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Appendix A 練習問題

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Basic(基礎)

B-1. 複素数の掛け算

次の積を \(a + bi\) の形に整理せよ。

(a) \((2 + 3i)(4 - i)\)

(b) \((1 + i)^3\)

(c) \((-2 + i)(3 + 2i)\)

ヒント

普通に展開して \(i^2 = -1\) を代入するだけ。公式を暗記する必要はない。(b) はまず \((1+i)^2\) を計算してから、もう一度 \((1+i)\) を掛けるとよい。

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B-2. 複素数の割り算

次の商を \(a + bi\) の形に整理せよ。

(a) \(\dfrac{2 + i}{1 + 3i}\)

(b) \(\dfrac{5}{2 - i}\)

(c) \(\dfrac{1 + 2i}{3 - 4i}\)

ヒント

分母の複素共役を分子・分母に掛けて、分母を実数化する。式 (A.6) の手法を使う。例えば (a) では分母 \(1 + 3i\) の複素共役 \(1 - 3i\) を掛ける。

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B-3. 絶対値と複素共役

次の各複素数について、複素共役 \(z^*\) と絶対値 \(|z|\) を求めよ。

(a) \(z = 5 - 12i\)

(b) \(z = -3i\)

(c) \(z = -2 + 2i\)

(d) \(z = 7\)(実数)

ヒント

\(z = a + bi\) のとき、\(z^* = a - bi\)\(|z| = \sqrt{a^2 + b^2}\)。(b) は \(a = 0\)、(d) は \(b = 0\) の場合。\(|z|^2 = z z^*\) を使って検算するとよい(式 (A.15))。

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B-4. 極形式への変換

次の複素数を極形式 \(r(\cos\theta + i\sin\theta)\) で表せ。偏角 \(\theta\)\(-\pi < \theta \leq \pi\) の範囲で答えよ。

(a) \(z = 1 + \sqrt{3}\,i\)

(b) \(z = -2\)

(c) \(z = -1 - i\)

(d) \(z = 3i\)

ヒント

まず \(r = |z| = \sqrt{a^2 + b^2}\) を求める。次に \(\tan\theta = b/a\) と象限の情報から \(\theta\) を決定する。(b) は実軸の負の方向、(d) は虚軸の正の方向にある点。

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B-5. \(i\) のべき乗

次の値を求めよ。

(a) \(i^5\)

(b) \(i^{13}\)

(c) \(i^{-1}\)

(d) \(i^{100}\)

ヒント

\(i\) のべき乗は 4 つごとに巡回する:\(i^0 = 1,\; i^1 = i,\; i^2 = -1,\; i^3 = -i,\; i^4 = 1,\;\ldots\)。指数を 4 で割った余りで決まる。(c) は \(i^{-1} = 1/i\) を分子分母に \(i\) を掛けて実数化するか、\(i^{-1} = i^3\) と考える。

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B-6. 複素共役の計算規則

\(z_1 = 2 + i\)\(z_2 = 1 - 3i\) とする。以下を直接計算で確かめよ。

(a) \((z_1 z_2)^* = z_1^* z_2^*\) が成り立つことを、左辺と右辺をそれぞれ計算して確認せよ。

(b) \((z_1 + z_2)^* = z_1^* + z_2^*\) が成り立つことを確認せよ。

ヒント

(a) まず \(z_1 z_2\) を計算し、その結果の複素共役を取る(左辺)。次に \(z_1^* = 2 - i\)\(z_2^* = 1 + 3i\) を掛ける(右辺)。両者が一致すれば OK。

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B-7. Maclaurin 展開の項の計算

\(e^x\) の Maclaurin 展開(式 (A.25))を 5 次の項まで書き下し、\(x = 2\) を代入して \(e^2\) の近似値を小数第 2 位まで求めよ。(参考:\(e^2 \approx 7.389\)

ヒント

$\(e^x \approx 1 + x + \frac{x^2}{2!} + \frac{x^3}{3!} + \frac{x^4}{4!} + \frac{x^5}{5!}\)$ に \(x = 2\) を代入する。\(2! = 2\), \(3! = 6\), \(4! = 24\), \(5! = 120\) を使う。

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B-8. \(e^{i\theta}\) の計算

Euler の公式 \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) を用いて、次の値を \(a + bi\) の形で表せ。

(a) \(e^{i\pi/4}\)

(b) \(e^{i\pi/2}\)

(c) \(e^{i\pi}\)

(d) \(e^{-i\pi/3}\)

