{H}_0]\)。符号が整合していることを確認した。また、この結果は Heisenberg 描像の運動方程式 \(i\frac{d}{dt}\hat{O}_H = [\hat{O}_H, \hat{H}]\) で \(\hat{H} \to \hat{H}_0\) としたものに対応しており、相互作用描像の演算子が自由 Hamiltonian で発展するという性質と一致する。
B-3. 時間順序積の具体的計算¶
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問題:
スカラー場 \(\hat{\phi}_I(x)\) に対し、時間順序積の定義 (7.14) を用いて以下を計算せよ(\(x^0 > y^0\) と仮定)。
(a) \(T[\hat{\phi}_I(x)\,\hat{\phi}_I(y)]\) を通常の積で書き下せ。
(b) \(x^0 < y^0\) の場合はどうなるか。
(c) 2 点の時間順序積の真空期待値 \(\langle 0|T[\hat{\phi}_I(x)\,\hat{\phi}_I(y)]|0\rangle\) が Feynman 伝播関数 (Feynman propagator)
に等しいことを確認するために、\(\hat{\phi}_I\) のモード展開 (7.4) を代入し、\(\langle 0|\hat{a}_{\mathbf{p}}\hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger|0\rangle = (2\pi)^3\delta^3(\mathbf{p} - \mathbf{q})\) を使って \(x^0 > y^0\) の場合の表式を書き下せ。
(a) \(x^0 > y^0\) の場合:
時間順序積の定義 (7.14) より、時刻が遅い演算子を左に置く:
(b) \(x^0 < y^0\) の場合:
(c) 真空期待値と Feynman 伝播関数:
\(\hat{\phi}_I(x)\) を正の振動数部分(消滅演算子を含む)と負の振動数部分(生成演算子を含む)に分ける:
ここで
\(x^0 > y^0\) のとき:
\(\hat{a}_{\mathbf{p}}|0\rangle = 0\) より、\(\hat{\phi}^{(+)}\) が右端に来る項と \(\hat{\phi}^{(-)}\) が左端に来る項は消える。非零の寄与は:
モード展開を代入すると:
\(\langle 0|\hat{a}_{\mathbf{p}}\,\hat{a}_{\mathbf{q}}^\dagger|0\rangle = (2\pi)^3\delta^3(\mathbf{p} - \mathbf{q})\) を使うと:
ここで \(p\cdot(x-y) = \omega_{\mathbf{p}}(x^0 - y^0) - \mathbf{p}\cdot(\mathbf{x} - \mathbf{y})\)、\(p^0 = \omega_{\mathbf{p}}\) である。
検算:
この表式は Feynman 伝播関数の \(p^0\) 積分を留数定理で実行した結果の \(x^0 > y^0\) の場合に一致する。実際、\(D_F(x-y) = \int \frac{d^4p}{(2\pi)^4}\,\frac{i}{p^2 - m^2 + i\epsilon}\) の \(p^0\) 積分を下半面の極 \(p^0 = \omega_{\mathbf{p}} - i\epsilon\) で拾うと、\(x^0 > y^0\) のとき上記の表式が得られる。
B-4. \(\hat{\phi}^4\) の演算子構造¶
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問題:
\(\hat{\phi}_I \sim \hat{a} + \hat{a}^\dagger\) と模式的に書くとき、\(\hat{\phi}_I^4\) を展開すると生成・消滅演算子の組み合わせが現れる。以下の各項が「粒子数をいくつ変えるか」を答えよ。
(a) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\)
(b) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}\)
(c) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}\,\hat{a}\)
(d) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}\,\hat{a}\,\hat{a}\)
(e) \(\hat{a}\,\hat{a}\,\hat{a}\,\hat{a}\)
解法の方針:
\(\hat{a}^\dagger\) は粒子数を \(+1\)、\(\hat{a}\) は粒子数を \(-1\) 変化させる。各項の粒子数変化は \((\hat{a}^\dagger \text{の個数}) - (\hat{a} \text{の個数})\) で与えられる。
最終回答:
(a) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\):\(4 - 0 = +4\)(粒子を 4 個生成)
(b) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}\):\(3 - 1 = +2\)(粒子を 2 個増やす)
