Appendix A 練習問題 解答¶
目次
Basic(基礎)
- B-1. 複素数の掛け算
- B-2. 複素数の割り算
- B-3. 絶対値と複素共役
- B-4. 極形式への変換
- B-5. \(i\) のべき乗
- B-6. 複素共役の計算規則
- B-7. Maclaurin 展開の項の計算
- B-8. \(e^{i\theta}\) の計算
- B-9. 極形式と Euler の公式の書き換え
- B-10. \(|e^{i\theta}|\) の計算
Medium(標準)
- M-1. 複素共役の積の規則の一般的証明
- M-2. de Moivre(ド・モアブル)の定理の導出
- M-3. 極形式による割り算の公式の導出
- M-4. \(\cos\theta\) と \(\sin\theta\) の指数関数表示
- M-5. 複素数が実数になる条件
Advanced(発展)
Basic(基礎)¶
B-1. 複素数の掛け算¶
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(a) \((2 + 3i)(4 - i)\)¶
方針: 普通に展開して \(i^2 = -1\) を代入する。
検算: 絶対値の積で確認。\(|2+3i|^2 = 4+9 = 13\)、\(|4-i|^2 = 16+1 = 17\)。積の絶対値の 2 乗は \(13 \times 17 = 221\)。結果 \(|11+10i|^2 = 121 + 100 = 221\)。✓
(b) \((1 + i)^3\)¶
まず \((1+i)^2\) を計算する。
次に \((1+i)\) を掛ける。
検算: \(|1+i|^2 = 2\) なので \(|1+i|^6 = 8\)。\(|-2+2i|^2 = 4+4 = 8\)。✓
(c) \((-2 + i)(3 + 2i)\)¶
検算: \(|-2+i|^2 = 4+1=5\)、\(|3+2i|^2 = 9+4=13\)。積 \(= 65\)。\(|-8-i|^2 = 64+1=65\)。✓
B-2. 複素数の割り算¶
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(a) \(\dfrac{2 + i}{1 + 3i}\)¶
方針: 分母の複素共役 \(1 - 3i\) を分子・分母に掛けて分母を実数化する。
分母:\((1+3i)(1-3i) = 1 + 9 = 10\)
分子:\((2+i)(1-3i) = 2 - 6i + i - 3i^2 = 2 - 5i + 3 = 5 - 5i\)
検算: \(\left(\frac{1}{2} - \frac{1}{2}i\right)(1+3i) = \frac{1}{2} + \frac{3}{2}i - \frac{1}{2}i - \frac{3}{2}i^2 = \frac{1}{2} + i + \frac{3}{2} = 2 + i\)。✓
(b) \(\dfrac{5}{2 - i}\)¶
検算: \((2+i)(2-i) = 4+1 = 5\)。✓
(c) \(\dfrac{1 + 2i}{3 - 4i}\)¶
分子:\((1+2i)(3+4i) = 3 + 4i + 6i + 8i^2 = 3 + 10i - 8 = -5 + 10i\)
検算: \(\left(-\frac{1}{5}+\frac{2}{5}i\right)(3-4i) = -\frac{3}{5}+\frac{4}{5}i+\frac{6}{5}i-\frac{8}{5}i^2 = -\frac{3}{5}+\frac{10}{5}i+\frac{8}{5} = \frac{5}{5}+2i = 1+2i\)。✓
B-3. 絶対値と複素共役¶
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(a) \(z = 5 - 12i\)¶
検算: \(zz^* = (5-12i)(5+12i) = 25 + 144 = 169 = 13^2 = |z|^2\)。✓
(b) \(z = -3i\)¶
検算: \(zz^* = (-3i)(3i) = -9i^2 = 9 = 3^2\)。✓
(c) \(z = -2 + 2i\)¶
検算: \(zz^* = (-2+2i)(-2-2i) = 4 + 4 = 8 = (2\sqrt{2})^2\)。✓
(d) \(z = 7\)¶
実数の複素共役は自分自身。\(zz^* = 49 = |z|^2\)。✓
B-4. 極形式への変換¶
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(a) \(z = 1 + \sqrt{3}\,i\)¶
\(\tan\theta = \sqrt{3}/1 = \sqrt{3}\)、第 1 象限なので \(\theta = \pi/3\)。
検算: \(2(\cos 60° + i\sin 60°) = 2\left(\frac{1}{2} + i\frac{\sqrt{3}}{2}\right) = 1 + \sqrt{3}\,i\)。✓
(b) \(z = -2\)¶
実軸の負の方向なので \(\theta = \pi\)。
検算: \(2(-1 + 0i) = -2\)。✓
(c) \(z = -1 - i\)¶