ヒント

\(\cos\)\(\sin\) の値を代入するだけ。(d) は \(e^{-i\theta} = \cos\theta - i\sin\theta\)(式 (A.28) で \(\theta\)\(-\theta\) に置き換え)を使う。

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B-9. 極形式と Euler の公式の書き換え

次の複素数を \(re^{i\theta}\) の形(Euler の公式を用いた極形式)で表せ。

(a) \(z = 1 + i\)

(b) \(z = -\sqrt{3} + i\)

(c) \(z = -5i\)

ヒント

D4 と同じ手順で \(r\)\(\theta\) を求め、\(z = r(\cos\theta + i\sin\theta) = re^{i\theta}\) と書く。

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B-10. \(|e^{i\theta}|\) の計算

任意の実数 \(\theta\) に対して \(|e^{i\theta}| = 1\) であることを、式 (A.15) の関係 \(|z|^2 = zz^*\) を用いて示せ。

ヒント

\(z = e^{i\theta}\) のとき \(z^* = e^{-i\theta}\)\(zz^* = e^{i\theta} e^{-i\theta}\) を指数法則で計算する。

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Medium(標準)

M-1. 複素共役の積の規則の一般的証明

任意の複素数 \(z_1 = a + bi\)\(z_2 = c + di\)\(a, b, c, d\) は実数)に対して、

\[(z_1 z_2)^* = z_1^* z_2^*\]

が成り立つことを、式 (A.5) の掛け算の定義と複素共役の定義(式 (A.12))を用いて証明せよ。

ヒント

左辺:まず \(z_1 z_2 = (ac - bd) + (ad + bc)i\) を計算し、複素共役を取る。右辺:\(z_1^* z_2^* = (a - bi)(c - di)\) を展開する。両者を比較する。

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M-2. de Moivre(ド・モアブル)の定理の導出

Euler の公式を用いて、任意の整数 \(n\) に対して

\[(\cos\theta + i\sin\theta)^n = \cos(n\theta) + i\sin(n\theta)\]

が成り立つことを示せ。さらに \(n = 2\) の場合に実部と虚部を比較することで、\(\cos 2\theta\)\(\sin 2\theta\) の 2 倍角の公式を導出せよ。

ヒント

\(e^{i\theta}\)\(n\) 乗を指数法則で計算し、再び Euler の公式を適用する。\(n=2\) のとき左辺を \((e^{i\theta})^2 = (\cos\theta + i\sin\theta)^2\) として展開し、右辺 \(\cos 2\theta + i\sin 2\theta\) と実部・虚部を比較する。

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M-3. 極形式による割り算の公式の導出

2 つの複素数 \(z_1 = r_1 e^{i\theta_1}\)\(z_2 = r_2 e^{i\theta_2}\)\(r_2 \neq 0\))に対して、

\[\frac{z_1}{z_2} = \frac{r_1}{r_2}\,e^{i(\theta_1 - \theta_2)}\]

が成り立つことを示せ。この結果を用いて、「複素数の割り算は絶対値の割り算と偏角の引き算である」ことを説明せよ。

ヒント

\(\frac{z_1}{z_2} = \frac{r_1 e^{i\theta_1}}{r_2 e^{i\theta_2}}\) を指数法則 \(e^{i\alpha}/e^{i\beta} = e^{i(\alpha - \beta)}\) を使って整理する。この指数法則自体は \(e^{-i\beta}\) を掛けることで示せる。

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M-4. \(\cos\theta\)\(\sin\theta\) の指数関数表示

Euler の公式 \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) とその複素共役 \(e^{-i\theta} = \cos\theta - i\sin\theta\) を連立して解くことで、

\[\cos\theta = \frac{e^{i\theta} + e^{-i\theta}}{2}, \qquad \sin\theta = \frac{e^{i\theta} - e^{-i\theta}}{2i}\]

を導出せよ。さらに、この結果と式 (A.13)、(A.14) の構造を比較し、\(e^{i\theta}\)\(e^{-i\theta}\) の関係が複素共役の関係であることを確認せよ。

ヒント

\(e^{i\theta}\)\(e^{-i\theta}\) の 2 つの式を連立方程式とみなして \(\cos\theta\)\(\sin\theta\) について解く。式 (A.13) は \(\operatorname{Re}(z) = (z + z^*)/2\) であり、\(z = e^{i\theta}\) とすると \(z^* = e^{-i\theta}\) だから……

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M-5. 複素数が実数になる条件

複素数 \(z\) が実数であるための必要十分条件は \(z = z^*\) であることを証明せよ。同様に、\(z\) が純虚数であるための必要十分条件は \(z = -z^*\)(かつ \(z \neq 0\))であることを証明せよ。