(c) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}^\dagger\hat{a}\,\hat{a}\):\(2 - 2 = 0\)(粒子数不変、2→2 散乱)
(d) \(\hat{a}^\dagger\hat{a}\,\hat{a}\,\hat{a}\):\(1 - 3 = -2\)(粒子を 2 個減らす)
(e) \(\hat{a}\,\hat{a}\,\hat{a}\,\hat{a}\):\(0 - 4 = -4\)(粒子を 4 個消滅)
検算:
全ての場合を合わせると、\(\hat{\phi}^4\) の展開には粒子数を \(+4, +2, 0, -2, -4\) 変化させる項が含まれる。これは \((\hat{a} + \hat{a}^\dagger)^4\) の二項展開で \(\hat{a}^\dagger\) が \(k\) 個、\(\hat{a}\) が \(4-k\) 個の項(\(k = 0, 1, 2, 3, 4\))に対応し、粒子数変化 \(2k - 4\) が \(-4, -2, 0, +2, +4\) となることと一致する。
B-5. Dyson 級数の 1 次の項¶
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問題:
\(\phi^4\) 理論で \(\hat{H}_I(t) = \frac{\lambda}{4!}\int d^3x\,\hat{\phi}_I^4(t, \mathbf{x})\) とする。Dyson 級数 (7.16) の 1 次の項を明示的に書き下せ。すなわち
を 4 次元積分の形 \(\int d^4x\) で書き直し、Lorentz 不変な表式にせよ。
解法の方針:
\(\hat{H}_I(t) = \frac{\lambda}{4!}\int d^3x\,\hat{\phi}_I^4(t, \mathbf{x})\) を Dyson 級数の 1 次の項に代入し、4 次元積分にまとめる。
計算:
\(dt_1\,d^3x = d^4x\) とまとめると:
符号の確認:
\(\mathcal{L}_{\text{int}} = -\frac{\lambda}{4!}\phi^4\) より \(\hat{H}' = -\int d^3x\,\mathcal{L}_{\text{int}} = +\frac{\lambda}{4!}\int d^3x\,\phi^4\)。したがって \(\hat{H}_I(t) = +\frac{\lambda}{4!}\int d^3x\,\hat{\phi}_I^4\)。\(\hat{S}^{(1)} = (-i)\int dt\,\hat{H}_I = \frac{-i\lambda}{4!}\int d^4x\,\hat{\phi}_I^4\)。
別の書き方として \(\hat{S}^{(1)} = i\int d^4x\,\mathcal{L}_{\text{int}}\) とも書ける:
一致している。この表式は Lorentz 不変である(\(d^4x\) と \(\hat{\phi}_I^4(x)\) はともに Lorentz スカラー)。
B-6. 時間順序積の対称性¶
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問題:
3 つの時刻 \(t_1, t_2, t_3\) に対する時間順序積 \(T[\hat{H}_I(t_1)\hat{H}_I(t_2)\hat{H}_I(t_3)]\) を考える。
(a) \(t_1 > t_2 > t_3\) のとき、\(T[\hat{H}_I(t_1)\hat{H}_I(t_2)\hat{H}_I(t_3)]\) を通常の積で書け。
(b) \(t_3 > t_1 > t_2\) のとき、同様に書け。
(c) 3 つの時刻変数の順列は何通りあるか。これが Dyson 級数 3 次の \(1/3!\) の由来であることを確認せよ。
(a) \(t_1 > t_2 > t_3\) のとき:
時間順序積は時刻が遅い演算子を左に置くので:
(すでに時間順序になっている)
(b) \(t_3 > t_1 > t_2\) のとき:
最も遅い \(t_3\) を左、次に \(t_1\)、最後に \(t_2\):
(c) 順列の数:
3 つの時刻変数 \(t_1, t_2, t_3\) の大小関係の順列は \(3! = 6\) 通りある。
Dyson 級数の 3 次の項は、元々の積分が
と時間順序付き(\(t_3 \le t_2 \le t_1\))の領域のみの積分である。時間順序積を使えば積分領域を立方体 \([t_0, t]^3\) 全体に拡張でき、6 通りの順列が同じ寄与をするため \(1/3!\) で割る:
B-7. \(\hat{S} = \mathbb{1} + i\hat{T}\) の分解¶
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問題:
S 演算子を \(\hat{S} = \mathbb{1} + i\hat{T}\) と書くとき、以下を示せ。
(a) S 行列のユニタリ性 \(\hat{S}^\dagger\hat{S} = \mathbb{1}\) から、\(\hat{T}\) が満たすべき条件(光学定理の出発点)を導け。
(b) 初期状態と終状態が同じ \(|i\rangle = |f\rangle\) の場合、\(\langle i|\hat{S}|i\rangle\) の最低次(\(\lambda^0\))の値を答えよ。