\(a = -1, b = -1\) で第 3 象限。\(\tan\theta = (-1)/(-1) = 1\) だが第 3 象限なので \(\theta = -\frac{3\pi}{4}\)(\(-\pi < \theta \leq \pi\) の範囲)。
検算: \(\cos(-3\pi/4) = -\frac{\sqrt{2}}{2}\)、\(\sin(-3\pi/4) = -\frac{\sqrt{2}}{2}\)。\(\sqrt{2}\left(-\frac{\sqrt{2}}{2} - i\frac{\sqrt{2}}{2}\right) = -1 - i\)。✓
(d) \(z = 3i\)¶
虚軸の正の方向なので \(\theta = \pi/2\)。
検算: \(3(0 + i) = 3i\)。✓
B-5. \(i\) のべき乗¶
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\(i\) のべき乗は周期 4 で巡回する:\(i^0 = 1,\; i^1 = i,\; i^2 = -1,\; i^3 = -i\)。
(a) \(i^5\)¶
\(5 = 4 \times 1 + 1\) なので \(i^5 = i^1 = \boxed{i}\)
(b) \(i^{13}\)¶
\(13 = 4 \times 3 + 1\) なので \(i^{13} = i^1 = \boxed{i}\)
(c) \(i^{-1}\)¶
\(i^{-1} = \dfrac{1}{i} = \dfrac{i}{i^2} = \dfrac{i}{-1} = -i\)。あるいは \(i^{-1} = i^3 = \boxed{-i}\)
検算: \((-i) \cdot i = -i^2 = 1\)。✓
(d) \(i^{100}\)¶
\(100 = 4 \times 25 + 0\) なので \(i^{100} = i^0 = \boxed{1}\)
B-6. 複素共役の計算規則¶
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\(z_1 = 2 + i\)、\(z_2 = 1 - 3i\)。
(a) \((z_1 z_2)^* = z_1^* z_2^*\) の確認¶
左辺:
右辺:
左辺 \(= 5 + 5i =\) 右辺。✓ \(\quad \blacksquare\)
(b) \((z_1 + z_2)^* = z_1^* + z_2^*\) の確認¶
左辺:
右辺:
左辺 \(= 3 + 2i =\) 右辺。✓ \(\quad \blacksquare\)
B-7. Maclaurin 展開の項の計算¶
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\(e^x\) の Maclaurin 展開を 5 次の項まで書き下す:
\(x = 2\) を代入する:
検算: 真の値は \(e^2 \approx 7.389\)。6 次の項 \(\frac{2^6}{6!} = \frac{64}{720} \approx 0.089\) を加えると \(7.36\) となり、さらに近づく。5 次までの打ち切りとしては妥当な近似。✓
B-8. \(e^{i\theta}\) の計算¶
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Euler の公式 \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) を用いる。
(a) \(e^{i\pi/4}\)¶
(b) \(e^{i\pi/2}\)¶
(c) \(e^{i\pi}\)¶
これは有名な Euler の等式 \(e^{i\pi} + 1 = 0\) に対応する。
(d) \(e^{-i\pi/3}\)¶
検算: (a) の絶対値 \(= \sqrt{1/2 + 1/2} = 1\)。\(|e^{i\theta}| = 1\) と整合。他も同様に絶対値 1。✓
B-9. 極形式と Euler の公式の書き換え¶
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(a) \(z = 1 + i\)¶
(b) \(z = -\sqrt{3} + i\)¶
\(a = -\sqrt{3},\; b = 1\)(第 2 象限)。\(\tan\theta = \frac{1}{-\sqrt{3}}\) で、第 2 象限なので \(\theta = \frac{5\pi}{6}\)。
検算: \(2(\cos\frac{5\pi}{6} + i\sin\frac{5\pi}{6}) = 2(-\frac{\sqrt{3}}{2} + i\frac{1}{2}) = -\sqrt{3} + i\)。✓
(c) \(z = -5i\)¶
検算: \(5(\cos(-\pi/2) + i\sin(-\pi/2)) = 5(0 - i) = -5i\)。✓
B-10. \(|e^{i\theta}|\) の計算¶
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方針: 式 (A.15) の関係 \(|z|^2 = zz^*\) を用いる。