ヒント

\(z = a + bi\) と書いて、\(z = z^*\) すなわち \(a + bi = a - bi\) から何が言えるかを考える。純虚数の場合は \(z = -z^*\) すなわち \(a + bi = -(a - bi) = -a + bi\) から。

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Advanced(発展)

A-1. 複素数の \(n\) 乗根と正 \(n\) 角形

方程式 \(z^n = 1\)\(n\) は正の整数)の解をすべて求めよ。

(a) \(z = re^{i\theta}\) とおき、\(|z| = 1\) かつ偏角の条件から、\(n\) 個の解が

\[z_k = e^{2\pi i k/n} \quad (k = 0, 1, 2, \ldots, n-1)\]

であることを示せ。

(b) これらの \(n\) 個の解を複素平面上にプロットすると、単位円に内接する正 \(n\) 角形の頂点になることを説明せよ。

(c) \(n\) 個の「1 の \(n\) 乗根」の総和

\[\sum_{k=0}^{n-1} z_k = 0\]

が成り立つことを、等比級数の公式を用いて証明せよ。

(d) 量子力学では離散 Fourier(フーリエ)変換に同じ構造が現れる。\(n = 4\) の場合に 4 つの解を具体的に求め、それが \(\{1, i, -1, -i\}\) であることを確認せよ。

ヒント

(a) \(z^n = r^n e^{in\theta} = 1 = 1 \cdot e^{i \cdot 0}\) より \(r^n = 1\) かつ \(n\theta = 2\pi k\)\(k\) は整数)。\(r > 0\) だから \(r = 1\)。偏角は \(2\pi\) の周期性を考慮して \(k = 0, 1, \ldots, n-1\) で異なる解を与える。

(c) \(\sum_{k=0}^{n-1} (e^{2\pi i/n})^k\) は初項 \(1\)、公比 \(\omega = e^{2\pi i/n}\) の等比級数。公式 \(\frac{1 - \omega^n}{1 - \omega}\) を使い、\(\omega^n = e^{2\pi i} = 1\) に注意。

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A-2. 量子力学への橋渡し:複素振幅の干渉

量子力学では、粒子がある地点に到達する「確率振幅」が複素数で与えられる。2 つの経路(経路 1 と経路 2)を通る場合、各経路の振幅を \(\phi_1 = r_1 e^{i\alpha}\)\(\phi_2 = r_2 e^{i\beta}\) とすると、全体の振幅は \(\phi = \phi_1 + \phi_2\) であり、検出確率は \(P = |\phi|^2\) で与えられる。

(a) \(P = |\phi_1 + \phi_2|^2\) を展開し、

\[P = r_1^2 + r_2^2 + 2r_1 r_2 \cos(\alpha - \beta)\]

を導出せよ。

(b) もし確率振幅が実数しか取れないとしたら(すなわち \(\alpha, \beta\)\(0\)\(\pi\) のみ)、干渉項 \(2r_1 r_2 \cos(\alpha - \beta)\) が取りうる値は \(\pm 2r_1 r_2\) に限られることを示せ。一方、\(\alpha - \beta\) が連続的に変化できる場合には干渉項が \(-2r_1 r_2\) から \(+2r_1 r_2\) まで連続的に変わることを説明し、「複素数が本質的に必要である」理由の一端を論じよ。

(c) 特に \(r_1 = r_2 = r\) のとき、\(\alpha - \beta = \pi\)(位相差 \(\pi\))で \(P = 0\) となることを示せ。これは 2 つの波が完全に打ち消し合う(destructive interference; 破壊的干渉)ことに対応する。この結果が「確率は常に正」という古典的直感とどう異なるかを 2〜3 文で述べよ。

ヒント

(a) \(|\phi|^2 = \phi \phi^*\) を使う。\(\phi = \phi_1 + \phi_2\) だから \(\phi^* = \phi_1^* + \phi_2^*\)。展開すると \(|\phi_1|^2 + |\phi_2|^2 + \phi_1 \phi_2^* + \phi_1^* \phi_2\) が現れる。最後の 2 項(交差項)を \(r_1 r_2 e^{i(\alpha-\beta)} + r_1 r_2 e^{-i(\alpha-\beta)}\) と書き、S4 の \(\cos\) の表示を使う。

(c) \(P = 2r^2(1 + \cos(\alpha - \beta))\) の形にして \(\alpha - \beta = \pi\) を代入。古典確率では各経路の確率を足すと \(P_{\text{classical}} = r_1^2 + r_2^2 > 0\) となり、打ち消しは起きない。


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