(a) \(\hat{T}\) が満たすべき条件:
\(\hat{S}^\dagger\hat{S} = \mathbb{1}\) に \(\hat{S} = \mathbb{1} + i\hat{T}\) を代入する:
したがって:
あるいは等価的に:
これは光学定理 (optical theorem) の演算子版である。特定の状態 \(|i\rangle\) の行列要素を取り、完全系 \(\sum_f |f\rangle\langle f| = \mathbb{1}\) を右辺に挿入すると:
左辺は前方散乱振幅の虚部の 2 倍、右辺は全散乱断面積に比例する。
(b) 最低次の値:
\(\hat{S} = \mathbb{1} + i\hat{T}\) で \(\hat{T} = O(\lambda)\) なので、\(|i\rangle = |f\rangle\) のとき:
検算:
これは「相互作用がなければ散乱は起きず、状態はそのまま」という物理的要請と一致する。
B-8. 相互作用 Hamiltonian の描像変換¶
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問題:
Schrödinger 描像の相互作用 Hamiltonian が \(\hat{H}' = \frac{\lambda}{4!}\int d^3x\,\hat{\phi}_S^4(\mathbf{x})\) で与えられるとき、相互作用描像での \(\hat{H}_I(t)\)(式 (7.7))が
となることを、\(\hat{\phi}_I(t, \mathbf{x}) = e^{i\hat{H}_0 t}\hat{\phi}_S(\mathbf{x})e^{-i\hat{H}_0 t}\) の定義を使って示せ。
解法の方針:
\(e^{i\hat{H}_0 t}\hat{\phi}_S^4(\mathbf{x})e^{-i\hat{H}_0 t}\) に単位演算子を挿入して \(\hat{\phi}_I^4\) を得る。
計算の詳細:
\(\hat{\phi}_S\) と \(\hat{\phi}_S\) の間に \(e^{-i\hat{H}_0 t}e^{i\hat{H}_0 t} = \mathbb{1}\) を 3 回挿入する:
検算:
\(\hat{\phi}_I(t, \mathbf{x}) = e^{i\hat{H}_0 t}\hat{\phi}_S(\mathbf{x})e^{-i\hat{H}_0 t}\) の定義を 4 回使っただけなので、結果は自明に正しい。また、\(\lambda = 0\) のとき \(\hat{H}_I = 0\) となり、相互作用がない場合に状態が変化しないことと整合する。
Medium(標準)¶
M-1. 相互作用描像の状態の運動方程式の導出¶
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問題:
式 (7.5) の定義 \(|\psi_I(t)\rangle = e^{i\hat{H}_0 t}|\psi(t)\rangle_S\) から出発し、以下の手順で式 (7.6) を丁寧に導出せよ。
(a) \(|\psi_I(t)\rangle\) を \(t\) で微分し、Schrödinger 方程式 \(i\frac{d}{dt}|\psi(t)\rangle_S = (\hat{H}_0 + \hat{H}')|\psi(t)\rangle_S\) を代入せよ。
(b) \(\hat{H}_0\) の項がキャンセルすることを確認し、残る項から \(\hat{H}_I(t) = e^{i\hat{H}_0 t}\hat{H}'e^{-i\hat{H}_0 t}\) が自然に現れることを示せ。
(c) もし \([\hat{H}_0, \hat{H}'] = 0\) が成り立つ場合、\(\hat{H}_I(t)\) はどうなるか。この場合に摂動論が不要になる理由を物理的に説明せよ。
(a) \(|\psi_I(t)\rangle\) の時間微分:
を \(t\) で微分する:
第 1 項:
第 2 項に Schrödinger 方程式 \(i\frac{d}{dt}|\psi(t)\rangle_S = (\hat{H}_0 + \hat{H}')|\psi(t)\rangle_S\) を代入:
合わせると:
(b) \(\hat{H}_0\) の項のキャンセル:
第 1 項と第 2 項を見ると:
\(\hat{H}_0\) は \(e^{i\hat{H}_0 t}\) と交換する(\([\hat{H}_0, e^{i\hat{H}_0 t}] = 0\))ので:
残る項は:
ここで \(|\psi(t)\rangle_S = e^{-i\hat{H}_0 t}|\psi_I(t)\rangle\) を代入:
ここで \(\hat{H}_I(t) = e^{i\hat{H}_0 t}\hat{H}'e^{-i\hat{H}_0 t}\) が自然に現れた。
(c) \([\hat{H}_0, \hat{H}'] = 0\) の場合:
\([\hat{H}_0, \hat{H}'] = 0\) ならば:
(\(\hat{H}'\) が \(\hat{H}_0\) と交換するので、ユニタリ変換で不変)
この場合 \(\hat{H}_I(t)\) は時間に依存しない定数演算子 \(\hat{H}'\) になる。