\(z = e^{i\theta}\) とおくと、\(z^* = e^{-i\theta}\)(Euler の公式から \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) の複素共役は \(\cos\theta - i\sin\theta = e^{-i\theta}\))。
\(|e^{i\theta}|\) は非負実数なので、
これは任意の実数 \(\theta\) に対して成り立つ。幾何学的には、\(e^{i\theta}\) は常に単位円上の点であることを意味する。\(\blacksquare\)
Medium(標準)¶
M-1. 複素共役の積の規則の一般的証明¶
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証明:
\(z_1 = a + bi\)、\(z_2 = c + di\)(\(a, b, c, d\) は実数)とする。
左辺の計算:
式 (A.5) より、
複素共役の定義(式 (A.12))より、
右辺の計算:
\((*)\) と \((**)\) を比較すると、
よって \((z_1 z_2)^* = z_1^* z_2^*\) が成り立つ。\(\blacksquare\)
検算: D6(a) で \(z_1 = 2+i\)、\(z_2 = 1-3i\) の場合に具体的に確認済み。一般的証明と整合している。✓
M-2. de Moivre(ド・モアブル)の定理の導出¶
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de Moivre の定理の証明¶
方針: Euler の公式 \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) を用いて、左辺を指数関数の形に書き換える。
指数法則 \((e^a)^n = e^{na}\) より、
再び Euler の公式を適用すると、
以上をまとめて、
が任意の整数 \(n\) に対して成り立つ。\(\blacksquare\)
\(n = 2\) の場合:2 倍角の公式の導出¶
左辺を展開:
右辺(de Moivre の定理):
実部を比較:
虚部を比較:
これらは三角関数の 2 倍角の公式そのものである。
検算: \(\theta = \pi/4\) で確認。\(\cos(\pi/2) = 0\)、\(\cos^2(\pi/4) - \sin^2(\pi/4) = 1/2 - 1/2 = 0\)。✓ \(\sin(\pi/2) = 1\)、\(2\cos(\pi/4)\sin(\pi/4) = 2 \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{2}}{2} = 1\)。✓
M-3. 極形式による割り算の公式の導出¶
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方針: 指数法則を用いて分数を整理する。
まず、\(\frac{e^{i\theta_1}}{e^{i\theta_2}}\) を計算する。分子・分母に \(e^{-i\theta_2}\) を掛けると、
ここで \(e^{i\theta_2} \cdot e^{-i\theta_2} = e^0 = 1\) を用いた。
したがって、
\(\blacksquare\)
解釈: この結果から、商 \(z_1/z_2\) の
- 絶対値は \(\dfrac{r_1}{r_2} = \dfrac{|z_1|}{|z_2|}\)(絶対値の割り算)
- 偏角は \(\theta_1 - \theta_2 = \arg(z_1) - \arg(z_2)\)(偏角の引き算)
である。すなわち、複素数の割り算は、絶対値の割り算と偏角の引き算に分解される。これは掛け算が「絶対値の積と偏角の和」であること(式 (A.11))の自然な逆操作になっている。
検算: \(z_1 = z_2\) のとき、\(z_1/z_2 = 1\)。公式からは \(\frac{r_1}{r_1} e^{i \cdot 0} = 1 \cdot 1 = 1\)。✓
M-4. \(\cos\theta\) と \(\sin\theta\) の指数関数表示¶
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方針: Euler の公式とその複素共役を連立方程式として解く。
Euler の公式:
\(\theta\) を \(-\theta\) に置き換える(あるいは式 (1) の複素共役を取る):
\(\cos\theta\) の導出¶
式 (1) + 式 (2):
\(\sin\theta\) の導出¶
式 (1) − 式 (2):
式 (A.13), (A.14) との比較¶
式 (A.13) は \(\operatorname{Re}(z) = \frac{z + z^*}{2}\) であった。\(z = e^{i\theta}\) とすると \(z^* = e^{-i\theta}\) だから、
これは \(e^{i\theta} = \cos\theta + i\sin\theta\) の実部が \(\cos\theta\) であることと整合する。
同様に、式 (A.14) は \(\operatorname{Im}(z) = \frac{z - z^*}{2i}\) であり、