物理的理由: \([\hat{H}_0, \hat{H}'] = 0\) が成り立つとき、\(\hat{H}_0\) と \(\hat{H}'\) は同時対角化可能である。したがって全 Hamiltonian \(\hat{H} = \hat{H}_0 + \hat{H}'\) の固有状態は \(\hat{H}_0\) の固有状態と同じ基底で書け、エネルギー固有値は単に \(E_n = E_n^{(0)} + E_n'\) と加法的になる。厳密解が得られるため、摂動展開は不要である。
ただし場の量子論では、\(\hat{H}_{\text{int}}\) は場の 3 次以上の項を含み、粒子数を変えるため、一般に \([\hat{H}_0, \hat{H}'] \neq 0\) であり、摂動論が必要になる。
M-2. Dyson 級数 2 次の項と時間順序積¶
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問題:
Dyson 級数の 2 次の項
に対して、以下を示せ。
(a) 積分変数 \(t_1 \leftrightarrow t_2\) を入れ替え、\(t_0 \le t_1 \le t_2 \le t\) の領域で \(\hat{H}_I(t_2)\hat{H}_I(t_1)\) が現れることを確認せよ。
(b) 上記 2 つの寄与を足し合わせると
となることを示せ。
(c) この結果を \(n\) 次に一般化して Dyson 級数 (7.16) の形を得よ。一般化の論理を述べよ(厳密な証明でなくてよい)。
(a) 変数の入れ替え:
元の 2 次の項は:
積分領域は \((t_1, t_2)\) 平面上の三角形 \(\mathcal{R}_1: t_0 \le t_2 \le t_1 \le t\) である。
ここで積分変数を \(t_1 \leftrightarrow t_2\) と入れ替える(ダミー変数の名前を交換するだけ):
この積分領域は \(\mathcal{R}_2: t_0 \le t_1 \le t_2 \le t\) であり、この領域では \(t_2 > t_1\) なので \(\hat{H}_I(t_2)\) が時間的に後——つまり \(\hat{H}_I(t_2)\hat{H}_I(t_1)\) は時間順序になっている。
(b) 2 つの寄与の合成:
元の積分(領域 \(\mathcal{R}_1\))では \(t_1 > t_2\) なので:
入れ替え後の積分(領域 \(\mathcal{R}_2\))では \(t_2 > t_1\) なので:
2 つの三角形 \(\mathcal{R}_1 \cup \mathcal{R}_2\) は正方形 \([t_0, t]^2\) 全体を覆う(\(t_1 = t_2\) の対角線上は測度ゼロなので無視できる)。
元の積分は \(\mathcal{R}_1\) 上のみの積分であり、入れ替え後の積分と等しい(ダミー変数の名前を戻せば同じ式)。したがって:
\(\mathcal{R}_1\) と \(\mathcal{R}_2\) の寄与は等しいので:
したがって:
(c) \(n\) 次への一般化:
\(n\) 次の項は元々:
と時間順序付き領域 \(t_n \le \cdots \le t_2 \le t_1\) 上の積分である。
\(n\) 個の時刻変数の順列は \(n!\) 通りあり、時間順序積 \(T\) を使えばどの順列でも正しい演算子の順序が自動的に保証される。\(n!\) 個の三角形領域を合わせると超立方体 \([t_0, t]^n\) 全体になり、各領域の寄与は等しいので:
これが Dyson 級数である。\(t_0 \to -\infty\), \(t \to +\infty\) で S 演算子 \(\hat{S} = T\exp\left(-i\int_{-\infty}^{+\infty}dt\,\hat{H}_I(t)\right)\) を得る。
M-3. \(\phi^4\) 理論の 2→2 散乱振幅(最低次)¶
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問題:
\(\phi^4\) 理論で、初期状態 \(|i\rangle = |\mathbf{p}_1, \mathbf{p}_2\rangle = \hat{a}_{\mathbf{p}_1}^\dagger\hat{a}_{\mathbf{p}_2}^\dagger|0\rangle\)、終状態 \(|f\rangle = |\mathbf{p}_3, \mathbf{p}_4\rangle = \hat{a}_{\mathbf{p}_3}^\dagger\hat{a}_{\mathbf{p}_4}^\dagger|0\rangle\) として、S 行列の最低次(\(\lambda\) の 1 次)の寄与
を以下の手順で計算せよ。
(a) \(\hat{\phi}_I(x)\) のモード展開 (7.4) を代入し、\(\hat{\phi}_I^4(x)\) の中から「2 個消滅・2 個生成」の項を抽出せよ。
(b) 生成・消滅演算子の交換関係を用いて、結果が
(外線因子を含む形)に比例することを示せ。\(4!\) の因子がどのようにキャンセルするかを明示すること。
(c) この結果から、不変散乱振幅 \(\mathcal{M}\) が最低次で \(\mathcal{M} = -\lambda\) であることを読み取れ。
(a) \(\hat{\phi}_I^4(x)\) から「2 個消滅・2 個生成」の項を抽出:
\(\hat{\phi}_I(x) = \hat{\phi}^{(+)}(x) + \hat{\phi}^{(-)}(x)\) と書く。\(\hat{\phi}_I^4(x)\) を展開すると、\(\hat{\phi}^{(+)}\) が \(k\) 個、\(\hat{\phi}^{(-)}\) が \(4-k\) 個の項が現れる(\(k = 0, 1, 2, 3, 4\))。
初期状態 \(|i\rangle = |\mathbf{p}_1, \mathbf{p}_2\rangle\) は 2 粒子状態、終状態 \(|f\rangle = |\mathbf{p}_3, \mathbf{p}_4\rangle\) も 2 粒子状態。行列要素 \(\langle f|\hat{\phi}_I^4|i\rangle\) が非零になるためには、\(\hat{\phi}_I^4\) が初期状態の 2 粒子を消滅させ(\(\hat{\phi}^{(+)}\) が 2 個)、終状態の 2 粒子を生成する(\(\hat{\phi}^{(-)}\) が 2 個)必要がある。
したがって必要な項は \(k = 2\)(消滅部分 2 個、生成部分 2 個):
4 つの場のうちどの 2 つが \(\hat{\phi}^{(+)}\) でどの 2 つが \(\hat{\phi}^{(-)}\) かの組み合わせは \(\binom{4}{2} = 6\) 通りある。
(b) 組み合わせ因子の計算と結果:
モード展開を代入する。\(\hat{\phi}^{(+)}(x)\) の中の \(\hat{a}_{\mathbf{k}}\) が初期状態の \(\hat{a}_{\mathbf{p}_1}^\dagger\) または \(\hat{a}_{\mathbf{p}_2}^\dagger\) と交換関係を使って消滅させる。同様に \(\hat{\phi}^{(-)}(x)\) の中の \(\hat{a}_{\mathbf{k}}^\dagger\) が終状態の \(\hat{a}_{\mathbf{p}_3}^\dagger\) または \(\hat{a}_{\mathbf{p}_4}^\dagger\) と対応する。
組み合わせ因子の数え上げ:
- 4 つの場のうちどの 2 つが消滅演算子を提供するか:\(\binom{4}{2} = 6\) 通り
- 選ばれた 2 つの消滅演算子のうち、どちらが \(\mathbf{p}_1\) を消し、どちらが \(\mathbf{p}_2\) を消すか:\(2! = 2\) 通り
- 残り 2 つの生成演算子のうち、どちらが \(\mathbf{p}_3\) を作り、どちらが \(\mathbf{p}_4\) を作るか:\(2! = 2\) 通り
合計:\(6 \times 2 \times 2 = 24 = 4!\) 通り
これが \(\frac{1}{4!}\) の因子と打ち消し合う。
具体的に計算する。\(\hat{\phi}^{(+)}(x)\) が \(\mathbf{p}_1\) を消滅させるとき:
全ての寄与を集めると、\(x\) 積分から運動量保存のデルタ関数が出る:
最終的に:
(c) 不変散乱振幅 \(\mathcal{M}\):
S 行列要素の標準的な分解は:
(外線因子の慣習は教科書により異なるが、ここでは \(1/\sqrt{2\omega}\) を外線因子として含む形を採用)
\(\langle f|i\rangle = 0\)(\(|i\rangle \neq |f\rangle\) と仮定)として比較すると:
ここで慣習を整理する。\(\langle f|i\hat{T}|i\rangle = i\mathcal{M}\,(2\pi)^4\delta^4(p_i - p_f)\prod\frac{1}{\sqrt{2\omega}}\) と定義すれば:
検算:
- 次元解析: \(\lambda\) は無次元なので \(\mathcal{M}\) も無次元。4 次元の 2→2 散乱では \([\mathcal{M}] = 0\) が正しい。
- 運動量保存: \((2\pi)^4\delta^4(p_1 + p_2 - p_3 - p_4)\) が現れ、4 元運動量が保存されている。
- \(4!\) のキャンセル: \(\phi^4\) の \(1/4!\) と 24 通りの組み合わせが正確にキャンセルし、結果は単に \(-\lambda\) となる。これは \(\phi^4\) 頂点の Feynman 規則(頂点因子 \(-i\lambda\))と一致する。
M-4. 正規順序と Wick の定理(2 場の場合)¶
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問題:
自由スカラー場 \(\hat{\phi}_I(x)\) を正の振動数部分 \(\hat{\phi}^{(+)}(x)\)(消滅演算子を含む)と負の振動数部分 \(\hat{\phi}^{(-)}(x)\)(生成演算子を含む)に分け、\(\hat{\phi}_I = \hat{\phi}^{(+)} + \hat{\phi}^{(-)}\) とする。
(a) 正規順序 (normal ordering) \(:\hat{\phi}_I(x)\hat{\phi}_I(y):\) の定義を述べ、具体的に \(\hat{\phi}^{(\pm)}\) を使って書き下せ。
(b) 収縮 (contraction) を
と定義するとき、これが c 数(演算子でない数)であることを示し、Feynman 伝播関数 \(D_F(x-y)\) に等しいことを確認せよ。
(c) 以上から、2 場に対する Wick の定理