これも \(e^{i\theta}\) の虚部が \(\sin\theta\) であることと整合する。
以上から、\(\cos\theta\) と \(\sin\theta\) の指数関数表示は、複素共役を用いた実部・虚部の取り出し公式(式 (A.13), (A.14))の特殊ケース(\(z = e^{i\theta}\), \(z^* = e^{-i\theta}\))に他ならないことが確認された。\(\blacksquare\)
検算: \(\theta = 0\) を代入。\(\cos 0 = \frac{e^0 + e^0}{2} = \frac{2}{2} = 1\)。✓ \(\sin 0 = \frac{e^0 - e^0}{2i} = 0\)。✓
M-5. 複素数が実数になる条件¶
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\(z\) が実数 \(\iff\) \(z = z^*\)¶
証明:
\(z = a + bi\)(\(a, b\) は実数)とする。
(\(\Rightarrow\)) \(z\) が実数ならば \(b = 0\) なので \(z = a\)、\(z^* = a\)。よって \(z = z^*\)。
(\(\Leftarrow\)) \(z = z^*\) ならば \(a + bi = a - bi\)。両辺の虚部を比較すると \(b = -b\)、すなわち \(2b = 0\) より \(b = 0\)。よって \(z = a\) は実数。\(\blacksquare\)
\(z\) が純虚数(\(z \neq 0\))\(\iff\) \(z = -z^*\)(かつ \(z \neq 0\))¶
証明:
(\(\Rightarrow\)) \(z\) が純虚数ならば \(a = 0\) かつ \(b \neq 0\) なので \(z = bi\)、\(z^* = -bi\)。よって \(-z^* = bi = z\)。
(\(\Leftarrow\)) \(z = -z^*\) ならば \(a + bi = -(a - bi) = -a + bi\)。両辺の実部を比較すると \(a = -a\)、すなわち \(2a = 0\) より \(a = 0\)。\(z \neq 0\) の条件から \(b \neq 0\)。よって \(z = bi\) は純虚数。\(\blacksquare\)
検算(具体例): - \(z = 5\)(実数):\(z^* = 5 = z\)。✓ - \(z = 3i\)(純虚数):\(z^* = -3i\)、\(-z^* = 3i = z\)。✓ - \(z = 1 + i\)(どちらでもない):\(z^* = 1 - i \neq z\) かつ \(-z^* = -1 + i \neq z\)。✓
Advanced(発展)¶
A-1. 複素数の \(n\) 乗根と正 \(n\) 角形¶
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(a) \(z^n = 1\) の \(n\) 個の解¶
方針: \(z = re^{i\theta}\) とおいて、絶対値と偏角の条件を分離する。
絶対値の比較:\(r^n = 1\)。\(r > 0\) なので \(r = 1\)。
偏角の比較:\(n\theta = 0 + 2\pi k\)(\(k\) は整数)。ここで偏角は \(2\pi\) の整数倍の不定性を持つ。
\(k = 0, 1, 2, \ldots, n-1\) のとき、\(\theta\) は \(0, \frac{2\pi}{n}, \frac{4\pi}{n}, \ldots, \frac{2\pi(n-1)}{n}\) と互いに異なる値を取る。\(k = n\) のとき \(\theta = 2\pi\) は \(\theta = 0\) と同じ点を表すので、新しい解は得られない。
したがって、\(z^n = 1\) の \(n\) 個の解は
\(\blacksquare\)
(b) 正 \(n\) 角形の頂点¶
\(n\) 個の解 \(z_k = e^{2\pi i k/n}\) はすべて \(|z_k| = 1\) なので、単位円上の点である。
隣り合う解 \(z_k\) と \(z_{k+1}\) の偏角の差は
で一定である。すなわち、\(n\) 個の点は単位円上に等間隔に配置されている。
単位円に内接し、\(n\) 個の頂点が等間隔に並ぶ多角形は正 \(n\) 角形に他ならない。最初の頂点 \(z_0 = 1\) は実軸上の点 \((1, 0)\) にあり、そこから反時計回りに \(2\pi/n\) ずつ回転した位置に残りの頂点がある。\(\blacksquare\)
(c) 1 の \(n\) 乗根の総和が 0¶
方針: 等比級数の公式を用いる。
\(\omega = e^{2\pi i/n}\) とおくと、\(z_k = \omega^k\) である。
これは初項 \(1\)、公比 \(\omega\)、項数 \(n\) の等比級数なので(\(\omega \neq 1\) すなわち \(n \geq 2\) のとき)、
ここで \(\omega^n = (e^{2\pi i/n})^n = e^{2\pi i} = \cos 2\pi + i\sin 2\pi = 1\) なので、
\(n = 1\) のときは \(z_0 = 1\) のみで和は \(1 \neq 0\) だが、通常 \(n \geq 2\) を考える。