を導け。
(a) 正規順序の定義:
正規順序 (normal ordering) \(:\hat{O}:\) とは、演算子の積において全ての生成演算子 \(\hat{a}^\dagger\)(すなわち \(\hat{\phi}^{(-)}\))を消滅演算子 \(\hat{a}\)(すなわち \(\hat{\phi}^{(+)}\))の左に並べ替える操作である。ボソンの場合、並べ替えに伴う符号変化はない。
具体的に:
展開して正規順序を適用すると:
注意:\(\hat{\phi}^{(-)}(x)\hat{\phi}^{(+)}(y)\) と \(\hat{\phi}^{(-)}(y)\hat{\phi}^{(+)}(x)\) の項では、生成部分が左、消滅部分が右にすでになっている。
(b) 収縮が c 数であることの証明:
収縮の定義:
\(x^0 > y^0\) の場合:
展開すると:
正規順序との差を取ると:
この交換子を計算する:
これは c 数(演算子を含まない関数)である。
同様に \(x^0 < y^0\) の場合は \([\hat{\phi}^{(+)}(y),\, \hat{\phi}^{(-)}(x)]\) が現れ、やはり c 数である。
D3(c) で示したように、\(x^0 > y^0\) のとき:
(正規順序の真空期待値は \(\langle 0|:\hat{\phi}(x)\hat{\phi}(y):|0\rangle = 0\) なので)
したがって:
(c) 2 場に対する Wick の定理:
(b) の結果を移項すれば直ちに:
これが 2 場に対する Wick の定理である。
検算:
両辺の真空期待値を取る:
- 左辺:\(\langle 0|T[\hat{\phi}(x)\hat{\phi}(y)]|0\rangle = D_F(x-y)\)
- 右辺:\(\langle 0|:\hat{\phi}(x)\hat{\phi}(y):|0\rangle + D_F(x-y) = 0 + D_F(x-y)\)
一致する。✓
M-5. S 行列のユニタリ性と確率保存¶
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問題:
S 演算子がユニタリ \(\hat{S}^\dagger\hat{S} = \hat{S}\hat{S}^\dagger = \mathbb{1}\) であることを、以下の手順で確認せよ。
(a) \(\hat{U}_I(t, t_0)\) の定義 (7.9) から、\(\hat{U}_I^\dagger(t, t_0) = \hat{U}_I(t_0, t)\)(逆方向の時間発展)が成り立つことを示せ。
(b) \(\hat{U}_I(t, t_0)\hat{U}_I(t_0, t) = \mathbb{1}\) を示し、\(t \to +\infty\), \(t_0 \to -\infty\) の極限で \(\hat{S}^\dagger\hat{S} = \mathbb{1}\) を得よ。
(c) ユニタリ性が物理的に意味するのは何か。完全系 \(\sum_f |f\rangle\langle f| = \mathbb{1}\) を挿入して確率の和が 1 になることを示せ。
(a) \(\hat{U}_I^\dagger(t, t_0) = \hat{U}_I(t_0, t)\) の証明:
\(\hat{U}_I(t, t_0)\) は微分方程式 (7.9) を満たす:
この随伴を取る(\(\hat{H}_I^\dagger = \hat{H}_I\) を使う):
一方、\(\hat{U}_I(t_0, t)\) が満たす方程式を考える。\(\hat{U}_I(t_0, t)\) は「\(t\) から \(t_0\) への」時間発展なので、\(t\) に関する微分方程式は:
(符号が反転するのは、\(\hat{U}_I(t_0, t)\) では \(t\) が「出発時刻」ではなく「到着時刻の逆」として機能するため。形式的には \(\hat{U}_I(t, t_0)\hat{U}_I(t_0, t) = \mathbb{1}\) を \(t\) で微分して導ける。)
整理すると:
これは \(\hat{U}_I^\dagger(t, t_0)\) の満たす方程式と同一であり、初期条件も \(\hat{U}_I^\dagger(t_0, t_0) = \mathbb{1} = \hat{U}_I(t_0, t_0)\) で一致する。微分方程式の解の一意性から:
(b) ユニタリ性の証明:
時間発展演算子の群性質 \(\hat{U}_I(t, t_1)\hat{U}_I(t_1, t_0) = \hat{U}_I(t, t_0)\) において \(t = t_0\) とすると:
(a) の結果 \(\hat{U}_I(t_0, t_1) = \hat{U}_I^\dagger(t_1, t_0)\) を代入:
\(t_1 \to +\infty\), \(t_0 \to -\infty\) の極限を取ると:
同様に \(\hat{U}_I(t_1, t_0)\hat{U}_I(t_0, t_1) = \mathbb{1}\) から \(\hat{S}\hat{S}^\dagger = \mathbb{1}\) も得られる。
(c) 確率保存の物理的意味:
ユニタリ性は確率の保存を意味する。初期状態 \(|i\rangle\) から出発して、あらゆる可能な終状態 \(|f\rangle\) への遷移確率の総和が 1 になることを示す。
完全系 \(\sum_f |f\rangle\langle f| = \mathbb{1}\) を挿入すると:
これは「粒子は必ずどこかに行く」——散乱後に粒子が消滅してしまうことはない——という確率保存の要請そのものである。
Advanced(発展)¶
A-1. Yukawa 理論への拡張と Wick の定理の適用¶
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問題:
スカラー場 \(\phi\) と Dirac 場 \(\psi\) の Yukawa (湯川) 相互作用
を考える(\(g\) は Yukawa 結合定数)。
(a) 結合定数 \(g\) の質量次元を求めよ(4 次元時空、\([\psi] = 3/2\), \([\phi] = 1\))。
(b) この理論の S 行列の 1 次の項 \(\hat{S}^{(1)}\) を書き下せ。
(c) フェルミオン-フェルミオン散乱 \(\psi + \psi \to \psi + \psi\) の最低次の寄与は \(\hat{S}\) の何次から現れるか。その理由を、\(\hat{S}^{(1)}\) の演算子構造から説明せよ。
(d) 2 次の寄与 \(\hat{S}^{(2)}\) に Wick の定理を適用すると、スカラー場の収縮 \(D_F(x-y)\) が現れる。これが「\(\phi\) の交換」による力——すなわち Yukawa ポテンシャルの場の量子論的起源——であることを物理的に説明せよ。
(a) 結合定数 \(g\) の質量次元:
4 次元時空で \([\mathcal{L}] = 4\)、\([\psi] = 3/2\)、\([\phi] = 1\) である。
\(g\) は無次元であり、Yukawa 理論は繰り込み可能 (renormalizable) である。
(b) S 行列の 1 次の項:
\(\hat{H}' = -\int d^3x\,\mathcal{L}_{\text{int}} = g\int d^3x\,\hat{\bar{\psi}}\hat{\psi}\hat{\phi}\) より:
(c) フェルミオン-フェルミオン散乱の最低次:
\(\hat{S}^{(1)}\) の演算子構造を分析する。\(\hat{\bar{\psi}} \sim \hat{b}^\dagger + \hat{d}\)(フェルミオン生成 or 反フェルミオン消滅)、\(\hat{\psi} \sim \hat{b} + \hat{d}^\dagger\)(フェルミオン消滅 or 反フェルミオン生成)、\(\hat{\phi} \sim \hat{a} + \hat{a}^\dagger\)(スカラー粒子の生成 or 消滅)。
\(\hat{S}^{(1)}\) の各頂点は: - フェルミオンを 1 個消滅し、1 個生成する - スカラー粒子を 1 個生成または消滅する
\(\psi + \psi \to \psi + \psi\) の過程では、初期状態にフェルミオン 2 個、終状態にフェルミオン 2 個、スカラー粒子は外線にない。\(\hat{S}^{(1)}\) は 1 つの頂点しか持たず、フェルミオンを 1 個しか消滅できないため、初期状態の 2 個のフェルミオンを処理できない。
したがって、最低次の寄与は \(\hat{S}^{(2)}\)(\(g^2\) の 2 次)から現れる。2 つの頂点があれば、各頂点でフェルミオンを 1 個ずつ消滅・生成し、2 つの頂点間をスカラー場の内部線(伝播関数)で結ぶことができる。
(d) スカラー場の収縮と Yukawa ポテンシャル:
\(\hat{S}^{(2)}\) に Wick の定理を適用すると:
フェルミオン-フェルミオン散乱では、外線にスカラー粒子がないため、\(\hat{\phi}(x)\) と \(\hat{\phi}(y)\) は互いに収縮される:
物理的解釈: この収縮は、時空点 \(x\) でスカラー粒子が「仮想的に」生成され、\(y\) まで伝播して消滅する(あるいはその逆)過程を表す。これはまさにスカラー粒子の交換による力の媒介である。
運動量空間で非相対論的極限(\(|\mathbf{k}|^2 \ll m_\phi^2\)、\(k^0 \approx 0\))を取ると、スカラー伝播関数は:
これを座標空間に Fourier 変換すると:
これが Yukawa ポテンシャルである。量子力学 第 13 章の Born 近似で散乱振幅とポテンシャルの関係を思い出すと、場の量子論における「粒子の交換」が非相対論的極限で Yukawa 型のポテンシャルを再現することがわかる。スカラー粒子の質量 \(m_\phi\) が力の到達距離 \(\sim 1/m_\phi\) を決定する。
検算:
- \(m_\phi \to 0\) で \(V(r) \propto -g^2/(4\pi r)\)(Coulomb 型)に帰着する。
- \(m_\phi \to \infty\) で \(V(r) \to 0\)(重い媒介粒子は短距離力しか伝えない)。
- \([g] = 0\) なので \([g^2/r] = 1\)(エネルギーの次元)。ポテンシャルの次元が正しい。
A-2. 断熱仮説と Gell-Mann–Low の定理¶
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問題:
本章では \(t \to \pm\infty\) で相互作用が「消える」ことを暗黙に仮定した。これを厳密化するために、断熱スイッチング (adiabatic switching)