\(\blacksquare\)
検算(幾何学的解釈): 正 \(n\) 角形の頂点への位置ベクトルの和は、対称性から原点を指す。これは重心が原点にあることに対応する。✓
(d) \(n = 4\) の場合¶
- \(k = 0\):\(e^{0} = 1\)
- \(k = 1\):\(e^{i\pi/2} = \cos(\pi/2) + i\sin(\pi/2) = i\)
- \(k = 2\):\(e^{i\pi} = \cos\pi + i\sin\pi = -1\)
- \(k = 3\):\(e^{i3\pi/2} = \cos(3\pi/2) + i\sin(3\pi/2) = -i\)
検算: 総和 \(= 1 + i + (-1) + (-i) = 0\)。✓ また各 \(z_k\) について \(z_k^4 = 1\) を確認:\(i^4 = (i^2)^2 = (-1)^2 = 1\)、\((-1)^4 = 1\)、\((-i)^4 = ((-i)^2)^2 = (-1)^2 = 1\)。✓
A-2. 量子力学への橋渡し:複素振幅の干渉¶
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(a) \(P = |\phi_1 + \phi_2|^2\) の展開¶
方針: \(|\phi|^2 = \phi\phi^*\) を用いて展開する。
展開すると、
ここで \(\phi_1 = r_1 e^{i\alpha}\)、\(\phi_2 = r_2 e^{i\beta}\) を代入する。
交差項の和は、
S4 で導出した \(\cos\) の指数関数表示 \(\cos\theta = \frac{e^{i\theta} + e^{-i\theta}}{2}\) を用いると、
したがって、
\(\blacksquare\)
検算: \(\phi_2 = 0\)(経路 2 がない場合)のとき \(r_2 = 0\) なので \(P = r_1^2 = |\phi_1|^2\)。✓ また \(\alpha = \beta\)(同位相)のとき \(P = r_1^2 + r_2^2 + 2r_1 r_2 = (r_1 + r_2)^2\)。これは振幅が足し合わさることに対応する。✓
(b) 実数振幅の場合と複素振幅の場合の比較¶
実数振幅の場合(\(\alpha, \beta\) が \(0\) か \(\pi\) のみ):
\(\alpha - \beta\) が取りうる値は \(0, \pi, -\pi\) のいずれかである。
- \(\alpha - \beta = 0\) のとき:\(\cos(\alpha - \beta) = \cos 0 = 1\)
- \(\alpha - \beta = \pm\pi\) のとき:\(\cos(\alpha - \beta) = \cos\pi = -1\)
したがって干渉項 \(2r_1 r_2 \cos(\alpha - \beta)\) は \(+2r_1 r_2\) か \(-2r_1 r_2\) の2 値のみを取る。
複素振幅の場合(\(\alpha - \beta\) が連続的に変化):
位相差 \(\delta = \alpha - \beta\) は \(0\) から \(2\pi\) まで連続的に変化でき、\(\cos\delta\) は \(-1\) から \(+1\) まで連続的にすべての値を取る。したがって干渉項は
の範囲を連続的に変化する。
複素数が本質的に必要である理由: 実数の振幅では干渉は「完全に強め合う」か「完全に打ち消し合う」かの二択しかなく、中間的な干渉を表現できない。一方、複素数の振幅では位相差が連続的なパラメータとなり、部分的な強め合いや弱め合いを含むあらゆる程度の干渉を記述できる。自然界で観測される干渉パターン(例えば二重スリット実験の明暗の連続的な変化)を正しく記述するためには、振幅が複素数であることが本質的に必要である。
(c) 完全な破壊的干渉¶
\(r_1 = r_2 = r\) のとき、(a) の結果は
\(\alpha - \beta = \pi\) を代入すると、
2 つの経路の振幅が等しく、位相差がちょうど \(\pi\) のとき、検出確率は完全にゼロになる。これが破壊的干渉 (destructive interference) である。
古典的直感との違い:
古典確率論では、各経路を通る確率を \(P_1 = r^2\) と \(P_2 = r^2\) として単純に足し合わせるため、
となり、確率がゼロになることはあり得ない。しかし量子力学では、足し合わせるのは確率ではなく確率振幅(複素数)であり、振幅の段階で打ち消し合いが起こるため、結果として確率がゼロになることがある。これは「粒子が 2 つの経路のどちらかを通っているはずなのに、検出されない」という古典的直感に反する現象であり、量子力学の本質的な特徴である。
検算: \(\alpha - \beta = 0\)(建設的干渉)のとき \(P = 2r^2(1+1) = 4r^2 = (2r)^2\)。振幅が \(2r\) に倍増し、確率は 4 倍。古典的な \(2r^2\) の 2 倍であり、干渉の効果が明確に現れている。✓
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