(\(\epsilon > 0\) は微小パラメータ、最終的に \(\epsilon \to 0^+\))を導入する。
(a) この処方箋のもとで、\(t \to \pm\infty\) で \(\hat{H}_I(t) \to 0\) となることを確認せよ。
(b) Gell-Mann–Low の定理は「相互作用する理論の真空状態 \(|\Omega\rangle\) が、自由理論の真空 \(|0\rangle\) から断熱的に生成される」ことを主張する。形式的に
と書けることを、断熱仮説のもとで議論せよ。分母の役割(位相の除去と規格化)を説明すること。
(c) この定理が散乱振幅の計算において「真空バブル(vacuum bubble)の寄与を無視してよい」ことの根拠になる理由を説明せよ。Dyson 級数の各次数に現れる真空バブル図の寄与が、分母 \(\langle 0|\hat{S}|0\rangle\) によってキャンセルされることを概念的に示せ。
(a) 断熱スイッチングによる \(\hat{H}_I(t) \to 0\) の確認:
\(t \to +\infty\) のとき:\(e^{-\epsilon|t|} = e^{-\epsilon t} \to 0\)(\(\epsilon > 0\))
\(t \to -\infty\) のとき:\(e^{-\epsilon|t|} = e^{+\epsilon t} \to 0\)(\(\epsilon > 0\), \(t < 0\) なので \(\epsilon t \to -\infty\))
したがって:
遠い過去・未来では相互作用が断熱的に消え、系は自由理論として振る舞う。
(b) Gell-Mann–Low の定理:
議論の構造:
断熱スイッチングのもとで、\(t = -\infty\) における状態は自由理論の真空 \(|0\rangle\) である(相互作用が消えているため)。時間発展演算子 \(\hat{U}_I^\epsilon(0, -\infty)\) で \(t = 0\) まで発展させると:
この状態は、相互作用が断熱的に「オン」になる過程で \(|0\rangle\) から連続的に変形された状態である。断熱定理(量子力学の断熱近似の一般化)により、系が十分ゆっくり変化すれば、基底状態は基底状態のままに留まる。したがって \(\epsilon \to 0^+\) の極限で、この状態は相互作用する理論の真空 \(|\Omega\rangle\) に(位相因子を除いて)一致する。
ただし \(\hat{U}_I^\epsilon(0, -\infty)|0\rangle\) は一般に規格化されておらず、また不定な位相を持つ。これを補正するのが分母 \(\langle 0|\hat{U}_I^\epsilon(0, -\infty)|0\rangle\) の役割である:
分母の役割:
- 規格化: \(\hat{U}_I^\epsilon(0, -\infty)|0\rangle\) のノルムを 1 に正規化する。
- 位相の除去: \(|0\rangle\) と \(|\Omega\rangle\) の間の相対位相(\(\langle 0|\Omega\rangle = |\langle 0|\Omega\rangle|e^{i\alpha}\) の \(e^{i\alpha}\) 部分)を除去し、\(\langle 0|\Omega\rangle\) を実正にする慣習を採用する。
- エネルギーシフトの吸収: 相互作用による真空エネルギーのシフト \(E_\Omega - E_0\) に伴う位相 \(e^{-i(E_\Omega - E_0)T}\)(\(T\) は時間間隔)を分母がキャンセルする。
(c) 真空バブルのキャンセル:
真空バブル (vacuum bubble) とは、外線を持たない Feynman 図——すなわち外部の粒子と接続しない閉じたループ図——のことである。
Dyson 級数を展開すると、S 行列要素 \(\langle f|\hat{S}|i\rangle\) の各次数に、「物理的な散乱過程を記述する連結図」と「それに付随する真空バブル」が現れる。
連結・非連結定理 (linked-cluster theorem):
S 行列要素は次のように因数分解される:
ここで \(\langle 0|\hat{S}|0\rangle\) は全ての真空バブル図の寄与の総和であり、指数関数的に因数分解する:
一方、Gell-Mann–Low の定理の分母は:
したがって、物理的な散乱振幅を計算する際には:
つまり、真空バブルの寄与は分母によって正確にキャンセルされ、連結図のみが物理的な散乱振幅に寄与する。
より正確には、相関関数の場合:
分子の Wick 展開で現れる非連結図(連結部分 × 真空バブル)は、分母の \(\langle 0|\hat{S}|0\rangle\) と打ち消し合い、最終的に連結図のみが残る。
検算:
- \(\lambda = 0\)(自由理論)のとき、\(|\Omega\rangle = |0\rangle\)、\(\langle 0|\hat{S}|0\rangle = 1\) となり、全てが自明に成立する。
- 真空バブルのキャンセルは、物理量(散乱断面積や崩壊率)が真空エネルギーに依存しないという物理的要請と整合する。
- この定理は摂動論の全次数で成り立ち、Feynman 規則において「連結図のみを計算すればよい」という実用的処方箋の理論的根拠を与える。
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